プロローグ 英雄と負け犬
「トロッコ問題」という思考実験をご存知だろうか?
「暴走したトロッコの路線上(A)には5人の作業員がいて、トロッコのレバーを操作し軌道を路線(B)に
逸らせば5人の命は助かるが、路線(B)にいる1人の作業員が代わりに犠牲になってしまう…」
そんな状況であなたがレバーを操作できる位置にいた場合、
① より多くの命を助けるためレバーを引いて(B)にいる1人を犠牲にするか
② 突然降りかかった不運と割り切ってレバーを引かずに5人を犠牲にするか
「ある人を助けるために他の人を犠牲にするのは許されるのか?」という倫理的に意見が分かれる問題では
あるが、この問いに対してなんとなく①を選択してしまう人は多いのではないだろうか?
「1つしか選べないのなら1人でも多くの命を救うほうが合理的だ」という考えが根底にあると思う。
もちろんその考えが間違っているというわけではない。
しかしここに出てくる登場人物が「とりわけて突出した才能を持たない世の中に無益、もっと言えば害を
成す犯罪者5人」と「世界的に愛される特別な才能を持った英雄1人」だった場合はどうだろうか?
②と答える割合は十中八九増えると予想される。
まあ何が言いたいのかといえば「人間の命は絶対に等価じゃない」という惨めな現実だ…