83.このオカーキーの様にな
ジルベール達が、皆でノアからのプレゼントを食べた日の夕方。アイゼン侯爵家に、ジョセフの弟、ベン・ルイス侯爵が再び訪ねて来た。
「なっ……君は、まだアイゼン家に居るのかね⁈」
玄関ホールに来た所で、ジルベール・ガルシアと鉢合わせ、ベン・ルイスは目を見張った。
「………どうも。オカーキー食べる?」
無礼者の小娘は、左手に持った袋から、何やら小さいクッキーの様な物を取り出し、差し出してきた。
「オカ……?何だそれは……そもそも、他人の家で、食べ物を食べながら歩くとは……何て非常識なんだ、君はっ!」
素行を注意しながら近づくと、非常識小娘は、こちらをチラッと見ながら、右手で菓子を自分の真上にポイっと放り投げ、あろう事か、落下して来たそれを、パクっと頬張った。
「美味しいよ、オカーキー。」─ぽりぽり─
「君は………今すぐ止めなさいっ!」
「まぁまぁ。ほら、オカーキーでも食べなさいな。」
そして、こちらに向かって、得体の知れないその菓子を投げてきた。
「君っ……ぱく……いや美味いな───じゃ、ないんだよっ!止めないかっ!」
「ほら、美味しいでしょ?リビングに、まだまだいっぱいあるよ。アイゼン少佐が買ってくれたんだ。あんたにもあげるよ。」
「は?ノアが………」
「じゃ、またね〜。」
「お、おいっ!君っ!」
非常識小娘は、さっさと2階に上がって行った。
「おいっ、君達は、どうしてあの小娘を窘めないのかね⁈」
玄関付近に控えている、アイゼン家の執事に向かって、怒鳴った。彼女の一連の行動は、しっかり見えているはずだ。しかし、執事達は表情を変えずにしれっとしている。
「君達は、アイゼン侯爵家の執事だろう⁈あんな行動が、許されるのかねっ⁈」
執事の中の一人が、こちらをチラッと見た。なんだか、あの女の目付きに似ていて怒りが込み上げて来る。
「ジルベール様の事でございますか?ジルベール様につきましては、ここでは自由にさせる様にと、ノア様から言付かっております。」
そして、執事の一人は、淡々とそう告げた。
「ノアが……さっきもあの小娘は……ま、まさか───」
ベン・ルイスは、一つの答えを想像し、目を見開きながら自分の肩を抱きしめて震えた。
「ねぇ───ねえってばっ!」
そして、高い声で誰かに呼びかけられて、ハッとした。声のした方を見下ろすと、リアムとジェイミーが、もこもことした、奇妙な白い帽子をかぶり、手を繋いで立っていた。
「リアム、ジェイミー……何だ、その奇妙な帽子は……」
「何しに来たの?」
リアムとジェイミーは、手を繋いだまま、大叔父を睨み付けた。いつも礼儀正しい双子の、あまりの態度の違い様に、ベン・ルイスは驚いた。
「お前達……ん?その手に持っている物は───」
双子は、空いた手にそれぞれ、非常識小娘が持っていた物と同じ、小さな袋を握りしめていた。
「オカーキーだよ。」
そして、双子はぶっきらぼうにそう答えた。
「オカーキー…あの小娘もそう言っていたな。リアム、ジェイミー、ちょっとだけその袋を見せてくれないか?」
ベン・ルイスは腰を落として、双子に手招きした。
「やだよ。」
「こらこら、そう言わず…」
「ジゼルに意地悪する人にはあげないよ。」
「オカーキー、あげないよ。」
「いやいや、意地悪はしてないよ。大人の話をしていただけだ。ベンおじさんにも一つくれないかな?」
「オカーキーはあげないよ!」
「ベンおじさんが悪かったから、そう言わず……」
───ススス……さっ…にぎ───
すると、双子は執事の側に、スススと移動し、後ろ手に組まれた執事の手の中に、オカーキーを一つ握らせた。
「ベン・ルイス侯爵様、お引き取り願います。」
双子からオカーキーを受け取った執事が、声高らかにこちらに宣言した。
「なっ……リアム、ジェイミー!執事を買収するんじゃないっ!どこで覚えたんだっ!」
───さっ…にぎ───
「お引き取り下さいっ!」
「私は兄上とルーカスに話しをしに来たんだよ!」
───さっ…にぎ───
「さっさと帰───お帰り下さいっ!」
「やめないかリアム、ジェイミー!君も良い大人がこんな子どもに買収されるんじゃないよっ!」
「ちょっとちょっと、なんの騒ぎ?」
騒ぎを聞きつけたルーカスによって、ベン・ルイスはやっとリビングへ通され、双子はさっさとジルベールの客室へ逃げて行った。
────────────
「いやいや、何だかよく分からないが、孫達がすまないね、ベン。」
「いえ、兄上。悪戯盛りなんでしょう、あの年頃は。構いませんよ。」
「悪いね、孫可愛さに、甘やかしているものだからね。」
「あはは、兄上は、孫が産まれて本当に変わりましたね。自分の子ども達には、あんなに厳しかったと言うのに。」
「俺も歳なんだよ、ベン。わはは──」
アイゼン家のリビング、ジョセフ、ルーカス、そしてベン・ルイスが、暖炉の前に座っている。
夕刻に、父の弟で、叔父のベン・ルイス侯爵が訪ねて来た。
ベン叔父様は、自身の兄であるジョセフを慕っており、兄弟仲も良い。しかし、同じ軍人の家系であるルイス家の婿養子となった叔父様は、アイゼン家を支えようとしてくれるが、時にその情熱が空回りしてしまう為、俺に取っては少々面倒くさい。
今日も何となく、面倒な事を言われる様な気がしていた。
「申し訳ありません、叔父様。子ども達には、よく言い聞かせておきます。ところで…今日は何の御用で?」
そう尋ねると、穏やかに笑っていた叔父は、真面目な顔になり、向かいに座る、父と自分を見た。そして、ゆっくりと口を開いた。
「兄上、ルーカス。ここ数日、この家にジルベール・ガルシアがうろうろしている様ですが……ガルシア家の婚姻に際して、アイゼン家が仲人をするつもりで?」
「ああ、その話ですか。ジルの妹が結婚するので……その通りですよ、叔父様。」
まだ、ルイス家には伝えていなかったが……軍人令嬢の妹だけあって、今回の婚姻は、既に街で有名な噂になっている様だ。叔父の耳にも入ったのだろう。だが…順番が逆とはいえ、ノアとジルに婚姻を結ばせるつもりであることは、軍内の有力貴族家には告げているし、叔父様も、父から聞いて知っているはずだ。別に仲人位、気にする事ではないはずだが…そもそも、ノアがしでかしてくれたせいで、約束を保護にすればジルの怒りを買い、アイゼン家は大変な事になる。
「ノアの提案だそうだが…そうまでするメリットが、アイゼン家にあったのかね?ルーカス。」
叔父は訝しげにこちらを見た。やはり、なんだか面倒くさそうだ。別に、そんなにメリットばかりを気にする話ではないだろうに……
ルーカスは、ぽりぽりと頬を掻いた。
「メリット……まあ、今回の婚姻は、軍人令嬢の妹の結婚、という事で、広報部が市民に広く知らせる様動くでしょう。王命から幼い妹を逃す──感動的な話ではないですか。仲人として協力したとなれば、広報部との仲は深められるでしょう。部長を務めるアデル殿のマルティネス公爵家とは、現在そう深い繋がりはありません。これを足掛かりに、親睦を深められれば、アイゼン家としても損はありませんよ?」
執事が持って来た東方の茶を、叔父に勧めながらやんわりと答えたが、叔父はますます声を大きくした。
「確かに…そういう見方もあるだろう。だがな!ガルシア家は訳ありだ。王室に、変に目をつけられでもしたら───」
「マルティネス公爵家や、武器商のベネット公爵家もガルシア家に友好的ですが、今のところ不利益を被ってはいません。むしろ、言い方は悪いですが、ジルを利用して民草からの指示を得ている…利益の方が大きいでしょう。それに、今回、アイゼン家が仲人を務める目的は、軍の有力貴族家として広報部に協力し、軍の財政に貢献する事です。決して、王室への批判ではありません。」
表向きはな。全てはノアに振り回されているのだが───
「そう言う訳で、ベン叔父様。ご心配には及びませんよ。あぁ、紅茶も良いですが、東方のお茶も美味しいですね。最近、我が家で流行っているのですよ、叔父様!以外と何にでも合いますし。」
叔父は、不満そうな顔をしたが、口を閉じた。
「ベン、お前が心配してくれる事は、有り難く思っているよ。だが、そういう事だ。」
「ですが────」
叔父は、今度は父に向かって口を開いた。
「私が言うのも何ですが…ジルベール・ガルシアの素行について、褒められたものではありませんよ⁈兄上も…軍の記録を見てご存知でしょう?」
「まぁ…多少聞いてはいるが。割と破天荒な兵ではあるな。あはは!」
「兄上っ!笑い事ではありませんよ⁈先日も、あの小娘は、私に向かって左耳を削ぐと言ったのですよ⁈」
「左耳…じゃあ、お前、気を付けた方が良いんじゃないか?まだ耳は付いているようだが、森には入るなよ?」
「今回ノルマが多いのでしょうかねぇ、ジルは。」
「わはは!威勢が良いな!孫が楽しみだよ。これは相当優秀な軍人になるぞ──」
「父上、気が早いですよ?」
「は?孫?兄上、ルーカス!良くわかりませんが笑い事では無いでしょう⁈あんな素行の悪い娘の家と、これ以上繋がりを持つのは───」
「ベン、ジキルの娘を、これ以上蔑むのは、私が許さない。」
声を荒げ出した叔父に、父がゆっくりと口を開いた。
叔父は……結局の所、ジルが気に入らないのだろう。確かに、貴族令嬢として見るならば、ジルは赤点どころでは無い。礼儀作法やマナーは広報部から叩き込まれている様で、一見すると問題なく思えるが…素行がなぁ……
しかし、ガルシア家───は、もしかしたら多少求めているかもしれないが、アイゼン家は貴族令嬢としての彼女を、求めてはいない。
彼女を手に入れる事で、ノアの目的が達成され、かつ、高位貴族として妻帯者であるという、ノアの体裁も整う。あとは…アイゼン家は軍人である事に重きを置いている。ノア程でなくとも、それなりに戦果を上げてくれれば十分だ。
「兄上……私は、決して、その様なつもりでは───」
「それにだ。お前の言いたい事も理解は出来るが、彼女は、自分自身の素行の悪さによって招いた事については、軍から相応の処罰を受けている。済んだ事だ。」
「ですが………」
父上の言う通りだ。彼女は、他の軍人同様に、自らの失態は懲罰をもって償っている。彼女の背中には…酷い古傷があると、家の医者から報告を受けた。何の件でそうなったのかは分からないが、懲罰で鞭打ちにあった痕だろう。医者は、傷痕が薄くなる様にと、塗り薬を塗ってやっているようだが、消える事は無いだろうな。気休めに過ぎない。
「………ベン、これ以上この件に口出しは不要だ。お前に心配を掛けると思い、伝えていなかったが……この仲人の件を白紙にすれば、アイゼン家は取り潰される。」
「なっ…………」
諦めの悪い叔父を黙らせる様に、父上がしょうがなく告げた。
「あの小娘も、確かに同じ事を言っていた……はったりでは無かったのか───あ…兄上っ!相手は男爵家でしょう⁈何故その様な事になるのですかっ!」
叔父は、眉を下げ、取り乱した様に父に問い詰める。
「何故と言われてもなぁ……」
父はため息を付いた。最早、多少事実を言わねば仕方ないだろう。
「叔父様、」
俺は父に目配せし、渋々口を開いた。
「実は───ノアが……彼女に手を出しまして…いや、出したというか、未遂というか…それで、」
「やっぱりそうだったのかあぁぁっ!」
「!!」
すると、こちらが言い終わる前に、叔父は目を血走らせて叫びながら立ち上がった。父も、急に叫びながら立ち上がった叔父に驚き、茶を吹き出した。
「おい、ベン!急に何だ⁈」
「いや、実は最初から、そうではないかと思っていたのですっ!兄上、ルーカス。さすがにそれは…アイゼン家として、どうかと思いますぞ!」
「いきなり思いますぞ、て。ベン、いったい何を思いますぞ……ちょっと落ち着きなさい。」
「これが落ち着いていられますかっ!異常な事ですよ、兄上っ!」
「はぁ……?何がだ……」
「叔父様、いったい何をそんなに騒いでいらっしゃるのですか?まだ説明は───」
「いや、聞かなくても分かる。ルーカス。私もそれほど鈍くはないからな。」
説明を続けようとした俺を、叔父は右手で静止した。
「ノアは…非常に優秀な軍人だ。それこそ、アイゼン家始まって以来の───しかし、そんなノアが、アイゼン家に生まれながら、結婚を視野に入れ無い事で、兄上が深く悩んでいる事は、私も存じています。」
「いや、確かにそうだが、ノアの婚姻の件ならルーカスから───」
「叔父様、その件なら、父上から───」
「…………え?」
ジョセフとルーカスは、顔を見合わせた。しかし、ベン・ルイスは2人の話など聞かず、右手を握りしめ、熱弁を続ける。
「だが……ノアも男だ。いくら、結婚に興味が無いとはいえ、人肌恋しく思うのは自然な事だろう。人間ならば、何もおかしな事では無い。理解は出来る。」
「……ベン、お前はいったい何を言っているのだ?」
「しかしっ!しかしだっ!それがどうしてあの小娘なのだっ⁈確かに一応は貴族という事で、選んだのかも知れないが…ルーカス!今回ばかりは選択を誤っているぞ!」
ヒートアップした叔父は、目をらんらんと見開いて、俺をビシッと指差しながら叫んだ。
「あの……叔父様、話が見えないのですが……」
「ルーカス、はっきり言われないと分からないのか?白々しい。だったら言ってやろう。金で応じる体裁の良い性処理人形なら、他にも居ただろうと言っているのだっ!」
ベン・ルイスの叫び声が、アイゼン家の広いリビングにこだまし、その後僅かに沈黙が流れた。
「い…………いやいやいやいや!ベン!さすがにそれは!」
「叔父様、清い!清いですよ、ノアは!清らかな感じではありますよ⁈」
一瞬の沈黙の後、ジョセフとルーカスは一斉に口を開いた。
「いやいやいやいや!」
「ちょっと父上、それ以外に他に言う事あるでしょう⁈」
「清いよ清いよ!」
ジョセフはあまりの衝撃に、語彙力を失っている。
「ベン。お前……なんておぞましいことを」─ぞぉっ─
「そうですよ、叔父様っ!そんな思考になる事自体が、恐ろしいですよ!……ちょっと、鳥肌が……」─ぞおぉっ─
ジョセフとルーカスは、ソファーの上で縮こまり、自分の肩を抱きしめ身震いしながら、ベン・ルイスを白い目で見た。
「え………兄上、ルーカス……何か違いました?」
2人の反応を見て、ようやくベンは、聴く耳を持った。
「ベン、お前は……何か、貴族家同士のしがらみであったり、派閥争い等を気にしすぎて、疲れているのでは無いか?」
「そうですよ、叔父様。そういう腐った思考は、街のゴシップ紙だけにして下さい。」
「……違うの?じゃあ何で、あの小娘はずっとこの家をウロチョロしているので…?金で雇ってノアに与えたのでは…?」
「叔父様、ちょっと頭を冷やした方が良いですよ。今日はもう、お帰り下さい。」
「いや、しかし───」
「だいたい……金を積んで解決する話ならとっくにそうしてるんですよ。物事は、あんたみたいに単純じゃないんだ。」
「え、ルーカス……どさくさに紛れて酷い悪口を言われた気がするのだが……」
「悪口なんて、言っていませんよ、叔父様。さぁ、お帰り下さい。」
ジョセフとルーカスは、ベンの左右に立ち、腕を掴んで椅子から立ち上がらせた。
「いや、ちょっと…兄上っ!ルーカスっ!私はアイゼン家の為を思って───」
「ベン、」
抵抗するベン・ルイスに、ジョセフがゆっくり声を掛けた。
「お前のその様な歪んだ発想こそ、煩悩に振り回された、愚か者の思考だ。我ら軍人たる者、常に質実剛健でなければならない。そう……この、オカーキーの様にな。」
ジョセフは、先程リアムとジェイミー、そしてジルベールが持っていた物と同じ袋を、ベンの右手にそっと握らせた。
「兄上………」─にぎっ─
ベンは、尊敬する兄を潤んだ瞳で見上げ、ジョセフは固く頷いた。
ベンは2人に両肩を支えられ、そのままリビングの扉から、部屋の外に出た。
「叔父上、ご無沙汰しております。」
ベンがリビングから連れ出された所に、丁度ノアが帰宅し、3人と鉢合わせた。
ノアは、両手に何やら沢山の荷物を下げていた。
「ノア───」
ベン・ルイスは、ノアと鉢合わせ、目を見開いた。
「叔父上、どうかなされたのですか?父上と兄上に支えられている様ですが……」
ノアは、異様な3人を見て、眉間にしわを寄せた。
「ノア、これは……何でもないよ。気にしないで。今日は少し遅かったね。」
ルーカスの何か隠す様な態度を、ノアは多少不思議に思ったが、特に追求はしなかった。どうでも良い叔父の事よりも、確認したい事があるのだ。
「兄上、ジゼルを客室では無く、私の部屋に置いても構いませんか?」
──ドスッ──
ジョセフは無言で右ストレートをノアの左肩に打ち、荷物で両手が塞がっているノアは、受け止めきれず、痛みに顔をしかめた。
ベン・ルイスはノアを見ながら、やはりそうか……と呟きプルプルと震えている。
「何という事だ……マシューが……哀れでならない………」
「ちょっとノア!いきなり……良い訳無いでしょう⁈」
「ですが──彼女は、その……体調も良さそうですし……私の部屋で───」
「ノアッ!!」
ノアが自分勝手な理由を述べ出した時、大人達の輪に、リアムとジェイミーが割って入って来た。双子は、ジルベールの作ったンハゴ族の帽子をかぶり、2人で手を繋いでノアを見上げている。
「お前達!また起きていたのかっ!早く寝ろと言っただろ⁈」
双子は、父親の言葉を無視し、ノアをじっと見上げている。
「リアム、ジェイミー……お前達は、最近ずっと、その帽子をかぶっているな。」
そう言うノアは、ジルベールが編んだ水色のマフラーを、毎日着用している。
「ねぇねぇノア、体裁の良いってどういう意味?」
「ねぇねぇノア、性処理人形ってなあに?」
「なっ………リアムッ!ジェイミーッ!止めないか!そんな事を聞いてはいけないっ!」
「ベンッ!お前のせいだぞ⁈孫が酷い言葉を覚えてしまったじゃないか!」
双子の物言いに、ジョセフとルーカスは慌てふためいた。
「ねぇねぇ、ノア。教えてよ。」
「体裁が良いとは、世間や他人からの見た目が良いという事だな。性処理人形とは、一般的に良い意味では無い。そこに誠意は無く、異性あるいは同性を欲望の捌け口に───」
「ノアッ!お前は子ども相手に説明をするなっ!」
──ドスッ──
ルーカスも右ストレートをノアの左肩に打ち、荷物で両手が塞がっているノアは、またも受け止めきれ無かったが、今回は体を若干反らして受け流した。
「叔父様、とにかくお帰り下さいっ!おいっ!君達、叔父様のお帰りだっ!リアム、ジェイミーッ!さっさと子ども部屋に行けーーーっ!!」
珍しく怒りをあらわにしたルーカスに、命じられた執事達は慌ててベン・ルイスを玄関へと案内し、双子は逃げる様に2階へ駆け上がった。
「全く……玄関に塩でも撒いといてくれっ!」
叔父が去った後、残った執事にルーカスは言いつけた。
「ルーカス、後は任せたぞ………」
ジョセフはそう言うと、疲れ切って自身の寝室へ向かい、ルーカスが見渡した時には既に、ノアの姿は無かった。
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