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パリスの弓矢  作者: happy
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出雲玲華への雪辱1

 「あの事件」からちょうど1年が経った。

玲華はぐっすり寝ついた玲央の寝顔をなでながら、寝室で想起していた。

玲華の生活はあれから一変してしまったが、事件が大きすぎるせいか今の現状は、

事件直後にうっすらと思い浮かべていたよりは十分マシな現状であると考えていた。

仕事は自ら退職を申し出たが、会社側は休職を勧めてくれた。

半年仕事を休めたおかげで諸々の手続きや心の整理をつけることができたのは救われた。

復職の初日は流石に冷や汗が止まらなかったが周りのリアクションは拍子抜けするほどに「いつも通り」

だった。元々仲良しというわけではなかったので仕事さえこなせれば今までの生活と変わらなかった。

一方で、プライベートでは玲央のママ友や高校・大学時代の仲間から連絡は途絶えてしまった。

LINEでブロックされたり、既読が付かないことに傷つかなかったと言えば嘘になるが、

「LINE開発した人って本当性格悪いよなぁ…」という素朴な感想が浮かんできたくらいなものだった。

玲華は元々女子特有のうわべだけの生産性のない付き合いにうんざりしている口だったので皮肉にも、

人間関係をリセットする良い機会を与えられた。

「法」に関する手続きや責任は光が行ってくれていた。

私が何気なく放った愚痴にも明るく返してくれた光には気恥ずかしくて本人に面と向かっては言えないが

連絡を絶ってきた今までの友達よりもよっぽど友好関係を深めたいと感じていた。

しかし彼女は基本明るいが距離を詰めようとすると熟練の武道家のように絶妙に間を取っていなしてくるのを感じていたので当面はビジネス上の距離感を保つことにした。

玲央や両親のケアに関して言えば、両親は島根の閑散とした土地(悪く言えばド田舎)がマスコミの腰を

重くしてくれた。

玲央は小学校入学までは幼稚園に通わせないことにして、小学校は極力郊外の秘匿性の高い立地の私立を

検討しようと考えていた。

今後のことを考えると金銭面の不安が募るが玲央の安全と幸福には変えられない。

「なんとかなる。なんとかしてみせる。」

根拠のない自信はあまり好きではないが、心の中でそう言い聞かせるしかなかった。

電気を消して玲央の隣で自分も眠りについた。翌日から「地獄の日々」が始まることも知らずに。






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