嫉妬で始める耳寄りな話・後
耳介をこすりあげるとぽろぽろと耳垢が落ちる。
また温めた濡れタオルで拭いてあげる。
再度の緩やかな刺激に彼はため息を吐いた。
うん、ずいぶんときれいになった。
ささ、中に行きまする。
「溜まってるね」
「昨日抜いたけど」
「ほぉ〜面白い冗談だな、お?誰でいったのかな?言うてみい」
痛くない程度に耳を引っ張る。
「無実だ。黙秘します」
こいつ!
それならと優しく丁寧に綿棒を穴の周りにそって周回させる。早速ひっかかる垢。すいすいと綿玉に乗せて脇に用意したティッシュへ乗せる。
面白いように次から次へ湧き出してくるみたいだ。
くいっ くいっ
それから綿玉に乗せてすっと救いあげることを繰り返す。
「ずいぶん溜めたね。いつから掃除してないの?」
「だから昨日…」
その間にも綿棒は耳の中を走る。痛がらせないように自分が気持ちいいと思うだろうくらいの圧力で。
ん?いまビクッとしたね。
そこをかりかりと集中的に、ごく狭いポイントを攻めてあげる。
「ここが痒いの?」
「あーそこ」
執拗に刺激を与え続けける。耳の中は迷走神経が走ってるし、痒いところは特に敏感になってて気持ちいい部分なんだろう。
それじゃくりくりくり。
「あひ」
くりくりくり。
ぐっ。さらにぎゅっ。軽く周りを掃くようにして軽くさっさっさと。
やっぱりなんだかひっかかり。
耳かき棒にしてはっきりとした刺激に切り替えよう。
「うわ、強くあたる」
おまえが他の女匂わすからだよ!
じゃなくて耳かき棒のことか。
あたしがぐいと食い込ませる部分を確保して、ぐっと力を入れるとだいぶ浮いた。
「なんか痒さが増したんだけど」
まわりをカキカキして、また食い込ませて繊細な力加減で引っ張る。だいぶ手応えを感じるくらいに浮いた。
そして一閃。
剣豪のような気合いで一気に持ち上げた。
スポ。言葉にすると抜ける感じ。
「ああ…っ」
秘技耳かき居合抜き。
彼は籠絡された。
「大きいね」
「うわ、こんなの入ってたんだ」
だいぶ満足したのか、やっと日常に戻ってきた彼。自分の中から出てきた大物に少し引き気味。
そのまま耳かき棒は中でひらりひらりと舞う。
その度に快楽に身をまかせている。
と、それからかなり奥に大物の手応え。
「ずいぶん大きな音がするけど」
「どんな音?」
「がっがっ?」
「分かんない」
「ええっ?ぐちっぐちっ?」
目的のよく分からない言葉攻めをしつつ、大物を耳かきを巧みに使って浮かして。
ついでだから辺りを皿の先っちょで突いてみたり。
「なんで息が荒いかな?」
「いや、だって…」
少し強めに大物の回りで耳かき棒を踊らせる。
時間をかけて少しずつ。焦らして周辺だけを。
頃合いを見ていよいよ本丸。
皿を引っかけてぐいと引っ張ると大物が浮いた。
あ、やば。彼が失神寸前。
「右はまた今度ね」
「どこでこんなテク覚えたの?」
ぬひひ。たまには嫉妬させてみるのもいいか。
耳かきだって愛の交歓くらいにはなる。
「よそ見したらだめだよ?」
「携帯見せなくていいからさ、あたしをちゃんと見て」
嫉妬するくらい、あたしだけを見て。
改稿済です。前編と合わせてお楽しみください。