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ジゼルの婚約  作者: Chanma
野営訓練
113/128

86.禁句

 アイゼン家、まだ早朝の厨房では、珍しく使用人達が楽しそうに噂話をしていた。


「えーっ!ちょっとそれ本当⁈」

「本当よ。だって、私も見たんだもん。ジルベール様の汚れたドレスと、ノア様の室内着。あと、お二人の下着。」

「下着もっ⁈」

「ちょっと!声が大きいわよ!」

「ごめんごめん。だってさ……どういう状況よ、それ……部屋には、吐瀉物もあったんでしょう?」

「ベッドにもあったんだってよ。」─ひそ─

「えーーっ!!」

「だからさ……そういうプレイよ。ノア様もお若いから───」

「いや、若さの問題か⁈」

「ジルベール様の吐瀉物には、虹が掛かるそうよ。」

「レインボーまで⁈」

「そう。その吐瀉物レインボーに、ノア様は心を奪われているらしいの。」

「えー………そう言われると、見たいような見たくないような……」

「虹の橋が掛かったのよ。ノア様の心にはね。」

「いや、綺麗に纏めた様に言うなよ。汚いからな。」

「それにね…ノア様の部屋が汚れちゃったから、お二人はジルベール様の客室に行かれたそうなんだけどね───」

「うんうん、それで⁈」

「暖炉の火の具合を見に行った執事が、客室に入ったら、ノア様とジルベール様、2人でお風呂に入ってたんだって!」

「えー………いや、まあ……なんか、レインボーの話聞いた後だと、驚かないかな。むしろ、ほのぼの系かも。」

「……確かに。そうね。」

「仲は良いみたいだから、まあ…良いんじゃない?ノア様のお相手が、軍人令嬢ジルベール様なら、旦那様もルーカス様も、お喜びでしょうし。」

「軍人令嬢レインボーだけどね。」

「ちょっと…やめてよ!笑いが───」


「おい、お前達!話してないで仕事だぞ!」


「やばっ!料理長だ。はーーい!すみませんっ!」

「じゃあ、続きはお昼休憩の時にね。」

「そうしよ!」



──────────


「……う……ん………」

 ジルベールは、ベッドの上で、ぼんやりと目蓋を開いた。


 朝……かな。少し、頭が痛い……

 この感じ、二日酔いだな。あれ?私、昨日──


 そこまで思考して、自分が、誰かに抱きしめられている事に気が付いた。目の前に、人間の胸板が見える。

「なっ……!!」

 慌てて胸板を押し退けようとしたが、逆にぎゅうっと息苦しい程に、抱きしめられた。

「むぎゅ………くるし……」


「……ジゼル……起きたのか?」

「……少佐……」


 私を抱きしめながら寝ていたのは、アイゼン少佐だった。でも、心の端っこの方で、やっぱり少佐だったと、考えてしまった。私はいつから、そんな風に思う様になったのかな……


「ジゼル、水を飲むか?」

 そう言う少佐は、何だか残念そうな表情をしている様に見えた。私…何かしちゃったかな……

 まずい事に、昨晩、少佐の部屋でお酒を飲み出してから、以降全く記憶が無い。

「あ……はい。お水、飲みたいです……」

 恐る恐る、そう答えると、少佐は起き上がり、テーブルの上に置かれている水差しから、グラスにお水を注いだ。


 少佐……どうして上半身、裸なんだろう……


 そう思いながらベッドの上で、ゆっくり上体を起こし、視界に入った自分の格好を理解して、固まった。

 私は、紺色のレースのキャミソールと、紺色のドロワーズだけで───



 私は、まさかの下着姿だった。



「ジゼル、ほら、飲みなさい。」

「………………」

「ジゼル……どうかしたか?」

 私はベッドの上で、グラスに入ったお水を差し出している、少佐を見上げた。

「少佐………わ、私……どうして……下着しか、着ていないのですか?どうして少佐は……上半身に何も───」

 私の問いを聞いた少佐は、少し目を見開くと、グラスをサイドテーブルに置き、私の肩を両手で掴んだ。

「少佐、」

「君は……何も覚えていないのか?」

 少佐の紺色の瞳は、悲しそうに揺れている。

「えっ………私……そんな、まさか───」


「全て……君が、望んだ事だ。」

「ガーーーーン!!」


「俺は、君が望むままに、願いを叶えたに過ぎない。」

「私………私………」

「ジゼル………」

「そんな………」

「理解したか?」

「……は……い……」─ぽすっ─

 ノアは、放心しているジルベールを、そっとベッドに押し倒した。

「君が、何も覚えていないのは……俺も、さすがに悲しい。」

「少佐───」

「一緒に思い出そう。」

「私……何も覚えて………」

「2人であんな事までしたのに。今更無かった事に等出来ない。ジゼル。」─ぎゅうっ─

「ぐすっ………そんな………わ、分かり…ました…」

「良い子だ。分かればいいんだ。じっとして……」

「しくしく───」

「あはは、怖いのか?昨日はあんなに大胆だったのに。君は泣いた顔も可愛いな。」

「ぐすんっ……うぇ……しくしく───」



     ──────バンッ──────



「そこまでだよっ!ノアッ!彼女から離れなさいっ!」

「チッ……兄上、また邪魔を───」

「何が邪魔だっ!ジル、大丈夫だよ。ノアは、寝ぼけた君をからかっただけだ。君は、昨日は大胆に、ノアの部屋で吐いただけだから。」

「えっ…それはそれで大変申し訳ございません…」

「ほら、2人とも着替えて、リビングに朝食を食べに来なさいっ!ノアは早くしないと軍に遅れるよっ!ジルは、今日一緒にガルシア家に行こう。」

「私の家に……?」

「ああ。君の妹の、婚姻に必要な書類が出来たからね。ついでに、ノアからのプレゼントも、君の家に持って行こう。」

「ありがとうございます、ルーカス兄さん。」

「ルーカス……義兄(にい)さん⁈」

 ノアは、ジルベールの兄に対する言い方に、目を見開き、ルーカスはジロッと愚弟を睨んだ。

「…………じゃあ、2人とも、着替えたらリビングに来なさいね。」



     ──────パタン──────



「全く……若気の至りとはいえ、あの2人には振り回されるな……」


「父上っ!」

 ルーカスがジルベールの客室を出ると、ンハゴ族の帽子をかぶったリアムとジェイミーが、手を繋いで立っていた。リアムは、なぜかタオルを空いた手に握りしめている。

「お前達……どうかしたのか?」


「ねー、父上っ!僕もジゼルとお風呂に入りたいんだけどね……僕はもう赤ちゃんじゃないからさ……恥ずかしいから、父上から、ジゼルにお願いして欲しいんだっ!お願いっ!父上っ!」

「ねー、ねー、父上っ!吐瀉物ってなあに?そういうプレイってなあに?」

 ジェイミーと、タオルを持ったリアムに絡みつかれながら、ルーカスは、わなわなと震えた。

「ねーねー!吐瀉物レインボープレイッてなあに?プレイランド?遊ぶ所?僕も行きたいよっ!」


 その後、ルーカスの今までに無い怒鳴り声がアイゼン家に響き、吐瀉物レインボープレイは、禁句とされた。

お読み頂き、ありがとうございます。

不慣れな点が多く、時折改稿をしながらの投稿をさせて頂いています。

少しでも楽しんで頂ければ幸いです。


続きが気になる!と思って頂けましたら、

「★★★★★」をつけて応援して頂けると、励みになります!

どうぞよろしくお願いいたします。

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