異世界で活躍できない系主人公
呪術師。
そう、それが俺の職業である。
一体いきなり何を言ってるかって?
いわゆるあれだ。異世界転移的なあれだ。それはまぁいいんだよ。いやよくねえ。
前の世界には母親も父親もいたし妹や弟だっていた。
正直言ってそこまで仲が良い家族ってわけじゃなかったが、いきなり全部捨てて別れたいとはならないレベルだ。
今頃何してるんだろなぁとここの世界に来てからふと思ってしまう。
話が逸れたな。
まぁ説明は省くがなんか邪なんとかドラゴンを倒して姫と王妃とこの国を救ってほしいのこと。
なぜ魔王じゃないのか?なぜ王妃まで捕まってしまうのか?あとなぜ国王がオカマっぽいのか?
他にもいろいろ疑問を持ったが気にしないことにした。
あと俺たちは勇者じゃなくて英雄らしい。どっちでも良いよ!
あっ、俺たちと言ったが俺を入れて15名いた。地味に多いんだけど。俺いらなくないと思ったが先に「こんだけいたら俺いらないでしょ。元の世界に返せよ。」って言ってたやつがいたな。
まぁ返せないらしい。よくあるよね。このパターン。
じゃあこの展開どうなるのかなぁって思って立って見ていたらそいつが「ですよねー。」って認めていた。もっとないのか。こいつ。
そう思ったのは俺だけではないはず。
まぁあとそんなこんながあって、英雄としての役割を担うことになった。なんか英雄カードというのを英雄ルームから英雄パックから選び英雄ポジションと言いながら封を開けるらしい。
なんでもかんでも英雄とつければ良いものではないと思う。そしてソシャゲーのガチャっぽくするな。
どうやら一回しか引けないらしい。
リセマラなしか。アプリを再びダウンロードする系だな。めんどくさいやつだ。まぁ結局飽きるやつって考えるとなぁ。
そんなことはどうでも良いんだよ!本当にそれだよ。なんか色々話をしていたけど(ほとんどはじめ喋っていた奴が)地下に連れて来られていよいよ英雄ルームに行くらしい。
なんか英雄ルームというのは何種類かあるのだが基本的にその人の特性分引くことができるらしい。さっきの奴が色々聞いていて分かった。
やはりと言うべきか、英雄ルームに最初の奴が一番に入っていった。ある意味一番英雄ぽいなこいつ。説明は受けていたし特に問題もないわけなんだが、発言くん(仮)はさっきから全く不安を感じないでいるみたいで怖いな。
なんて、ちょっと心の中で思っていたら、「今更だけど、どうするんだよぉ。帰りたいよぉ。なんで俺が戦わなくちゃならないんだよぉ。以下略。」
と言う叫び声が英雄ルームから聞こえた。…防音じゃないのか。神聖なる次元を超えし空間とか言っていたから防音かと思っていたんだけどなぁ。
発言くん(仮)が出てきた時、「いやっすっごいね。英雄の力って奴が感じられるよ。」って言ってきてなんか生易しい目で見てしまったのは俺だけではないはず。そいつに対して物凄く冷たい目をしていた少女もなんか気まずそうにしている。
まぁみんなが順に入っていくから真ん中ぐらいの位置で並んでいた。なんとなく前の奴に話しかけようとしたら、凄え目力で睨みやがった。もう誰かに先を譲りたくなるぐらいに。譲ろうかな、じゃなくって気を取り直して後ろの人に話しかけようとしても、うん無理。話しかけようとするまでもなく無理。
マジで顔がイカツイ。金髪でなんか指輪もネックレスもドクロだ。何処でそんなもん売ってんだよ。
しかも、こいつもなかなかの目力で先ほどの奴といい勝負だ。
こんなにピンチでも大丈夫。俺は自分の妄想の世界に逃げ込んで事なきを得る。…事はなかった。なぜなら、
「なぁおまえ。どう思う?」と金ドクロ(仮)に話しかけられたからだ。
ピンチ!マジピンチ!いや、落ち着くんだ俺!
俺はすぐさま「えっと、なんとかなるんじゃないですか?あの人とかあの人がなんとかしてくれそうですし。」と楽観的なことを出来損ないの敬語で言ってやった。俺は今気づいた。異世界ではじめてのコミュニケーションができていると。むしろ今異世界ではじめて口を開いてちょっと感動している。
出てきた三番目の人とその次の人が再燃せし厨二心が暴走したようでちょっと痛い人になったがなんとなく安心できる。金ドクロは「そ、そうか」と引き気味に言った後に、こっそり「あれを見て安心できるお前ってまさかあっち側かよ。」と呟いた。。異世界初コミュニケーションはどうやら相手が一歩引くという結果で終わった。なんか文句あんのかぁぁ。
そんなこんなで職業を得た。ゲームでいうジョブだね。
それが呪術師である。
このジョブを得た時めっちゃやばい感じがしたよね。よくある追放とか処刑とかそんなことばっかり考えていた。
だって呪術師だよ。絶対に敵側のジョブじゃん。
発言くんのジョブは英雄従者。よくわかんないけど英雄側じゃん。目力ちゃんは剣英雄。という完璧な味方側のジョブ。金ドクロのジョブはマテリアルマスターというなんかすごそうなジョブ。なんでお前だけカタカナなんだよ。
俺がよくある集団召喚の裏切り者的なアレですか?このジョブは邪なんとかドラゴンのナンターラカンターラですか?
そう思っちゃうよね。普通思うよね。いや、普通かどうかわかんないけど違うぐらいはわかるよ。
えー、現在ではただいま邪なんとかドラゴンとかをこの王国の展望台的なところからで呪ってます。なにしてんだろ俺。腕を振るいカツーン、カツーンという金属の接触音を聞きながら思う。
藁人形になんとかして採取した邪なんとかドラゴンの血液を染み込ませ、聖なる加護を受けし銀の杭を打ち込み、俺の中に含まれている怨念的なドロドロしたものを打ち込んでる。
やってらんねぇ。
そう思うたび、俺の持つ片手で持てる程度の軽いハンマーが怪しく不気味に光り、銀の杭に打ち込まれていた。ノルマは後2984回。この分を打ち込まなければならない。打ち込まれていくたびに対象に呪いが蓄積されていくからだ。それにより邪なんとかドラゴンの不思議な力がかき消されるらしい。そのドラゴンなんて見たこともないのに。ちなみにはじめてからだいたい一年半ぐらい経っている。
元々のノルマも50万回ぐらいあったから終わりがみえてきた。
一年半ぐらいたって他の英雄はすくすくと成長した。もうほとんどみんな人外と呼べるほどの速さで行動し重すぎて持てないものも余裕で持てるようになった。その人外とかした英雄はなんかもう結婚とか子供とか楽しい酒場とか貴族のパーティーとかそんな話を聞くことがしょっちゅうある。楽しそうだなぁ。
それに比べて俺は…。
朝起きて、飯食って、恨みを込めながら杭を打ち込む作業をして、昼飯を食って、また打ち込んで、晩御飯食って、風呂入って寝るという習慣。それ以外はたまに呪術の勉強ぐらい。
だんだんと早く打ち込めるようになって嬉しいことを俺についている護衛に話しかけたら引かれた。だよね。俺だって引くよ。けど、それしか楽しみがねえから仕方がないんだよぉ。呪術を覚えるつまり、なんか禍々しいものを打ち込む方法を覚えるまでは時間があって楽しかったんだがなぁ。
王様曰く呪術に込める禍々しい何かは術者のストレスによって効果が上がるらしい。だから、こんなことをしてるんだとさ。それでも全然許せねえよ。
俺は異世界まで来てなにをしているのだろう。
そろそろ冒険がしてえよ。俺の冒険が始まってねえよ。え、これが俺の冒険だって?全然ちげえよ。
やっぱり短編のほうが書きやすい気がする。