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ミシェルの日記

順調に読み進める。

ここまで"僕"がフェルナンド様を怖かっている様子は全く見られない。


この日記を読んでいて、かつての記憶や小さいフェルナンド様との遊んでいる時の記憶が蘇ってくる。頭痛はしないので、ただ昔すぎて忘れていたことを思い出すような感じだ。


モヤが少しかかっている感じではあるが断片的な映像として頭に流れる。


フェルナンド様が僕に笑いかけながら手を引っ張って遊びに出かける様子やプレゼントをくれる様子、婚約を知ってから初めて会う時の少し恥ずかしがっている様子、などを思い出した。思い出しているときは胸が温まるようで幸せな気持ちになった。本当に怖がる理由が分からないな。と疑問は深まるばかりだ。


今夜来てくれたらこの頃の話をしてみよう!と意気込む。


ここまで日記を読み始めて記憶障害の影響は最近のフェルナンド様の記憶だけだとわかった。


メイドが夕食を持ってきてくれて辺りが暗くなっていることに気づく。


続きはまた明日読もうと決め、夕食を食べてからは昼に途中で読むのをやめてしまった課題の本を読みながらフェルナンド様を待つ。


しかし眠くなってしまい寝落ちしてしまった。



---


『シェル!待ってよー!』


『ふふっ、お荷物担当はゆっくりでいいの!僕はいいピクニック場所を探してくるから!』


これは"僕"だ。

まだ幼いが荷物を持たせているのはフェルナンド様で間違いない。


僕はピクニック場所を探さずに湖まで駆けて行き、魚を見ている。


やっと追いついたフェルナンド様は肩を切らしてぜぇぜぇと呼吸が乱れているのにすぐに"僕"が


『こっちこっち!見てお魚さんだよ!』


と催促している。

フェルナンド様は咎める様子も一切なく。


『どこ?』


と僕に言われるがまま魚を見に行く。


とても仲の良い様子が伺えた。


その後はまた僕が先に駆けだし、早くサンドイッチを食べようよ!と催促している。

そんな僕を愛おしそうに見つめフェルナンド様は返事をする。


---


そんな第三者目線の夢を見ていたら、物音がして目を覚ます。


「起こしてしまったね。」

ベットの横に昨日のように椅子を持ってきて、座るフェルナンド様と目が合う。


僕は途端に目が覚め、謝る。第1王子との約束をすっぽかして寝るなんてどれだけ不敬なのか。


するとフェルナンド様は

「いや、いいんだよ。君の可愛い寝顔を久しぶりに見れたし今日はそれだけでも満足だ、と思っていたからね。それよりも起こしてしまってごめんね、こんな夜遅くに会いに来るなんて迷惑だったよね?」


よくそんなセリフが恥ずかしげもなく言えるなと思いながらもとても優しいことを改めて認識する。


「迷惑だなんてそんなことないですよ!それに今日は僕日記を読んでいたんですよ。そうしたらそこにフェルナンド様が載っていて・・」


「それは本当か?」


話している途中に被せられて驚く。

さらにいつもより声がワントーン低いことにも戸惑ってしまう。


「・・・ああ、驚かすつもりは無いんだ。・・・俺が怖いか?」


悲しみの宿った瞳で見つめられる。

その瞳はとても美しくて、ドキッとしてしまう。


「いえ、怖くなんてありません。何故でしょうか?」


なぜ僕がフェルナンド様を怖がるのか見当もつかない。


「・・・日記を読んだということは昔のことを全て思い出したということか?」


「いいえ違います。まだ全ては読めていなくて、フェルナンド様と婚約を結んだところまで読み、思い出しました。」


「そうか」

ほっとした様子を見せる。


「なにかあるんですか?」

聞いてはいけないことなんだろうけどフェルナンド様は優しくしてくださるから聞いてしまった。


少しの沈黙の後、口が開かれる。


「なんでもないよ、ただ昔の私は子供っぽかったので恥ずかしいなと、思っただけだ」


誤魔化しているようだが問い詰めれる立場でもないので仕方ない。


「・・そうですか、そういえばさっき夢で小さい頃にフェルナンド様と湖の近くへピクニックに行った夢を見ました!日記を読んだ後なので昔の記憶ですかね?」


「かもしれないな。私は何度もミシェルとピクニックに行ったな、、」


幸せそうな顔を見せる。


「でも、お互い教育やらで忙しくなってからは行けてなかった」


何故かピクニック程度でとても悲しみと後悔を浮かべている。


「また行きましょうよ!ピクニックぐらい学園が休みの日にでも!」


僕はその顔を見て、耐えられなくて咄嗟に誘ってしまう。


「そうだな、ありがとう」


普段の顔に戻りひと安心する。


「ミシェルは、いや昔のようにシェルと呼んでもいいだろうか?」


「はい!もちろんです」


「じゃあシェル、学園のことは覚えているのか?」


「そうですね、覚えています!きっとだいたいは、学園のマップも頭に入っているし、友達のことも、あっリィとか!覚えてますよ。」


リィとは公爵家の子息の幼なじみのフェリクスのことだ。日記で3人で遊んだ様子が書かれていたのでフェルナンド様も知っているし、幼なじみだ。


「そうか、それは良かった。リィ、ね。・・でも忘れている可能性もあるし学園に通えるようになったら私がシェルを案内するよ」


一瞬苛立ちを感じたが気のせいだろうか。


「ありがとうございます!そういえば1ヶ月以上も休んでしまったら、学園の勉強に追いつくの大変そうですね、、」


今から憂鬱だ。


「私が教えてやろう。次からノートを持ってくるよ。こう見えても人に教えるのは得意と言われているんだよ。」


「本当ですか!とても助かります、フェルナンド様、ありがとうございます!」


にっこり笑顔を見せるとフェルナンド様も嬉しそうにされる。


「フェルナンド様ではなくフェルノと呼んでくれないか?まだ距離を感じるのも仕方ないと思うが、形からでも入っていこう。」


と言われ、確かに、と思った僕は素直に承諾する。


「フェルノ、様 ピクニックの時の話をしてくれませんか?」


「ははっフェルノ様か、だんだん慣らしていこう。

そうだな湖の近くなら、、」


フェルノ様は大切なものについて話すように笑顔で話し始めた。

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