蕾
ふくらみ始めた蕾
その花びらはまだ固く閉じていて
けれど艶やかなその彩は
春の訪れとともに咲き誇る
君の輝かしい未来を思わせる
僕は知っている
君がどれだけ馨しいのかを
君がどれだけ人の心を震わせるのかを
今年もここで
きっと君は咲くのだろう
いつものように
当たり前のように
風に乗って届く君の香り
僕はそうして君を知る
今年も君が咲いた事を
今年も君が人の心を捉える事を
けれどいまはまだ君は蕾で
愛おしい花の姿も胸騒ぐ香りも
ただ頑なに閉じ込めて君は眠る
今日は薄日に初蝶の夢を見て
明日は陽だまりに春雲雀を待つ
今だけ
まだ誰も君が咲く事を知らない今だけ
君の香りは僕だけのもの
君が咲くまで、僕だけのもの
暖かい陽射し降り注ぐ
花香る春が来るまで、僕だけのもの
君の名前は