ペンギン・ツァー
ペンギン・ツァー
9月12日夕刻。州都ホバートから300キロほど北上した海岸のリゾート地、ビシェノ。ペンギン・ツァーの集合場所のマリンショップに、定刻の5分前ごろから人が集まりはじめました。6時40分すぎ、ごま塩おひげの長身のガイドさんが、15名ほどの参加者を集めてペンギン・ツァーの説明。容赦のない早口で、「フラッシュはたかないで」「懐中電灯で照らさないで」等、注意事項がかろうじてわかった程度。とっぷりと日が暮れた外に出てマイクロバスに乗り込みました。
15分ほどでバスが止まりました。平坦な牧場の中で、ロッジのようなホテル(らしい)が見えます。点々とライトが灯ったロープで示されたルートを歩いて、数分で海岸近くの林のふちに。暗くてよくわかりませんが、その先は急斜面で、海ぎわは崖かもしれません。ここで、ペンギンが岸を上がってコロニーに戻って来るというような説明(聞き取れず)。ところが、ガイドさんの背後に白い影がふたつ。コビトペンギンではありませんか。身の丈50センチくらいのかわいらしい立ち姿で、ほんとうにこびとか妖精みたい。
説明の間に白い影はふえて5羽になりました。そのころになって、ガイドさんがようやくライトで照らして見せてくれました。海から上がって来たばかりのペンギンたち、頭や背にはまだ水滴がついています。ちょっとおずおずしながら、それでもしっかりと巣穴をめざしてよちよち歩いて行きました。斜面のほうでは、人やライトにたじろいで、何羽かが順番待ちといった様子。20羽いたかいないか、という程度で、列をなして押し合いながらどんどん通過、という様子ではありませんでした。
上陸するペンギンが少なかったため?「みなさんはラッキーですよ。これからコロニー(ルッカリーという)に入りますから」
コロニーはどこでも(サギもウミネコもコアジサシも)同じようなにおい。牧場のへり、大きな石や藪かげの地下からうなるようなペンギンの声がします。
ガイドさんがペンギンの巣箱を見せてくれました。ちょうどお茶箱くらい(1メートル×60センチ×60センチくらい)の四角い木箱で、入口用の直径12センチ・長さ40センチくらいの塩ビ管が両側に突き出ています。ふたをあけると中は2つに仕切られ、片側にはペンギンが1羽座り込んで、迷惑そうな顔をしていました。産卵はまだこれからで、雄が縄張り確保をしているとのこと。しきりに鳴いていたのはそのためでしょうか。巣穴を羊が踏み抜いたりするので、こうした巣箱を置いているそうです。
ペンギンたちはぱらぱらと戻ってきて、通路を横切ったり、通路端でしゃがみこむものもいました。何しろ小柄。犬ばかりか猫にもとられるとのこと。それでも人間の暮らしとうまく折り合って、しっかり繁栄しているようです。




