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愛情表現が苦手な騎士団長は離縁したくないらしい  作者: さとうあゆみ
第1章 騎士団長と公爵令嬢の出会い
29/48

side アル

次回からは二部となります。


私め、アルバート・ポプソン。ポプソン男爵家の三男でございます。

私め・・・いや、僕の母は、ラング公爵家の次男であるクリス様の乳母をしていました。

僕はクリス様よりひとつ年上。

うちは男爵と言う爵位がある貴族と言うには憚れる、それはもう貧乏な生活を送っていました。

なので、母も働きに出ていたのです。


クリス様と僕は、まるで兄弟のように育てられました。ラング家の当主にも奥様にも、子供同然で可愛がられました。

なので、母が亡くなった時にクリス様専属の秘書として雇い入れたい、と言われた時には、二つ返事でした。

願ってもない事に、騎士学校へも行かせて頂き一端の騎士になることも出来ました。


さて、僕のご主人様のクリス(あえて敬称略します)が、初恋をこじらせていた相手、ソフィア公爵令嬢とご結婚の運びとなりました。

不本意ながら王命で、クリスは顔には出しませんが、実はものすごく喜んでいたのです。

同じ三大公爵家の令息と令嬢が結ばれてしまうと、王家との力のバランスが崩れるので、本来ならばこの結婚は歓迎されないのです。

まあでも、ソフィア様を気に入っていた奥様が、息子との婚姻を目論んでいた事は、ラング家では周知の事実ですが。


僕が見るに、ソフィア様もクリスの事を好ましいと思っていると思います。

だけど、クリスの愛情はとても分かり辛い。

顔にも出ないし、言葉にも出しません。最早、何を言っていいのかさえ、分からないみたいです。

あんなにも魔獣や盗賊の気持ちには敏感なのに、です。

要所要所、僕は宥めたりすかしたりしていますが、それでもクリスは空回り気味です。

あまりに拗らせていた初恋が叶う事になり、でも、女性の気持ちなど何も知らないクリスは

どんどんソフィア様とすれ違っていきました。

それはもう、面白いくらいに。


この国では、結婚式の一ヶ月前に婚姻届けを出して同居し、そして、式を挙げると言う物珍しい慣例があります。

ソフィア様がいらした日、初夜の事でクリスは頭がいっぱいで、見ていて面白かったです。

まあ、出来ませんでしたけど。流石、『ヘタレ』です。このヘタレ、この国一番の剣士なんですけれどね。


クリスの兄が新たな公爵として、ガーデンパーティーを開いた時もやらかしてくれやがりました(おっと失礼)

幼馴染のナタリーの嫉妬にまみれた演技に気が付かないどころか、ソフィア様を蔑ろにしたのです。

あれには僕も、怒りを通り越して呆れ果てました。本人は、ソフィア様を守ったつもりなのですから。

・・・つもり、じゃダメでしょう?つもり、ではやった事にはなりません。


星花祭りでも、何をやっているのだか、クリスはナタリーに引っ付かれていました。

とうとう、不安も不満も積もらせたソフィア様は僕に「離婚したい」と吐露しました。

このままではソフィア様が可哀想で、僕はクリスが後ろにいる事を知りながらも、ソフィア様に

ブルースターの花束を渡そうとしました。

これで少しは自覚するだろうと。本当は、こんな事に巻き込まれたくは無いのですけれど・・・

これも、腐れ縁。クリスのもう一人の兄として、一肌脱ごうと思いました。

しっかりと、ケツを叩かせて頂きましたよ。


まあ、いろいろと紆余屈折がありましたが、今日やっと二人は結ばれたようです。

いや、覗いていた訳ではないですよ。

執務室で仕事をしていたら、そんな空気が流れてきましたので。

僕はそっと下の階に降りて、使用人たちにも朝まで三階には近寄らないよう指示しておきました。

これで、丸く収まりました・・・?


何か忘れていると思ったら、そう、クリスに恋慕していたナタリーですが・・・

ナタリーの父上にワザと聞かせた僕の何気ない一言で、彼女は嫁ぐことになりました。

家同士の政略結婚ですが、そこから始まる愛もあるでしょう。

なので、幼馴染の一人として頑張って幸せになって欲しいと思います。

間違っても、帰ってこない事を切に願います。


僕には、主人であるクリスとソフィア様の幸せが一番ですから。

またクリスがヘタレた事になったら、ケツを叩いて差し上げましょう。


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