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駄女神に拉致られて異世界転生!!どうしてこうなった……  作者: 猫缶@睦月
6.楽園での休日
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15.Vs小悪魔

パトリシア視点での、お話になります。


*****


「さぁ、それでは飛び入り参加しますよ」


 ボールを使った遊びが終わり、次は模擬武器を使った遊びが始まる前に、私は小柄な少女の右手を掴み、飛び入り参加をしようと誘いました。

 突然の事だったので、ぽかんとした表情の少女、クロエさんの表情がついつい面白くて、私は満面の笑みを浮かべてしまいます。


「え、僕は魔法無しではからっきし弱いですから駄目ですよ!」


 クロエさんはそう言いますが、ケルツェンの城門で酔っ払った槍使いを、魔法も使わずにあっさりと倒した時の事は、今でも私の目に焼き付いています。……そのあとろくでもないものまで見る羽目になりましたが……


 エリクシアでは、槍の穂先はソケット法と呼ばれる穂の根本を、柄に被せる方式で繋がっています。木でできた柄の先に、槍の穂をキャップの様にはめ込む形ですね。柄自体は樫やオークなどの頑丈な木材が使用されていますから、普通は剣で切り落とすなんて、できはしないのです。

 それを成しえたクロエさんに、私は興味を持ちましたが、現在のギルマスに質問すると、彼女は他国の人間だというではありませんか。旅をしているようですので、一期一会、二度と会う事も無いと思っていたのに、新しい町に出来たギルドに赴任したら、再び彼女に合う事ができたのです。

 それに、用事がなければなかなか冒険者ギルドに顔を出してくれない、アレキサンドライトの面々には、ギルマスのカーラを含めて興味深々な者も多いですからね。なにより、美少女揃いという事もあって、なかなかの人気者なんですよ。


「みなさん、飛び入り参加二名お願いしますね。私もギルドの代表として、素の皆さんの実力を把握しておくように、ギルマスから言われてますので」


 そう言って説得しますが、なかなかうんと言ってくれません。しばらく考えていたクロエさんは、何かを思いついたように口にしました。


「……一応僕はこの企画の運営側ですので、参加はできません。ですが、パトリシアさんが勝った場合は、エキシビションとして優勝者には、銃との戦いを経験してもらうという事でどうです?

 今後は賊などが銃で武装している場合も増えますから、ギルドとしても、剣技や体術にたけている方も興味があるのではないでしょうか?」


 う~ん、提案は魅力的だけど、クロエさんの実力も知っておきたかったんですよね。ギルド内でのもめごとであれば、私やギルマスが干渉することはできるけど、わざわざそんなところで彼女たちに手出しするような冒険者はほとんどいません。

 彼女たちを尾行して、拉致するとまではいきませんが、手荒な真似をする冒険者崩れも居ないわけではありませんからね。


 とはいえ、以前のアレキサンドリア討伐戦以後、一部の兵士崩れの盗賊や海賊に銃が流れていて、街道を行く商人や旅人の護衛依頼でも、銃を使用されて怪我をしたという冒険者さんも増えているのは事実です。

 もちろん銃自体はギルドでも見たことはありますけど、普段はデスクワーカーな私がそれを向けられることはありませんからね、ここはチャンスと考えましょう。


*****


 飛び入りした模擬戦での最初のお相手は、槍を使う小柄な人魚さんです。昨日の試合を見ていましたが、小柄な体格なのに長大な槍を容易く扱っていました。

 長物である槍は懐に入られると、取り回しがしにくくなると言われていますが、槍は本来万能武器と言われています。突く・払う・薙ぐ・叩きつぶすなどの多彩な攻撃を、相手の間合いの外から一方的に加える事ができる武器なんですよ。

 事実レナータさんは、槍の持ち手を自在に変えて、突く・払うなどの多彩な攻撃をみせて、相手を寄せ付ける事がなかった強者でした。

 ですが、その分実力を過信しているところもあるし、相手をなぶる事で快楽を感じる方の様ですからね。ああいうタイプは、一本取られると逆上する方が多いですから、つけ入る隙はあるでしょう。


 模擬戦が開始されると、レナータさんの攻撃は予想通りものもでした。左右に、槍による突き攻撃を放ってきますが、こちらがギリギリで避けられる範囲の攻撃を繰り出してきます。

 こちらも、ギリギリで避けている様に偽装しながら、両手に持つソードブレイカーで槍の穂先をそらせますが……、正直かなり面倒な武器と相手の組み合わせです。

 三又の穂先は、外に向かって少し広がる形状なので、ソードブレイカーで突き込まれる槍をそらそうとすると、左右の枝刃か柄に剣先を合わせるしかありません。枝刃との接触は一瞬ですし、同じ手段は二度は通じないように思えます。


 でも、こういうタイプの人間は、ずっとかわされていれば大技を使って勝負を決めようとしますからね。今はギリギリで避ける事が出来ていると思わせ続けることが必要です。レナータさんの表情が、だんだん厳しいものに変わっていきますが、私はチャンスを待ち続けます。


「ちょろちょろ逃げ回るのは得意なようだね。でも、この辺で付き合うのは終わりにしちゃうよっ! 《刺突三閃》」


 キタッ、正直ちょろいと思ってしまった一瞬ですね。以前クロエさん達から聞いた事のある、厨二病患者よろしく、技の名前を言いながら放たれた大技。

 技の名前を聞けば、ある程度攻撃方法がわかってしまいます。《刺突三閃》は、その名の通り槍による三度の刺突です。今までと違うのは、先ほどまでより早く、こちらの回避できる限界を攻めてきたこと。

 回避速度を一段上げて、三度目の突きをかわしながら、身体を一回転させて、穂先をやりすごすと、レナータさんに背を向けて、穂先の方へ一歩踏み出すと同時に、枝刃にソードブレイカーの枝をぶつけて、突き込まれたその方向にさらに押してあげます。

 回避されると思っていなかったのでしょう、枝刃を押されてレナータさんの手の中から飛び出した槍は、金属音を立てて観客席の前に転げ落ち、私が右手に握るソードブレイカーの剣先は、正確にレナータさんの喉元へつきつけました。


「……受付嬢といっても、無法者が冒険者登録をしにくる時もありますので、一部は武術に秀(ひい)でたものが抜擢(ばってき)されることもあるんですよ。事務方だと思って、油断なさいましたね」


 私は微笑みながらレナータさんに言葉をかけます。直後に彼女は凄惨な笑顔を浮かべました。いや~、これはなかなか怖い顔をなさいますね……

 怒らせたことは吉となるはずですが、なぜか風向きが変わった気がしてしまいましたね……


 レナータさんとの二戦目は、一戦目とはうって変わって激しいものとなります。速さを重視して、こちらの動きを突き攻撃によって制する戦い方だった重視した一戦目に対して、二戦目は一撃一撃がひどく重い攻撃が主体となります。

 三又の槍(トライデント)による突き攻撃も、こちらが枝刃の破壊を狙って、櫛刃や枝刃を合わせようとすると、槍を回転させてきます。下手にこちらが合わせれば、両手持ちと片手持ちの力の差だけではなく、遠心力や慣性力も加わって、こちらのソードブレイカーが手よりもぎ取られるか、破壊されてしまいそうです。

 槍の柄をそらせようとしても、逆方向にそのまま薙ぎ払われてしまい、力対力の勝負になってしまいます。小柄な身体なのに、なんて力強い……


 左右からの払い攻撃や上からの振り下ろし攻撃は、避ける事が出来る限界点を僅かに超えてくるため、どうしても槍の攻撃方向をそらす必要がでてしまい、だんだんと左右の腕にも疲労を覚え始めてきました。


(……このままでは、なぶられておしまいですね。必要なのは一瞬の隙……)


 突き込まれた三又の槍(トライデント)に、上衣を切り裂かれながらも、左のソードブレイカーをレナータさんに向けて投てきします。左右の剣は鋼線によってつながっていますが、柄に仕込まれた仕掛けによって、鋼線は延長したり巻き戻すことが可能なのです。

 こういった仕掛けまで再現してしまう、このカラクリには脅威を覚えますが、いまは感謝ですね。予想通り、三又の槍(トライデント)で弾き飛ばしてきたので、正面に一瞬の隙がみえました。仕掛けを動かして、弾かれた左の剣を回収しようとした時です。


「……かかったわね」


 わずかにレナータさんの口に笑みが浮かび、再び槍が突き込まれますが、穂先の延長上には私ではありません。そして、レナータさんが狙ったのは……


 鋼の線……


 三又の槍(トライデント)が突き込まれながら回転し、鋼の線がその穂先に巻き取られて……

 使い方によっては、腕程度の太さの肉塊など切断してしまうほどの強靭さをもった鋼線は、回転する槍によって巻き取られてしまいます。しかも剣を回収するために、鋼線を巻き取る仕掛けを動かしていたのが災いして、右手に握った剣すら一瞬で奪われてしまいました。


「つぅ……」


 強引に奪われた剣を手放すのが遅れて、右手首に痛みが走った直後、お腹に衝撃がはしり後ろへと突き飛ばされてしまいました。


「うふふ、陸者にしては楽しませてくれたじゃない。油断していたとはいえ、陸者にあたしの槍をさばかれたのは、百五十年ぶりよ」


 レナータさんの声が聞こえた直後、倒れた私の足元に二本の件が突きたちます。痛む右手首を抑えながら、ゆっくり立ち上がった私は、両手をあげて降参の意思を示します。

 どうやら、自分の実力を過信していたのは、私のほうだったようですね……

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