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駄女神に拉致られて異世界転生!!どうしてこうなった……  作者: 猫缶@睦月
5.南海の秘宝
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48.艦上パーティー

 艦内通路から飛行甲板にでると、宵やみが降りつつある屋外には、肉や魚・貝などを焼く良い匂いが広がり始めています。早っ。驚いたことに既に何店か露店が立ち並んでいました。

 その中には、衛生科預かりのレギニータも居ます。屋台の様な物で、サザエやアワビの様な貝を焼いています。傍らには大量の貝が積まれています。


「レギニータさん、ずいぶん準備が早いね~」


 半ば呆れ顔で僕は口に出しました。停船してから、まだ10分とたっていませんよ。いくら人魚族とはいえ早すぎますよ。


「イリス班長に言って、停船と同時に、貝を取ってきたんですの。皆さんにレギの故郷の料理を食べてもらうんですの」


 あ~、しっかり焼いているようですので平気かな。おそらく、魚介類の生食は皆さん慣れてないですし、寄生虫等の問題もあります。


「しっかり火を通したものにしてくださいね」


 とりあえずアドバイスすると、レギニータはもちろんとうなづきます。それなりの期間地上で過ごしたので、その辺は了解済みのようですね。

 既に艦内から出てきた乗員で、飛行甲板上もにぎわいつつあります。普段は乗員といえど、艦内のすべての場所に立ち入る事ができるわけではありません。移動できる区画は、自分の持ち場と、食堂などの共有ブロックに、居住区画だけですので、例えば機関区の人員は飛行甲板に出ることはできません。そんな事を考えていると、背後から声が聞こえてきます。


「つぁ~、久しぶりに外の空気を吸うぜ」


「リアン様、星がすごくきれいですよ」


「星はどこで見ても、星だろ。さっさと飯食おうぜ!」


 ……背後から聞こえる声に僕は内心肩をすくめます。アーシャも苦労してますね。僕が艦尾側に歩を進めると、アーシャたちは艦首側に歩をすすめます。リアンには気づかれなかったようですね。


 露店は中央にメインの食事処が並び、冷やしたエールやラム酒等のアルコール類は艦首側に配置してます。テーブルや椅子が並べられ、既にパーティーは始まっているようですね。

 中世の頃の船乗りというと、海賊などの荒くれ者のイメージが強いのですが、そこは古くから歴史をもつ海軍といいうだけあって、紳士的ですね。お酒が入っても、暴れるような方はいない……と信じていますよ? 何かあったら、禁錮室に収監しますからね。


「クロエ、おっそ~い」


 僕を呼ぶ声に、そちらを向くと珍しいことにイリスさんが、騒いでいますね。隣には、ユイと衛生科の面々がそろっています。テーブルの上には、軽食と飲み物だけですか。


「いや、遅いってそんなに時間たってないですよ」


 歩きながら話した僕の言葉に、ユイがくすくす笑いをしています。


「艦長、皆さんがお待ちなのは、艦長が収納にしまっているものなのでは?」


 むぅ、やはりそれが狙いですか。艦内では余分な物を作る訳にはいきませんからね。艦内の倉庫には、限界がありますので、食料にしても部材にしても、ある程度定まったものしか入りません。

 一応軍の所属なので、軍費でお菓子や豪勢な食材を積むことはできないのです。

 それでも、この『(クイーン)(アレキサンドリア)』は、たの帆船と比べて巨艦であり、しかも乗員不足の為空間は余っているのですが、海軍の補給隊からの補給となりますから、勝手に購入することはできなかったんですよね。それでも、壊血病の予防といって、果物類は多く積みましたが、お菓子やケーキなどの食材はさすがに積めませんでした。

 一応収納に素材は持っているのですが、食堂は衛生科イリスさんの指揮下にあり、酒保は船務長のユイの指揮下にあります。

 艦長とはいえ、越権行為はできません。と言う訳で、お菓子やケーキ類の完成品は、在庫に限りがある貴重品なのですが、ここで出さないという選択は許されないようです。


「はいはい、わかりましたよ」


 そう言って、僕は収納から複数のお菓子類をテーブル上に広げます。きゃいきゃい、きゃわきゃわと周囲がにぎわい、女性乗務員が集まってきます。


「さすが艦長。太っ腹ですよ~」


「……その分胸は薄い……」


「やばっ、これ四季の新作じゃないですかぁ。お~い、艦長秘蔵の四季がでたよ~」


 大騒ぎになりつつありますが、誰か不穏なことを口にしてましたね。ちらりと視線を送ると、クリスティーナとビクトリアの二人がついっと視線を外します。むぅ、この二人のどちらかだと思いますが、この二人は妙に息が合うんですよね。


「ほらぁ、お祭りなんだからもっと出しなさいよぉ」


 ……イリスさん? 口調が少しおかしい気がしますが……


「あ~、艦長すまん。さっき班長があたしの酒、飲んじまってさぁ」


 そう言ってカレンが差し出したのは、真っ青な飲み物です。そう言えばカレンさんは士官待遇です。持ち込みできる私物には、制限がありますが、確かに士官はお酒を許可されていたはずです。


「それは、カクテルですか!! ちょっと、イリスさん大丈夫です?!」


 よく見ると、確かにイリスさんの目はうつろで、頬もほんのり桜色に染まっています。さっきの様子では絡み酒の様相が……


「クロエ、こんなんじゃ足りな~い、もっと頂戴」


 カレン、その顔はわざと飲ませましたね。ユイもにこやかに微笑んでいるところを見ると、共犯ですか!!


「君達、成人したとはいえ、過度の飲酒はいただけないなぁ」


 女子の群れの中に颯爽(さっそう)と現れたのはオスカー副長ですね。副長としても、娘の醜態は見逃せなかったようですね。慌てて姿勢を正して敬礼をする面々ですが、僕が来たときはそんな事してないですよね? 上官扱いされてない?!


「折角のパーティーだ。この場は楽しみなさい。ところで艦長、開会のあいさつなどは宜しいのですか?」


 副長は答礼を返しつつ、無礼講を認めてくれました。さすがに話が分かりますね。


「せっかくのパーティーですよ。始まる前ならまだしも、いまさら上官の言葉なんていらないでしょう」


 そう言いながら周囲を見回すと、ワイアットがこちらにやってくるのが見えます。


「艦長、できれば今回の戦勝の主役、航空隊にも艦長直々に褒美を頂きたいのですが……」


 くっ、こいつ痛いところを付いてきますね。確かに戦勝祝いのパーティーとしたからには、主役は彼らですね。あぁ、僕の貴重なお菓子類が大量消費される未来しか見えません。


「……飛行隊はどちらに?」


 ワイアットが艦長と呼んでいる為、僕としても航空指令として彼を扱わなければなりません。半ば酔っぱらっているイリスさんを、衛生科の面々とオスカー副長に任せて、おとなしく僕はワイアット航空指令の後についていきます。


「飛空隊整列!」


 航空指令の命令の下、乗員や整備担当の兵士など、10名が整列します。


「楽にして下さい。航空隊の方々の活躍は目覚ましいものでした。厳しい訓練の下、今後も極力損害を控えながら、任務を遂行してください」


 僕のあいさつに、一部の乗員からクスリと笑みがこぼれます。まあ、なんだかんだいっても軍人ですから、任務よりも命が大事的な発言は合わないのは承知しているんですけどね。


「……弱い者に情けをかけすぎるからですよ……」


 ぼそっとワイアットが呟く言葉が聞こえます。ぐぅ、僕にだけしか聞こえないように言ってますし、一方的な相手になると僕の判断が甘くなるのを揶揄(やゆ)されていますが、事実なので何も言えません。


「……今回の皆さんの活躍は、正式に本国に報告済みですが、私個人からのお祝いとして、秘蔵のし好品を提供させていただきます」


 そういって、ワイアット航空指令が用意したテーブル上に、お菓子やケーキ類を差し出します。ワイアットは僕がテーブルに置いた量を見ながら、やがて満面の笑みを浮かべました。


「さぁ、みんな今日は艦長からの差し入れもある。皆で楽しもう」


 くそっ、にこやかな笑みを浮かべる向こう側には、飛行隊の面々がいる為に、僕はにこやかに今後とも頼みますといい、立ち去りました。正直、頬がひくついていたのは内緒です。

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