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パリスの弓矢  作者: happy
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出雲玲央の苛立ち2

 玲央には父親がいたが本人にはその記憶がほとんどなかった。

4歳だったか5歳だったか…虚ろなシルエットしか思い浮かばない自分の父は突然いなくなった。

自宅で猫型ロボットがデザインされたお絵かきボードを塗りつぶしていた玲央は母に手を引かれてそのまま

祖父母のいる島根に住むことになったがその時はお気に入りだった猫型ロボットのお絵かきボードが自宅に

置きっぱなしになってしまったことしか頭になかった。

猫型ロボットのお絵かきボードの姿形は今でも鮮明に思い浮かぶのに皮肉にも自分の父の虚ろなシルエットは小学校に上がる頃にはもう完全に頭から削除されてしまった。

しかし、自分が小学生になってから近所の大人や担任の先生、授業参観や運動会の時に来るクラスメイトの親から受ける冷たい視線、母が授業参観や運動会に絶対来ないことがどうやら自分の父親だった人間に秘密があるようだった。玲央は映像越しに1度だけ自分の父親の写真を見たことがある。

玲央が小学校に上がると同時に母がタブレットをくれた。

玲央は1日30分タブレットで漢字と計算問題を解く代わりに30分タブレットでゲームをしていいと母に言われた。ゲームはもちろん漢字や計算問題も意外と楽しかった。

小学2年生の頃だっただろうか。画面のタップミスで画面下の黄色い四角い画面に触れてしまった。

タブレットでの学習もゲームも終えていた玲央は暇つぶしに表示された画面を適当にタップし続けた。

そんな折にある1枚の写真が突如大画面で表示される。

そこには母親と前に祖母から見せてもらった自分と祖父のツーショット写真と同じ姿をした子ども…つまりは自分の姿、そしてもう1人自分を抱っこしている男の姿があった。

この男こそ、祖父母の家に来てからずっと母に聞いては怒られを繰り返してやがて聞くのを辞めてしまった自分の父親なのだろうと分かった。

自分の好きな探偵アニメに出てくる犯人のように頭の中で真っ黒い人物を思い浮かべていた父の姿を

発見した自分がそのとき気分が高揚したのを覚えている。

幸か不幸か小学3、4年と歳を重ねるうち現代っ子に恥じない水準でネットの知識に明るくなっていた

自分は「例の写真」から自分の父親が「世界的犯罪者」であることにたどり着いてしまった。

ある日母から「これからはハリマではなくイズモジュンイチと名乗りなさい」と言われたこと、

自分が登下校するたびに大人の視線を感じていたこと、その大人が自分にスマホを向けていたこと、

母親が絶対に小学校に姿を現さなかったこと、担任や同級生から足を引っかけられること、

自分が気づかないうち、アニメに出てくる悪者と思われてしまったのかと感じてしまう出来事の数々が

この男のせいなのだと確信した。




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