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第二話 蒼の誘い

 うちひしがれた桃太郎は、丘の上の城に帰還する。夕暮れ時だが、城には誰もいなかった。

 生き残った者が何人かいたかもしれないが、みんな避難したのだろう。

 これからどうするべきか。途方に暮れる桃太郎。


 とにかく疲れた。いつの間にか桃太郎は寝ていた。


 ◇◇◇


「おはよう。」

 朝、桃太郎が起きたら、目の前に、小袖こそでを着た女がいた。この時代の庶民の女としては、一般的な服装だ。


 スラリとした体型で髪が長い。美しい顔立ちをしている。20~30歳くらいに見える。

 頭にはつのがあった。女の鬼だ。


「また鬼か。昨日はいなかった鬼だな。財宝を奪いに来たのか?」

「あなたの事が気になってね。私の名は蒼氷そうひょう翠嵐すいらんから聞いてきたの。ああ、そうだ。外の火災は私が消し止めといたわ。」


 どうやら戦う気はなさそうだ。財宝の件は後回しで良いのだろうか。

 しかし、なんで鬼が村の消火をしてくれたんだろう。それよりも、あれほどの大火災、どうやって消し止めたのか。桃太郎が問いかける。


「消火をしてくれたことには礼を言う。しかし、あの状態からどうやって消した?」

「私は水と氷を操る力を持っているの。周りの水が足りなかったから、少し荒っぽいことはさせて貰ったけど、なんとかなったわ。」


「ひとりで消したのか?あれを?」

「そうよ。たまたま私、近くにいたもんだから。間に合って良かったわ。」


 城から外を見てみると確かに消えている。とはいえ、酷い有り様だ。低地にある民家は壊滅的だろう。


「それで、何か俺に聞きたいことでもあるのか?」

「あなた、自分の出生について何か知っていることはある?」


 桃から生まれた話は、ドンブラでは誰もが知っているが、鬼は知らなくて当然か。


「育ての親から聞いた話だが、川から流れてきた大きな桃から生まれたそうだ。小さい頃から不思議な力があったと聞いている。例えば動物と話せたり。」


(育ての親?生きてるのかしら。まあ今は聞かないほうが良いか。)


 蒼氷は少し考えてから言った。

「あなたは、紅炎こうえんという名の、炎を操る鬼よ。人間の呪術によって、桃に封印されてたんだと思う。」


 混乱する桃太郎に対して、蒼氷が話を続ける。

「陰陽師は特別な桃を使って、鬼を封印する秘術を使えるの。桃の中で弱体化が進行して、赤子の状態に戻されたんだと思う。」

「俺が鬼?つのは生えていないぞ。昔から武器に熱を加えるくらいは出来たが…炎を操る?」


「鏡を見てごらんなさい。」

 つのが生えていた。いつからだ?

 あの時、鬼の力が覚醒して暴走したということか?



「俺が鬼…なのは認めるしか…。すると…俺は鬼ヶ島で…仲間のはずの鬼を…苦しめて…人間までも…。」


 あまりにも受け入れたくない事実。乗り越えたいがために口にしたんだろうか。

 震えながら、自分でも何を言っているのか解らない。

 解ったのは、殺したという言葉を使えないほど、自分が弱かったということだ。


「落ち着いてからでいいわよ。」

 蒼氷はそう言って、呆然としている桃太郎を抱きしめた。


(温かい。なんだ、鬼も温もりがあるんじゃないか。)


「聞いて。紅炎は理由わけもなく、鬼や人や動物を苦しめたことは無かったわ。きっと私の知らないあなたも…。」


(そうだ。鬼だって、人に害をなすものばかりとは限らないはずだ。なんで俺は憎しみに似た感情を持っていた?)



 しばらくして少し落ち着いてきた。現実を受け止めて、前に進むしかないのだから。


「ところで、なんで紅炎だと分かる?炎を操る鬼は他にもいるんだろ?」

「そうね。でも、私はあなたが紅炎だと確信してる。気配が同じだもの。見た目は違うけども、育った環境の影響だと思う。転生に近いような状態だろうから。」


「あなたには、鬼について色々と知って欲しいんだけど…。これから私の旅に付き合わない? ここに留まってても仕方ないでしょ。水と氷を操れる私なら、あなたの暴走も抑えられる。鬼ヶ島の財宝を持っていきたい。どこにあるの?」


 完全に蒼氷のペースだが、断る理由もない。ただ、財宝については先に聞いておきたい。


「財宝は城の近くに隠してある。ところで、翠嵐は人間から財宝を奪ってないと言っていた。本当なのか?」

「そうよ。鬼が創った道具だもの。なんで人間の物だと思ったの?人間には使えないはずよ。気になるなら、紅炎が財宝を管理しても構わないわよ。」


 蒼氷が嘘を言ってるようには思えない。

 たしかに財宝を他人に触れさせたことはない。あれほど特殊な道具を、軽々と使わせたくなかったからだ。



 桃太郎は過去を思い返してみる。鬼ヶ島を知ったきっかけは、旅人から告げられた一言だった。


「海を渡った先にある、鬼ヶ島に悪い鬼たちが住んでいる。鬼たちは人々から奪ってきた様々な宝物を守っている。」


 財宝が人間に使えないとなると、どうも理解に苦しむ。旅人は何を伝えたかったのか?

 以前から鬼ヶ島の件には、引っ掛かる点がいくつもあった。蒼氷と一緒なら解ることも多いだろう。

 桃太郎は、蒼氷と行動を共にすることに決めた。


 とにかく真実を知りたい。いや、知るべきだ。罪を償うためにも。

 桃太郎の新たな生き方と、過去の真実を探す旅が始まった。


 ◇◇◇


 その数日後の某所。建物の中で何人かが話し合いをしている。


紅炎こうえんが覚醒しただと?どういうことだ?20歳の誕生日は何事も無かったというのに。」

「術式が使われたとは思えませんな。翠嵐すいらんとの戦闘が原因かと。どうせなら、どちらかに潰れて欲しかったところですが…。」


蒼氷そうひょうと共に行動しているというのが、色々と厄介ですな。」

「覚醒で効果が切れていると?例の計画は大丈夫なんだろうな?」

「紅炎は強力な鬼ですから、例外的なものかと。他には確認されていませんので。」


「計画の進行は?」

「順調に進行しております。紅炎の監視を増やす手配は致しました。やつらに妨害されることはないと思いますが…。」



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 次回予告

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 あたしはギャルじゃないっての!時代設定からしておかしいじゃないの!

 美人のお姉さん系だから!

 みんな、読んでくれてありがとね。蒼氷そうひょうよ。


 サスペンスぽい展開になってきたわね。怪しげな組織が、なにか企んでるみたい。

 いつ戦うことになるのかしら?

 この手の敵はミスリードで、真の敵は他にいるなんてのが、ありがちな展開よね。


 じかーいじかい。

 白い巨大ロボットとバトルするみたいよ。あれ?時代設定は?

 えと、ライフルからビーム?そんなの勝てるの?


 えと、なんて読むんだっけ、これ?

 とぅーびーこんてぬーど。

 カンペとか読んでないからね!




「はい、オッケーでーす!」

「ここ、絵はどうします、監督?」

「PD!デロリアンとガ◯ダム使える?権利とか…」

「いいね!それ、採用!」


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