15.森の妖精
お話のストックがなくなってしまいました。多少短いお話ですが、よろしくお願いします。
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周りには柔らかく降り注ぐ秋めいた陽射しに、木立を吹き抜けるそよ風が僕達の髪を揺らします。そして目の前には、様々な色の毛の塊が、右に左にと揺れ動いています。家の塊にはモフモフとした太く長めの尾があって、やや太く後ろ足より短めの前足に胸元の鬣の様な長い毛が愛くるしさの中に、凛々しさも醸し出していますね。
エリーゼさん、ヘルガさんを伴って、再び訪れたエルフの町で盛大な歓迎を受けた僕達は、友好の証としてエルフの森に住まう森の妖精『森猫』さんをいただける事になり、今はその生息地に来ているのです。
森猫さん達はとても元気で人懐っこく、木の上に上って高い場所から僕達を見下ろしている猫や、周りに寄ってきてはこちらを見上げて小首を傾げたりと愛くるしい姿を見せています。
エリーゼさんもヘルガさんも、既に座り込んで寄って来る森猫さん達をなでたり遊んであげたりして、いつも以上に優しい表情を浮かべています。
僕も森猫さん達と触れ合おうと、腰をかがめて座ってみるのですが……何故か、僕の周囲1mほどの何も無い空間が出来てしまっています。嫌われてるわけじゃないと思うんですよ? 1m位空けた所で小首を傾げていたりしますし、威嚇とかされてる訳でもないのですけど。
「ほらヘルガ、この毛並みの青い子はとても愛らしいですわよ」
「そちらも愛らしいですが、こちらのシルバーのタビー(体毛に表される縞模様)の子も凛々しくてとても素敵です」
エリーゼさんとヘルガさんはそれぞれお気に入りの森猫さんが見つかったようですね。腕や足にぶら下がっている森猫さんを見るのは、とてもうらやましいですよ。
……何故僕の周りには来ないんだぁ~。そういえば前世でも猫好きだったんですけど、不思議と猫に避けられていた気がしてきます。
僕は木々の間にできた、緑の絨毯の上に大の字になって寝転びました。相変わらず、僕を囲むように森猫さん達が取り囲みますが、その距離1m……
くそぅ、ここでも猫に好かれないのかと僕は半ば諦めて目を閉じました。目を閉じても優しい秋の陽射しが顔を照らすので、明暗は判りますが、不意に僕の顔の上に影が差します。
「ん? フギュッ!」
僕の顔を踏んで、身体を縦断した何かは、僕の薄い胸部装甲を通過して、お腹の上にたどり着いたようですが……、お、重い!!
目を開けて見てみると、他の子よりも明らかに大き目の、ブルーのタビーに白の毛並みを持つ森猫さんが鎮座しています。お腹の上で香箱座りって、和んでくれてるのかも知れませんが、重いですよ!
「おぉ、どうやら皆さん気に入った子を見つけられたようですな。おや、貴女はこの子ですか。これでやっか……ゴホンゴホン、なかなかお目が高いですな。その子は森猫の中でも力ある子でしてな。その所為か人に懐かずに居たのですが、気に入られて何よりですぞ」
ちょっと、族長さん。今『厄介払い』って言おうとしてましたよね? というか、僕のご褒美はこの子で決まりなんですか? 確かに他の子は寄付いてくれませんでしたが。
むぅ、と僕は唸ってお腹の上で香箱座りしている森猫さんを持ち上げます。前足の脇に両手を入れて目の前にぶら下げますが、ぶらーんとされるがままになっていますね。尻尾が左右に揺れています。しかし、重いな。
可愛い森猫を頂いたというより、腹筋や腕力強化用の運動器具を戴いた気がしますが、まあ仕方ありませんね。改めて座りなおして、毛並みや身体を確認します。力があるかどうかは判りませんが、確かに毛並みのモフモフ具合といい、健康状態も良いようですね。
「では、お三方宜しいですかな? 森猫を譲渡する手続きとして、この魔法陣に皆様の右手人差し指と、森猫の右前足を載せて下され。手続きはそれだけですのじゃ」
僕達は頷いて順番に魔法陣に自分の人差し指と、森猫さMMの右前足を載せます。別に顔料などの塗料を付けているいる訳でもないのに、くっきりと人差し指の指紋と肉球の痕が残りました。
「これで手続きは終了ですのじゃ。後は皆さんの好きな様に名前をつけてくだされ。皆さんと森猫に何かがあれば、先程の誓約書に記されますのでの。末永く連れ添ってくれると信じておりますぞ」
族長さんはそう言いながら僕達を見ますが、なぜか最後に僕が抱えている森猫さんをみてうんうん肯きます。そして僕達3人は、エルフ族の方に案内されて森を抜けました。
僕達に頭を下げて、森に戻るエルフさんを見送ると、エリーゼさんがヘルガさんに尋ねます。
「これで、マルク領から身の問題も、無事片付きそうですわ。お父様に完了の報告書をしたためなければなりませんが、ヘルガ後はこの地でのお仕事はありませんわね?」
エリーゼさんの問いに、ヘルガさんは肩をくすめて答えました。
「いくら問題を解決するためとはいえ、そう何日も北都を離れられては困ります。あとは、明日の朝出発いたしますよ?」
うんうん、お嬢様が召使付きとはいえ、長期間家を離れるのは感心しませんものね。では、僕もこの場でお別れということにしましょう。次の目的地は特にないですが、エリクシアの北部はこのお嬢様がいる限り、極端に悪いことにはならないでしょう。
「それでは、僕もここでお別れということで……」
「「駄目です!」」
僕が別れを言おうとすると、エリーゼさん、ヘルガさんの双方に止められます。
「なんでしょう。問題もなくなったので、僕も修行の旅を続けないといけないのですが……」
僕がそう言うと、エリーゼさんが花が咲くような笑顔で言いました。
「あら、私にあのような卑怯な手で勝負を中断させたくせに、簡単に逃げられると思っているのですか?」
「そうですよね。私としても非常に言いたいことがありますし、幸い君は修行の旅なのだろう? ならば、私がじっくり相手をさせていただこう。もちろん魔法抜きでね」
うわ、二人とも根に持ってるんですか?
「いや、あれはあの場を双方怪我もなく収めるための手段ということで、話が付いたんじゃありませんか? マルク領とエルフ領との問題を片づけるため、協力したじゃないですか」
「「それはそれ、これはこれです」わよ」
そういって二人は僕を逃がしてくれません。ただ、このまま移動してしまうとFC1をこの地に残すことになるので、そういうわけにはいきません。
『ならば、夜泊まる宿を同じにして、別行動を取ればよかろう?』
うんうん、そうですよね。それが……一番ですが・・・。あれ? 今の声は、エリーゼさんでも、ヘルガさんでも、もちろん僕の声でもありませんよね??
お二人とも僕を見ているような? いや、正確には僕が抱いているもの『森猫』さんをみています。
「ね、猫が口をききましたわ」
エリーゼさんはそう言って絶句していまっすし、ヘルガさんも多少なりとあっけにとられています。もちろん僕も……




