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第八話「旅立ちの前に」


 れいなが泣きながらユウキに寄り掛かる様子を、沈みかけている太陽も、木々も、優しく見ていた。もちろんさつきや他の人も、にやにやしながら見ていた。


「あれれー、いつの間に二人はそんな仲になったのかなー?」


「女を泣かすなんて隅に置けねえな! 兄ちゃん」


 周りの人が自分たちを見ていると気づいたれいなはユウキから即座に離れる。


「ち、ちがう! 私は別にこの人のことなんて」


 慌てた様子の彼女は言葉とは裏腹に頬を紅く染めていた。


「そうだよ。そんなのないから。っ!」


 何故かれいなに足を踏まれた。何かと思って目線を送ろうとすると目を背ける。


「ないって何よ……」


「なんか言った?」


「言ってない!」


 何に怒っているのか分からなかったが、今何を言っても逆効果な気がした。


「ふーん、あやしいなー。まあそれはそれとしてー、」


 さつきはその場でくるくる回ってから沈んでいく太陽を指さした。なんのために回ったのか分からないが、かわいいからいいだろう。


「今度こそ出発だー! と思ったんだけど、もう夜になっちゃうから泊めてもらうことにしましたー」


 さつきが四十歳程の男を連れてきた。その男が

「よっ!」と言って右手を挙げる。先程の戦いでフラグを立てた男だった。


「俺は、あきらだ。よろしくな。俺、旅館やってるからお前ら泊めてやるよ。もちろんタダで」


「いいんですか?」


「ああ、おもしれーもん見れたからな」


 普通なら「命を助けられたから」というのが理由なのだろうが、この世界では面白いからってのが大切らしい。あきらに連れられて一行は旅館へやって来た。


「……なかなか、大きいな」


「ええ、この町ではかなり有名な旅館よ」


「やったー、温泉だー」


 案内された旅館はかなり部屋数が多く、立派な造りだ。


「ここを使ってくれや。部屋は一つしかないけど、まあいいよな?」


 目でユウキに同意を求めてくる彼は、なぜか親指を立ててにやにやしている。


「べ、別にいいんじゃない。これから旅をするならどうせ一緒に寝ないと行けないといけないんだし」 


「わたしはいいよー。そういうの気にしないしー。むしろ私が邪魔かもしれないしね!」


 こういう台詞は主人公に聞こえないのがお約束ってやつだ。都合よく聞いてなかったユウキを他所に、また紅くなったれいなと仲良さそうにじゃれている。


「んー、さっきーとれいながいいなら俺はいいけど」


「じゃ、決まりだな。飯まだ食ってないんだろ。すぐ持ってきてやるよ」


 どうやら途中で腹が鳴っていたのを聞かれていたらしい。部屋に持ってきてくれると言うので大人しく座って待つことにした。


「いやーラッキーだったな。こんな場所貸してもらえて」


「本当、そうね。明日からは野宿なのだから今日だけでも落ち着けるのは良いことだわ」


 確かに、旅となれば気を休めるのも大変だろう。この部屋は柔らかい光で包まれていてとても落ち着く。聞いたところ、この世界の灯りは力を貯めて放出する、巻物と同じ特別な素材で出来ているらしい。これも神が作り出した物なのだろうか。考えていると、今日一日の疲れが出て、ユウキは少し眠ってしまった。

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