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騎士団長の幸福

本編完結です。

明日、番外編を掲載いたします。

お読みいただき、ありがとうございます。


モーリス王は騎士団に捕らえられ、王子が軟禁されていた北の塔に身柄を移し幽閉された。

王の直系の子である王子二人は、父親の悪事を聞かされ嘆き呆れ、そして我が身に王の血が流れている事を悲しんだ。

その為、王位継承権を放棄し臣下に下り、新王を盛り立てる役割を切望したので大臣職に就くこととなった。

そして、王が急病で危篤状態である事を国民に発表し、暫くはリザ様が臨時の王としての権限を持ち、国政を担う事になった。

貴族たちには根回し済みで、モーリス王の息のかかった者たちも逆らわなければ利権に関与されないと知り、今の所は大人しくしている。


「いざという時、味方が一人もいないとはな」

「それは、致し方ないかと。好き勝手にやって来た結果ですから」

「――自業自得、か」


俺はアルと一緒に単騎で、リリアンテール国からカナリザル国へと続く街道を駆けている。

フィアを、リリアンテール国の王族であるリザ様の家族の元へと送り届けた帰りだ。

フィアには、リザ様の子供たちをカナリザル国へ連れて帰るための準備を任せたのだ。


「名残惜しそうでしたね、クリス様。私め、ちょっと恥ずかしかったですよ」

「なんで、アルが恥ずかしがるんだ」

「あの場にいたみんなも同意だと思いますがね・・・自覚ナシですか」

「手離せなかったのだから、仕方がないだろう?」


フィアを抱きしめて、離してはまた抱きしめて、なかなか出発できなかったことを言っているのだ。

ちっ、と舌打ちをすると、アルが苦笑いを返した。


「あちらは上手くいっていますかね・・・」

「ああ、リシュアン殿下とリザ様か。大丈夫だろう。いくらリザ様が拒否しても、殿下が何としても頷かせるだろうし。監禁部屋も用意してあるそうだぞ?」

「げ、あれは冗談だったのでは?」


意味ありげに、にやりと笑うと、アルがぶるりと身震いして「怖い怖い」といって笑った。

そんな軽口を叩いている内に王都に帰りつき、騎士団の執務室へ向かう。


「「「クリス団長!」」」


騎士団のみんなが、敬礼で迎え入れてくれた。

俺が高く上げた右手のひらを、サラームが同じく右手でぱしん、と叩く。


「モーリス王の様子はどうだ?」

「大人しいもんですよ。しっかり食べ、しっかり寝て。以前よりも、色艶が良いんじゃないですかね」

「そうか。引き続き、警戒を怠らないようにな」

「はっ」


俺は緊急の書類の処理をして、リザ様の所へ向かった。

ノックをしてドアを開けると、ソファーで抱き合っているリシュアン殿下とリザ様が。


「えーと、出直しましょうか?」

「――じゃあ、いいね?リザはいい子だ」


そんな声が聞こえ、ちらりと視線をやると真っ赤な顔をしたリザ様がふるふると震えて殿下の胸にしがみついていた。


「や、クリス。子供たちは元気そうだった?」


リザ様の頬にちゅ、とキスをした後、リシュアン殿下がにこやかにこちらへやって来た。


「ええ、とても元気でしたよ。フィアとも仲良くやれそうです」

「そう、良かった。じゃあ、予定通りに連れて帰ってこよう。やっと、家族で暮らせる」


リシュアン殿下と明日の予定をすり合わせ、計画を埋めていく。

その間、リザ様は両手で顔を覆って身悶えていたのは・・・見なかった事にした方が、身の為か。


::::::::::


モーリス王の『危篤』を国民に伝えてから一週間後。

今度は、モーリス王の『訃報』が大々的に伝えられる。

国葬にはかなりの金額が必要となるためモーリス王がそれを許さず、身内だけの質素な式になったという事も発表された。

王の訃報で一時的に経済が揺れたが、リザ様の信用と手腕もありすぐに回復した。


それから更に一ヶ月後。

今度は貴族も国民も震撼する重大発表が、リザ様の手で成された。


『王弟であるリシュアン殿下と、二人の王子が無事に発見されカナリザル国に帰国した』というもの。


この発表を持って、リシュアン殿下が王位についた。それに伴い、側室制度の撤廃、騎士団の解散と再結成を成した。

そして、長らくこの国を支えてきたエリザベーㇳを、再度、王妃に迎え入れる事とした。

皆、驚きはしたものの、この二人が元々仲睦まじい夫婦だったことや、王子たちの実母である事、王政にも精通している事等が考慮され、反対する者はいなかった。




――――数年後


王宮のバラ園に、子供たちの明るい笑い声が響いていた。


「ねえ!もっとやって!アル!!」

「えぇー。私め、もう疲れましたー」

「次は僕だぞ!」

「ジュリアン兄様、ずるい」


私は、お茶の支度をしながらその様子を微笑ましく眺めた。


「ジュリアン殿下、ジョルジュ殿下、おやつにしませんか?」

「「します!」」


おやつを食べていると、リシュアン陛下とエリザベート妃殿下が揃ってやって来た。

新王は、『王』と呼ばれることを嫌い、『陛下』と呼ばれる事になった。


「ごめんなさいね、ソフィア。妊婦に子守りを任せてしまって」

「いえ、もう安定期ですから少しは動かなくてはいけませんもの。どうもクリス様が過保護で困ります」


娘のアンナを肩車してこちらに戻ってくる夫の姿に、きゅんと胸が鳴り笑顔を向ける。

クリス様がアンナを椅子に座らせると、アンナはアルにおやつを強請り食べさせて貰っている。


「すっかりアルに懐いたな。」

「そうですね。そのうち、アルと結婚するって言うかも知れませんよ?」

「は?」


くすくす笑っていると「本気の殺気が!」とアルが震えている。

そんなアルを横目に、クリス様が私の前に跪いてふくらんできたお腹にそっと頬をつける。


「問題ないか?」


上目づかいで私を見て確認するのが、ここの所の日課になっている。


「問題ありません」

「そうか」


立ち上がったクリス様は、私の頬にちゅ、とキスをした。


「フィア、愛してる」

「クリス様。私も、愛しています」


暖かな日差しを受けて、咲き誇るバラがきらきらと輝いて見えた。


end

お読みいただきありがとうございました。

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