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死獣神~死の書~  作者: 天馬光
109/110

さよなら死獣神(5)

 闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。

 これは、その中でも最強と謳われた1人の殺し屋と仲間達の終わりの物語。

 その頃には、柚の悲しい決意はとっくに折れていた。

 もう彼女に辛い言葉を浴びせる必要はない。そう判断したペガサスは、折れた菊一文字零式・真打の元に向かいながら、彼女を安心させる言葉をかける。


 以前の彼女なら、殺人欲求や警察の目などもあって、安易に殺人をやめることはできなかっただろう。

 しかし、今は違う。殺人欲求も薄れているし、世間的に死ぬことで、特捜5課のブラックリストからも抹消される。

 今なら、黒蛇達が願っていた普通の少女としての幸せを手にすることができるのだ。


「……もっとも、君と同じ分からず屋のあの男の目は誤魔化せないだろうけど、そこは僕に任せて。あの手この手を使って特捜5課の追撃を阻止するから。だから君は安心して、龍君と一緒になればいい。そう……」

 そう言うと、ペガサスは菊一文字零式・真打を手に取り、光の力で刀身をくっつけ元通りにした。父の形見を大切にしている黒猫を思っての粋なサービスである。

 ペガサスはそれを納刀すると、黒猫の前まで移動し、 


「ちょうど、この刀と鞘のようにね。そして、鞘に収まった刀は、もう血を吸わなくていい。平和な世でその身を休ませていいんだ」

 と言って、彼女に刀を返した。


「そうだよ。柚。もう君は、人を殺さなくていい。普通に幸せに生きていいんだ。大丈夫。君を傷付けるものは、この世のどこにもいないから。仮にこの先現れても、僕らが必ず君を守る! 約束する!」

 青龍からの熱い言葉と修復不可能と思っていた菊一文字零式・真打が手元に戻ってきた奇跡に、黒猫は心から嬉しく思った。

 形見の刀に他人が触れていたという事実が気にならないほどに。


 黒猫は頬を濡らしていた涙を拭うと、小悪魔のような顔をして、青龍らの方を振り向き、確認をとった。


「いいの? 私、また裏切っちゃうかもしれないよ?」


「その時は、みんなで柚さんを止めます」


「また、みんなに嘘ついたり、迷惑かけたりするかもしれないよ?」


「何を今更。そんなのもう、慣れっこだよ」


「せやせや。逆にあんたがいい子ちゃんになった方が、かえって気持ち悪いわ」


「で、でも……!」

 黒猫はそう言うと、自らの血を手に付け、


「でも私、もう人じゃないんだよ? 血だって墨汁みたいに真っ黒だし、ある程度何されても死なない化け物になっちゃったんだよ? それでも……いいの?」

 と、尋ねた。その不安に満ちた表情は、先程までの意地悪そうな悪女のものではなく、1人の少女としてのものだった。

 それを見て、不安から虚勢を張っていたと知った青龍と未来は、優しく微笑み、


「うん。だって、柚さんは柚さんでしょ? 血が黒くなっても、悪魔になっても、あなたがあなたであることに変わりはない」


「だね。僕らが君を想う気持ちに変わりがないように、ね。それに、僕だってもう人じゃないから、お互い様だよ。だから柚……」

 と言って、手を差し伸べた。


「おいで。僕らと一緒に生きよう」

 愛しの彼と親友達がくれた暖かい言葉と心。もう1度それに触れた柚は、また涙を流したが、その涙はもう、悲哀や別離から流しているものではない。一緒にいてもいいんだという嬉しさからくるものだった。

 余程嬉しかったのだろう。黒猫は満面の笑みを浮かべて青龍と未来の方へ駆け出し、彼らに抱きついた。

 龍と未来の暖かく優しい言葉の前では、黒猫も形無しですね。

 さ、6人全員揃いましたし、そろそろ荷物をまとめて旅立つとしましょう。

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