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第一話 紅の力

 むかしむかし、鎌倉時代あたりの物語。あるところに人々が平和に暮らす、ドンブラという村があった。


 村といっても、丘の上には小さいながらも城が立てられており、海側には波止場もある。


 ある日の夕方、村の波止場に1艘の舟が向かってくることが目撃される。20人は乗れそうな舟だった。


 波止場を警備する村人たちは、数人乗りの小さな舟しか知らない。その舟は、村人たちにとっては大きく、見たことも聞いたこともない形をしている。

 異国の海賊だろうか?波止場の管理者は警戒の鐘を鳴らした。



 舟が波止場にたどり着き、次々と人が上陸してくる。

 警備のために集まった20人ほどの村人たちが、槍や薙刀を構えて制止しようとする。しかし、それは叶わなかった。


「どけ!雑魚どもが!」

 賊は大きな金棒で村人たちを強引に薙ぎ倒す。あっという間に全員がやられてしまった。


 それを見ていた何人かの村人が、叫びながら逃げていく。他の村人たちに知らせなければならない。

「鬼だ、鬼が来たぞー!」


 賊は人間ではなかった。頭につのが生えている。鬼(鬼人)だ。


 大柄でがっしりとした体格、身長は180センチ以上が多い。服装は、虎柄の腰巻きのみが大半だった。

 肌の色は人間と特に変わらない。角を隠されたら、服装次第では人間と区別がつかないだろう。


 鬼は合計で11人。金棒などの武器を持っている。村の警備では止めようが無かった。


 上陸した鬼たちは、城がそびえる丘に向かって進みだした。目的地は城のようだ。

 もはや進攻を止めようとする村人はいない。みんな鬼の姿に怯えて逃げ出すだけだ。



 鬼たちが丘の下に辿り着いたとき、眼前にひとりの男が待ち受けていた。


 その男は、紅く輝く矛を持っていた。薄暗い夕闇の中、矛全体が煌々と輝いている。

 矛はとても大きく、2メートル近くはある。かなりの重量があるだろう。


「ひとりだけか?何者かは知らんが、我々の前に立ちはだかるなら容赦はせんぞ。」

 そう言った鬼のひとりが金棒を振りかぶり、男に向かって走りだした。


 男が応戦する。男は矛を軽々と振るい、金棒が届く前に、鬼を横殴りで吹き飛ばす。

 矛の振りの速さからか、軌跡が紅い残光として残った。


 鬼たちは少し驚いたが怯まなかった。続いて4人の鬼が男に向かって走り出す。

 男はゆっくりと進みながら、矛を2回振るだけで4人の鬼を叩き伏せた。


 男は180センチほどの長身で、鬼たちと体格はさほど変わらない青年だ。服装は庶民的で、白い羽織と白い鉢巻はちまき

 屈強そうな鬼たちを相手にあまりにも強い。男は何者なのか。


「鬼どもめ。このドンブラの城主、桃太郎が成敗してくれる!」


 彼の名は桃太郎。5年ほど前に鬼ヶ島に渡り、鬼の居城から財宝を取り返したとされる、村の英雄である。

 ドンブラは、元々は小さな村だったが、その財宝の力によって、急速に発展を遂げたのである。



「どけ、お前ら。俺がやる。」

 そう言って、後ろに控えていた鬼が前に出てきた。


 翠嵐が桃太郎に向かって叫ぶ。

「紅の矛。その強さ。てめえが鬼ヶ島の財宝を奪った張本人か!俺の名は翠嵐すいらん。仲間たちのかたきめ、ここでぶっ潰してやる!財宝は返して貰うぞ!」


 集団のリーダー格のようだ。雰囲気が他の鬼と明らかに異なる。

 服装も特殊で、奇妙な甲冑を身に付けている。鎧と籠手こて臑当すねあて。ただ、頭部はむき出しだ。

 手には何も持っていないが、両腕の籠手には、少し大きめの丸い盾のようなものが付いている。


 桃太郎が応じる。

「奪っただと?俺は人々から奪われた財宝を取り返しただけだ。」

「問答無用!行くぜ、止めてみな!」


 翠嵐を名乗った鬼が体勢を低く構えると、全身が翠色のオーラに包まれた。

 そして、奇妙な甲冑の背部から風が吹き出す。


 翠嵐は腕をクロスさせて、盾を前方に構えた状態で、凄まじい速さで桃太郎に突進してきた。

 あまりの速さに、桃太郎は反射的に矛で受けようとする。矛を振る余裕がない。


 翠嵐は右腕の盾で矛を弾いた。桃太郎の胴ががら空きになる。今度は左腕の盾を前にした翠嵐が、再度加速して突進。

 桃太郎は矛を持っていられず、吹っ飛ばされた。


 地を這う桃太郎を見下ろしながら、翠嵐が言った。


「終わりかよ。呆気ねえな。様子見で手加減したんだが、拍子抜けだぜ。さて、財宝のところまで案内して貰うぞ。」


 かろうじて桃太郎の意識はある。

 翠嵐は財宝の在りかを聞き出すため、桃太郎を殺すわけにもいかない。かなり手加減したようだ。

 それでも、桃太郎は数秒で地面に這いつくばることになった。


 意識が朦朧としながらも、なんとか立ち上がる桃太郎。

 しかし、矛は飛ばされている。再度突進されたらひとたまりもない。絶体絶命の桃太郎。



(悪い鬼どもは、俺が退治しなくてはならない。村人たちは俺が守る。もっと、もっと強い力が欲しい!)

 桃太郎が強く願ったとき、全身が紅く輝きだした。


 翠嵐は危険を感じとり、反射的に桃太郎から距離をとった。『ドン!』と爆発音のような大きな音が鳴り響き、桃太郎の体から炎が吹き出す。周囲2メートルほどが炎に包まれた。


 桃太郎の頭に二本のつのが見える。混乱した様子の翠嵐が問いかける。


「まさか、お前なのか…。紅炎こうえん。」


 返事はない。桃太郎は意識がないようだ。ぐるぐると周りを見回している。


 大きな音が気になった何人かの村人が、近くまで様子を見にきた。それが、たまたま桃太郎の視界に入った。

 桃太郎は、その村人たちに向かって腕を振ると、炎が放たれた。燃えて苦しむ村人たち。


 暴走した桃太郎は、視界で捉えた動くものを敵とみなすようだ。村人たちのいる民家のほうに移動していく。

 混乱した翠嵐は、鬼たちに退却を指示、自身も退くことにした。



 紅いオーラを纏った桃太郎の暴走により、村人が次々と死んでいく。桃太郎の放った炎が、あちこちで燃え広がる。



 数分後、意識を取り戻した桃太郎が見たものは、炎に包まれるドンブラであった。火災は収まる気配がない。

 おぼろげな記憶はある。自身が起こした事態だと確信しながらも、信じたくなかった。


「これは、俺がやった…のか…。」


 桃太郎の悲しみの叫び声がこだまする。



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 次回予告

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 Yo!みんな、読んでくれてありがとな。翠嵐すいらんだぜ。


 この物語はヘビーなサスペンス風になってるから、作者が毎回最後にユルいコーナー付けることにしたんだってよ。

 続きを読んでくれないかと思って、作者はビビってるワケよ。


 ちなみに、この作品はChatGPTというAIからアイデアを貰って、基礎のプロットを組んでみたら、面白くなりそうだからと作り始めたんだと。


 プロットと最終回は、ほとんど完成してるらしい。そんな長い話じゃないってさ。


 初回から主人公ズタボロの鬱展開だけどな。俺が強すぎるから仕方ねえけど。

 ハードラックとダンスちまったな。


 主人公を俺に交代して、俺のスーパーアーマーがフォームチェンジしていくほうがウケ良くね?


 え?マジ?しばらく出ねえの、俺?

 てことは、俺ラスボスかよ。


 じかーいじかい。

 蒼いギャル風のツンデレ女子が登場だ。ヒロインポジいないと話ならねえしな。

 女子をガンガン増やしたほうが、読んで貰えると思うぜ、作者さんよ。

 みんな、次回も読んでくれよな。Check it out!


【設定の附記】

昔話の『桃太郎』は、温羅一族と吉備津彦命の戦いを元にしているという説が有力ですが、本作では、鎌倉時代に似たようなことが起こっていたという設定です。


テンポと解りやすさを重視して、時代に合わない用語も使用しています。台詞は現代寄りですが、漢語以外の外来語の使用は避けています。鬼の数え方・助数詞は『人』です。


【次回予告について】

各話の最下部にある予告は、本筋とは無関係の付録です。

他作品の名言等を問題ないと思われる範囲で多用しています。関係者から依頼があれば修正削除いたします。


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