2人きりの時間(1)
闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。
これは、その中でも最強と謳われた1人の殺し屋と仲間達の終わりの物語。
みんなと別れた龍は、未来をエスコートしながら、彼女と小学校の校内を散策していた。
体育館の出し物や美術部の作品を見たり。
雲雀が手伝う店で焼きそばをサービスしてもらったり。
PTAがやっているフリーマーケットでお揃いのストラップを買ったり。
と、さながら本物のカップルのようにデートを満喫した。おそらく、2人きりでこんな時間を過ごしたのは、初めてだろう。
それが2人にとってよかったのだろう。龍も未来も初々しい表情をしており、未来に至ってはいつもの笑顔を取り戻しつつある。
しかし、楽しい時間というものは、あっという間に過ぎていく。気付けば午後3時半。あと1時間もしない内に、この素敵な合同文化祭が終わってしまう。
小学校の正門付近で行われている野点で抹茶を味わう2人も、それをしみじみと感じていた。
「人、少なくなってきたね」
「そう、だね」
帰路につく人波を見て、2人はそう呟く。
楽しかった祭りの終わり。それは初デートの終わりも意味しており、その名残惜しさから龍は、少しでいいから時が止まってくれるよう願っていた。
そんなことを願っていたから、罰が当たったのだろう。2人の時間に水を差す大バカ者が話しかけてきた。
「よっ。お2人さん。デートかい?」
「翔馬君!」
そう。自分達のクラスの劇を見ずに退席した白いスーツ姿の翔馬である。
「どうしてここに? もうすぐ出番なんじゃ……」
「その前に、お気に入りのここで一服しようと思ってな」
「そうなんだ」
未来がそう言うと、翔馬は龍の隣りに座り、慣れた感じで野点のスタッフに金券を渡した。
「そういえば翔馬君。プログラムに『True last live』って書いてたけど、あれってどういう意味?」
「どういう意味も何も、金輪際人前で歌わねぇから『True last live』。言葉通りだろ?」
「それはそうなんだけど、今日はいつもと様子が違ってたから……」
心配する龍からそう言われた翔馬は、フッと笑って彼の肩に手を置いた。
「気にすんな。死相が見えたんならともかく、そうでもない時まで俺の心配なんかしてどうすんだ。キモいっつーの。つーか、どうせなら愛しの女の心配でもしてやれ」
「え?」
龍がそう言って未来の方を向くと、どうやら図星らしく俯いている。翔馬の言うことは確からしい。
「寄り添って甘い時間に浸るのもいいが、好きな子が悩みを抱えてんなら、一緒に悩み、解決してやんのも男の義務ってもんだぜ」
「翔馬君……」
「わかったらさっさと行け。俺の勘が正しけりゃ、ここじゃ話しづらい内容のはずだろうから」
「……わかった。行こっか。未来さん」
龍がそう言い、未来が小さく頷くと、2人は抹茶を飲み干し、移動した。
体よく退席させたことで、知り合いの目を気にせず野点を満喫しようとする翔馬の不純な考えがあったとは知らずに…………
水を差した翔馬がやろうとしている最後のライブ。オリジナルの曲ですが、割愛させてもらいます。




