応龍神撃(3)
闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。
これは、その中でも最強と謳われた1人の殺し屋と仲間達の終わりの物語。
勝負あった。極夜を叩き込んだ衝撃で、尋常じゃない砂埃が舞う中、着地した黒龍はそう思った。
「終わったか。この技を出させるとは……認めよう少年、いや、青山龍。君は間違いなく、俺の宿敵だった」
「まだですよ!」
その声と共に振られたドラコスラッシャーが、砂埃を切り裂き、黒龍の頬を掠める。
もしやと思い、目を凝らして見てみると、砂埃の向こうから青龍が現れた。負傷こそしているものの、未だ健在だ。その姿に仲間達は安堵し、黒龍は嬉しさと驚きが入り混じった表情を浮かべる。
「まだ、終わってません」
「ふっ、そうこないとな。それでこそ宿敵だ。ならば、こちらも全力で応え……」
黒龍はそう言いかけ、迎撃態勢を整えようとしたが、突如、全身の力が抜けるような感覚と疲労感に襲われ、膝をついた。
「くっ……こんな時に……」
「ど、どうなってんすか? あれ」
黒龍の異変に白虎や朱雀達は戸惑うが、その原因は至極単純だった。
何度も言うが、省略能力は行動を省略する能力である。その力は言うまでもなく脅威ではあるが、全くのノーリスクというわけでもない。
そのリスクとは、疲労までは無かったことにできないということ。誰だって、何かしらのアクションを起こせば疲れるし、やり過ぎれば必ずバテる。
そこは省略能力も同じ。能力の便利さに溺れて乱発すれば、その分の疲労が一気に体にのしかかる。そうなれば、満足に体を動かすこともできないのだ。
無論、黒龍とてそのリスクは熟知していた。しかし、どうやら極夜をしたことによる体力消費が、本人の予想以上に激しかったらしい。
「てことは?」
「やるなら今しかないってことだ」
「せやな。いけー! 龍ーっ!」
仲間の声援に頷くと、青龍はツインドラコスラッシャーを逆立たせて、一気に間合いを詰め、×を刻むように黒龍を払い飛ばす。
「柚! ヒドラスラッシャーを貸して!」
「え?」
「早く! 必要なんだっ!」
そう要求された黒猫から投げ渡されたヒドラスラッシャーを受け取ると、青龍はそれを足にはめ、龍の気を纏ったツインドラコスラッシャーとヒドラスラッシャーの乱れ斬りを目にも止まらぬ速度でくらわせた。
「ぐっ!」
黒龍はなんとか回復しようとするも、その隙を青龍が与えない。東洋の龍のようの形をしたホーミング性斬波と尾撃で打ち上げると、ヒドラスラッシャーを外して切っ先を天に向けて地に固定し、落下してきた黒龍を貫いた。
そして、残ったツインドラコスラッシャーにありったけの気を纏うと、
「これでぇ……トドメーッ!」
と言って、黒龍の胸を貫き、気を放出しながら上下に振り抜いた。
必殺技に新必殺技で返した青龍。
黒龍との戦いも、とうとう決着の時です。