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我が人生に邪魔者は必要なし。表舞台から退いていただきます。 おまけ編

作者: 久喜 恵

おまけ編です。


ズレたアリテシアをお楽しみください。サラッと頭からっぽでお読み下さると嬉しいです。


ああ主人公ってこんな人だよねと共感持って下されば尚嬉しいです。


少しでもお楽しみいただけましたら非常に嬉しです。

デリオス達が連れ出され、学園長の仕切り直しで祝賀会が始まった。


私は王子のジョージオと学園長に謝辞を述べそのまま暇乞いすべく浮かれに浮かれていた己が心に区切りを付けた。


被害者の私が謝罪するのか(苦笑)。 まったく。子供の尻拭いをさせられるとは。私もご苦労なことだ。だが加害者が(元)婚約者だ。遺憾ながらも関係者として謝罪するのが妥当か。いやはやこれは慰謝料に上乗せだな(笑)


祝賀に水を差す形になったのはデリオスの仕業だ。卒業が保留となったのは自業自得だろう。相手の女もか。良かったな。デリオス(笑)また女と一緒に勉強できるぞ(笑)。今度はちゃんとお勉強するのだな(笑)

親が許してくれればだが。

自ら出世コースを下りたのだ。よって、非のない私のお胸は痛まない。


さて次なる王太子候補となられるジョージオ王子殿下(将来の上司)に我が心証を良く見せねば。

ここで好印象を与える謝辞を表せば私の評価も上がるだろう。(にやり)

せいぜいアピールをさせてもらおうか。(笑)


私は襟を正してジョージオの正面を向く。さあ、ここが見せ所だ(笑)


「ジョージオ王子殿下におかれましては好奇の眼差しに晒されたわたくしをお助け下さいまして誠にありがとう存じます。今日の慶賀すべき良き日に私事で醜態を演じるとは王太子妃候補(王子の婚約者)としてあるまじき行いです。己が未熟に深く恥じ入ります。誠に申し訳ございません」


ふん。被害者の私がこうも態度で表したのだ。忖度して頂きたい。(笑)


貴族社会に属する身では非の有無は関係ない。絶対的上位者に対する謝罪は様式美だ。ああ理不尽極まりない。…が私は大人だ。呑み込もう。

さて大人な私が謝罪しようではないか。(笑)

ああ、ご機嫌伺いは臣下の務め。これも業務の一環だ。


私は淑女の姿勢で頭を下げた。指先…爪の先まで意識して。我ながら立派なものである(笑)ああ、惚れ惚れするではないか。(笑)自画自賛だ。(笑)



謝辞を受けたジョージオは、彼女の美しい所作に目と心を奪われていた。


「そう謝られては私が居た堪れないよ。非は祝賀の場で私刑を望んだ兄上にある。騒げば許されると思ったのか。兄上は浅慮で堪え性のない方だとは思っていたがまさかここまでの愚者であったとは。兄上の動向に注視すべきであったのに、私の認識が甘かったと慚愧に堪えない。‥‥アリテシア嬢。この場ではこれ以上話せぬ。すまぬが日を改めても良いだろうか」


「はい。後日父と登城いたします。(王家の誠意(高額賠償金)を見せてもらおうか!笑)今日はこれにて御前を辞することをお許しくださいませ」


ふー。やっと帰宅できる。ああ余計な労働ではあったが勝てば官軍だ! 

ぬははは! 帰ったら祝杯(お茶で)だ! 

勝利の美酒(お茶だけど)を味わおうではないか!(笑)




ジョージオのどことなく浮ついた感じが気になるのだが競争相手のアレ(デリオス)が脱落したのだ。内心小躍りでもしたいほど嬉しいのだろう。

無能は再教育(しつけ)でも受けていろ!!



ジョージオ(学園長も)に退出の挨拶を済ませたと、意気揚々に帰路へと足を向けるアリテシアの胸中は輝ける領地引き籠り(バラ色の人生)に思いを馳せ浮かれていた。


さぁ用は済んだ。帰るぞ。凱旋だ!(笑)



「あ、アリテシア嬢‥‥呼び止めてすまない。少し話がしたいのだが構わないだろうか」まさかの引き留めである。


むぅ。 ジョージオ。まだ何か?

…‥‥‥‥…‥‥。

はっ?! も、もしや、クレームか?! クレームなのか! 

デリオスを御せなかった私へのクレームか!! 

諫めず野放しにしていたのは故意だがジョージオはその理由を知らん。

もしや私は己の力量も測れず根回しや打開策を立てることもせずただデリオスの暴挙に甘んじた愚かな女と評価されたのか?! 

私は‥…私の力量を疑われたのか?!

くっーーーーーーーーーーーーーぅぅ!

(将来の上司になるだろう)ジョージオにまさか不出来な部下と思わせたのか、私は?! こ、これは痛恨のミスでしかない!(悔し涙)


先程の挨拶は上々だと思えたのだが。まて、あれは周囲に貴族子息・子女がいたではないか。迂闊に口を開ける状況ではない。ジョージオも日を改めるといったではないか。だとするとこれは? ジョージオは常識ある男だ。ならば私に苦言を呈するつもりなのか? それとも愚か者の烙印を押す気か。(混乱)


‥‥なんたる失態…‥。意気消沈する。


当のジョージオは打ちひしがれた(ように見える)アリテシアを衆人環視の中、婚約者に非道な行為をされショックを受けたと誤解していた。


そう誤解である。



(‥‥何と可哀想に。兄上は阿呆(あほう)だ。幼き頃より側にいた相手にここまで非道なことが出来るものなのか。兄上は王族や貴族の婚姻の意味を全く理解しておられなかったとは。馬鹿な奴ではあるが最低限の常識はあるかと思うておったのだが。ふっ。だが自滅とは兄上らしい。お陰で私は手を汚さずに王太子の椅子に近付けた。それについては兄上に感謝しかない。多分、父上も動きを把握されていらっしゃったであろうな。それにしても仇敵の兄上。歯応えもない。こんなヤツに私は劣情を抱いていたのか。だがそれも今日までだ! 兄上は失脚した。アリテシア嬢との婚約も白紙だ。やっと機会が巡って来たか。一度は諦めたこの想い。邪魔者(兄上)はもういない。今度こそ私の想いを成就させるのだ)


ジョージオはこのか弱き女性(ジョージオにはそう映っている)を慰めたい。自分を頼って欲しいと願っていた。なぜなら彼女は初恋の女性だ。彼は兄の婚約者に横恋慕していたのだ。


(‥‥私はアリテシアを守りたかった。純粋に守りたい気持ち…下心は‥‥ちょっとはある。だが、やましくはないぞ! 私を頼りがいのある男性と見てもらえれればそれでいいのだ。い、いやまあ好意を持って貰えたらそれはそれで良いがな。会場での兄上の暴挙。兄上が堂々と浮気を認められたのだ。笑いを堪えるのが大変ではあったが。あれで私にも彼女を口説く機会を得れたわけだ。ああ兄上が愚か者で良かった! 彼女には悪いが私は思いがけない幸運がきたと喜んでしまった。会場で彼女を庇い男気を見せたのも気を引きたい一心からである。正義感からではない。好きな子の前でカッコつけたかったのだ)


彼もまた恋に盲目なタイプであった。


彼はアリテシアを淑女の見本の如き女性だと誤解している。

孤高な存在と一目置かれてはいるが、実は清らかで優しい性根の持ち主だとも勘違いをしている。

なぜそんな勘違いを起こしたのかは謎だ。謎のまま今に至る。


そんなジョージオはドキドキしながら今が好機だと捉え行動を起こしたのだ。

‥‥たとえどさくさ紛れであろうとも。彼にとっては蛮勇だ。


二人は会場を抜け話の出来る場所へと歩み始めた。

今の二人は騒動の後とは思えぬほど冷静にそして優雅に歩いている。

‥…ように見える。見えるだけで二人の胸中はそれぞれの感情に揺れていた。


アリテシアは上司(予定)から能力不足の烙印を押されることを危惧して。

ジョージオは長年胸に抱いていた淡い恋心を打ち明ける決意に興奮して。




「アリテシア嬢。すまぬ。このように時期を選ばぬ私を許して欲しい。だが時間が無いと、つい気が急いてしまった」


ジョージオは意を決した顔で続けた。


「‥‥アリテシア嬢。今日の騒動の後で聞かせる話ではないだろう。これから話すことは貴方にとっては耳障りかも知れぬ」


くぅっーーーー(涙目)やはり烙印か! 

お、おのれデリオス!(怒) 私を巻き込んだか!(怒)

ま、まさか玉砕覚悟での騒動だったのか?!(驚)

愚か者と侮ったのが我が敗因か!(嘆き)


「‥‥私の気持ちが抑えきれなくなった。すまぬ困らせる気は無いのだ。ないのだが‥‥」


うっ。そこまでか! 苦言を呈するのにそこまで躊躇するとは! 

それほど酷いのか?! 私は! なにがいけなかった?!(哀)


「‥‥私は初めて会った時から貴女に想いを寄せていた。悔しいがあの兄上との婚約が決まった日に私のこの想いは一生誰にも打明けず胸に秘めると決めた。そして貴女の幸せを願い義弟として見守るつもりだった‥‥」


…‥ん? 


「だが兄上の酷い仕打ちに貴女が傷ついたと思うと我慢が効かなくなったのだ‥‥」


‥‥んん?


「‥‥どうか私の想いを知って欲しい」


‥‥はて? ジョージオは一体何を言っているのだ?


「私は貴女が王太子妃となるべく研鑽を積む姿に感銘を受けた。与えられた名誉に自惚れ奢ることなく己を鼓舞する姿に。そして兄上からの冷遇にも挫けず課せられた責務に真摯に応える。貴女の強さにも目を惹かれた。出来ることなら私の隣に立って貰いたいと何度願ったか」



ジョージオの熱い眼差しがアリテシアを捉える。



‥‥こ、これは。なんという高評価か!(嬉)

おお賛辞か?! これは賛辞だな! 素晴らしきかな!(喜)

なんだ、苦言ではなかったのか。ふー。やれやれ。心臓に悪いぞ。(喜)

だが王太子妃教育(仕事ぶり)を評価してもらえるのは何とも嬉しいものだ。(歓)


ふふ。ジョージオの人を見る目は素晴らしい。これはこれはよい上司(予定)に巡り合えたものだ。僥倖だ。(笑)


是非とも今後も良好な関係を維持したいものだ。(笑)




アリテシアは感心の目でジョージオを見つめていた。


ジョージオは彼女が自分に向ける眼差しが、好意(Love)を持つ者の視線だと誤解した。



(‥‥惚れた女性の気を引きたいがために功を焦り失敗したかと思ったがどうやら誤想であったか。これはもう少し詰めても良いだろう)


「アリテシア嬢。兄上との婚約解消後に公爵家に赴いても良いだろうか。貴女の父君に許しを得たいのだが‥‥。どうだろう」


「え? 父に許しを、でしょうか?」


なぜだ? 唐突に。しかも父上だと?




表情が曇った彼女を見てジョージオは焦る。


「あ、ああ。全ては兄上の件が終わってからだが、その前に私の気持ちを聞いてもらいたい。誤解されたくはないのだ‥‥頼む」


ますます以って理解できん。誤解とは? どうでも良いが早く本題を。


「これからの私は王太子として立つだろう。そして私は伴侶と共に治世に尽力することになる。だが幸か不幸か私の伴侶となる女性は未だ決まっていない。まあ、私には幸でしかなかったな」


ふむふむ。伴侶探しか。ご苦労だな。で、それが?


「私の横に並び立つ者は…‥貴女になるだろう。既に王太子妃としての教育も終え貴族達からの覚えの良い貴女が適任であるのは自明の理だ。おそらく陛下も同じ考えであろうな‥‥」



な、なんと! 再就職先(嫁ぎ先)の斡旋か! 


今度はジョージオからのヘッドハンティング?


それにこれ程の高評価! 私の能力を買ってくれたわけだな。(嬉々)


私は私を正しく評価する上司は好きだ。ああ、見る目のある上司は得難い。


無能な屑は御免被るが有能な者なら話は別だ。


これは一考の価値があるか?



「私の横に立つのは貴女しかいない‥‥いや貴女が良いのだ。私の伴侶は貴女しかいない」


‥‥む。


「どうか私の手を取ってはくれないだろうか。私は絶対に貴女を傷つけない。だから私に心を委ねてくれないだろうか。私の心は既に貴女にある。貴女の幸せを常に願っていた。その私が貴女を悲しめたりしない。不幸など以ての外だ。 どうか私を信じて欲しい」


‥‥むむ。


「アリテシア嬢。貴女は私の特別な人だ。他の者とは違う。他の者では貴女の代わりになれぬ」


…‥むむむ。なんとそれは


「わたくしを特別? 他の者では代われない? 特別に扱うと?」


「ああそうだ。‥‥叶うなら私も貴女の特別になりたい」



‥‥そ、それは‥‥特別待遇ではないのか?! (嬉)


ほうほう。待遇が良いのなら願ったり叶ったりだ!


最高権力者(陛下)上司(王子)からの高評価と特別待遇!


ほほう。


ここまで評価を受けるのは何と気持ちの良いことか!(喜)


上司から必要とされる‥‥何とも素敵な響きではないか!(嬉)  


これはアレ(デリオス)の側で辛酸を舐めながらも耐えた甲斐がある。


ああ、報われた!(喜)


正しき評価を得ることがこれ程迄に己が心を満たすとは!


得も言えぬ幸福感!(喜)



「アリテシア嬢。私の手を取ってはくれぬだろうか。これからは私と共に歩んで欲しい。我らの時が尽きるまで。私は‥…貴女を愛している」




‥‥若いな。そして眩い。


私は真剣な眼差しで己が恋情を語るジョージオを見て

忘れていた胸の奥底に押し込めていた克ての薄暗い感情を思い起こされた。



私は前の世でも他人から恋情を向けられたことも向けたこともない。

私は己を良く知っている。人に好かれた性格ではない。

愛情が欠落していたと思える人柄だ。それについては諦めている。

だがまさか。

このように自分の想いを真っ直ぐに向けられるとは‥‥正直こそばゆい。

他人に興味を持たない私では出来ないことだ‥‥されたこともなかったな。


ジョージオ。人を愛せる貴方の心が眩い。


私は愛など知らぬ。それでも私に愛を囁くか?


私に見返りなど期待するな。私は何かが欠けている。貴方の想いに応えられないだろう。


それでもまだ私に手を取れというのか?


だが、私も高位貴族の令嬢として生まれた。貴族としての義務がある。


王族に求められれば臣下は拒めない。


どうせ拒めないのならきっちり受けようではないか。これも仕事だ。



‥‥ジョージオが羨ましい? 他人に愛を語る彼が羨ましいのか? 

私にはついぞ出来なかったことだ。


だが私は人から己の才を、能力を、必要とされたい、認められ求められたい。切望していた。ずっとだ。これは私の細やかな欲求だ。


今、私の望みが叶おうとしている…のか?

真に欲したのは私の存在を受け止めてもらうことだ。

愛を乞うたわけではなかったのだが‥…(苦笑)


そうだな。望んだモノとは少し違うが。

ジョージオは好ましい人柄だ。上司としても好ましい。


ならば考えるまでもないか。どのみち逆らえないのだ。



さあ。私の手を取れジョージオ。損はさせない。




―――完

お読み下さりありがとうございます。


本編が異世界恋愛のカテゴリーなのに、恋愛要素が物足りないとご感想頂きましたので、おまけ編を投稿いたしました。読者の皆様には期待に添えない部分があったかもしれません。自分の力不足で申し訳なく思います。

今後も物語を書く予定にしています。少しでも楽しんでいただけるよう努力いたしますので引き続きお読み下されば幸いです。


面白かった。興味がある。など思ってくだされば、ブクマや↓の☆☆☆☆☆で評価頂けると励みになります。

ありがとうございました。








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