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遠征出発

遠征出発


 12日日曜朝。風は冷たいけれど、よいお天気。レンタカーでさっそうと迎えに来てくれた尚ちゃんと、まずはスーパーで食材準備。宿泊施設には冷蔵庫や電子レンジ、オーヴンまであるそうで、「オーストリアの人から教えてもらったパイを作る!」と尚ちゃんが張りきっています。

 こちらの物価、シドニーの地下鉄(駅6つくらいで700円ほど)や衣類、本等(絵葉書数枚のセットが500円以上)の値段は思いのほか高めでしたが、宿代をはじめ、食材等はかなり安め。平均すれば日本より暮らしやすいというところでしょうか。

 買物を終え、ラルフ湾へ。途中、車にひかれたばかりのポッサムの死体を見ました。交通事故で親が死んで、ポーチ(有袋類の袋。いい呼び方ですね)の中の子が生きている時に、世話をしている人たちがおられるそうです。有袋類用のミルクはラクトースがない高価なもので、なかなかたいへんとのこと。

 ラルフ湾はマリーナ開発計画があって、地元の人が反対している干潟。きめ細かな細砂の干潟で、(ゴウシュウ)ミヤコドリ(これも和名辞典にない)が鳴きかわしていました。思いきり遠浅に見えるこの場所にマリーナを作るのはやっかいだし、需要も少なそう。計画が中止になるとよいのですが。

 マリーナ開発問題で揺れるラルフ湾を後に、一路北上。ブッシュと羊の牧場が続き、青空には雲が浮かび、いかにも気持ちのよいドライブ(もっとも私は情けなくも車酔い)。お弁当休憩のほかは、ひたすら車中。羊は毛刈りを終えて白くなっているのもかなりいて、まだ寒そうよねえ、と瑞香さんが同情。

 牧場のあちこち、暗黄色の花で色づいているのが進入植物のゴース(ハリエニシダ)の茂み。場所によっては、延々と黄色い藪が続きます。セイタカアワダチソウの全盛期のような景色。でも、手で抜けるセイタカアワダチソウに比べたら、とげだらけの灌木であるゴースの藪は何百倍も手ごわそう。

 まっさおな海と空を仕切る半島が当面の目的地、フレイシネット海岸です。ところが、眠気にまぎれて分かれ道を見落としたらしく、気がついたらもう最終目的地のビシェノについてしまいました。ペンギン観察ツァーの集合場所を確かめてから、とりあえず、宿泊予定地のホリデイ・ユニットへ。

 気のよさそうな受けつけのおじさんが、「車のスイッチの表示が日本語で読めないんだよ。読んで教えてくれたら、シーツ代を引いておくから」 さあて、私たちにわかるんでしょうか。でも、瑞香さんと辞書を先に立てて行ってみると、改造中の車内のスイッチ表示だけだったので、「これはポンプ」「こちらは社内のライト」等、あっさりとお仕事終了。

 まだ時間はありそう。後戻りしてコールズ・ベイに行ってみることにしました。遠くに見える広い潟湖は、ラムサール登録湿地でもあるモルティング・ラグーンとのこと。ビジターセンターでトーマスさんから立入証をいただいて、灯台がたつトゥーアヴィルの岬の先端へ。白砂の浜とカラフルな砂岸の断崖絶壁は、いかにも景勝地そのものといったみごとな眺めです。時期が早かったのか、繁殖中の海鳥の姿は見られませんでした。

 帰路、夕闇せまるモルティング・ラグーンで、黒鳥の家族群(数十組はいたはず)が点々と浮いているのを遠目に見ました。どのペアにも、まだ小さなヒナが3~4羽ずつ。親鳥が点にしか見えない距離だったのが少々残念。

 さて、「ペンギン・ツァー」に間に合うように戻らなくては。




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