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死獣神~死の書~  作者: 天馬光
5/110

越えてはいけない領域(5)

 闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。

 これは、その中でも最強と謳われた1人の殺し屋と仲間達の終わりの物語。

 数十分後。玄武は獅子と協力して守の遺体を、持参していたスーツケースに入れ、飛び散った血液を一滴残らず拭き取った。


「……こんなところか。もう大丈夫だよ浦木さん。これで君の脅威は去った」


「あ、ありがとうございます。先輩……」

 いつもの優しく賢い先輩の裏の顔を間近で知った真由は、その恐ろしさに震えながらも頭を下げた。


「礼には及ばないよ」


「けど、本当なんですか? 先輩と志村先生が殺……」

 そう言いかける真由の口を、玄武が手を前に突き出して制止する。


「それ以上詮索しない方が身のためだよ。ま、その通りだけど」


「先輩……」


「その上で言わせてもらうけど、今回の報酬は受け取れない」


 報酬を拒否された理由がわからない真由がその訳を尋ねると、玄武は呆れた表情で、8万円ごときで殺しをするほど殺し屋は安くないと言ってから、


「……その代わり、僕らの素性や今回のことはきれいさっぱり忘れてほしい。僕に好意を抱いているのなら、それも一緒にね」

 と、冷たい口調で頼み、突き放した。どうやら図星だったらしく、真由は思わずドキッとする。


「確証は無かったけど、薄々そんな気はしてたんだ。僕に対する期待値や態度からね。けど、ごめん。僕は君の想いに応えられそうにない」


「どうしてですか!? 私は、先輩のこと……」


「君と僕とでは住む世界が違う。殺し屋である僕らが住まうのは、血なまぐさい闇色の世界。君のような者が関わるべきじゃない」


「そんなの知りません! 先輩がどんな人だろうと、私はあなたのことを好きになりました。それすらも認められないんですか!?」

 必死にそう訴える真由の眼前で、鉄パイプがピタッと寸止めされる。それを握っていたのは、同じく彼を愛している獅子だった。


「……えぇ。認められないわ。あなたの青臭い愛情は、目障りでしかないから」


「先生? それはどうい……?」

 真由は彼女のことを一瞬理解できなかったが、すぐに2人が禁断の恋で結ばれていることに気付いた。


「わかったろう? 君はこれ以上、僕らの領域に入ってきちゃいけない」


「それでも聞けないというのなら、容赦はしない。邪魔者であるあなたを排除するだけよ」

 そう言われ、殺意と隔たりを感じた真由は、そこから言い返せなくなり、口を閉ざしたまま、彼らが遺体ごと去っていく背を見ることしかできなかった…………

 似たようなケースを龍も経験していますが、彼と玄武とでは大きく違います。

 それは、相手にホレられているかということと、その相手に自分の素性を明かしたかどうかという点です。

 どちらも彼らなりの優しさかもしれませんが、皆さんはどちらが正しいと思いますか?

 正直なところ、僕にはわかりません。

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