第三話「狂気」
「さーて、準備も出来たし、早速出発しようかー」
三人は町の出口を目指し歩き始めたが、ユウキが足を止めた。
「んー、どうしたのー?」
「いや、なんかあっちの方がなんか騒がしいなーって思って」
「そうかもねー。なんかやってるのかなー」
さつきとユウキが話していると、れいなが振り返り二人の腕を乱暴に掴んだ。
「ちょっとやばいかもしれない。急ぐよ」
れいなは二人を抱えたまま、思い切り踏み込み地面を蹴ると目に追えぬ速度で、騒ぎがする方向へ飛んで行った。
これはユウキたち三人が来る少し前のこと。そこは真ん中に銅像がある広場だった。広場には遊ぶ子どもたちや長椅子に腰を下ろす大人たちなど多くの人々ががいた。
ゆっくりと流れる平穏な時は突然に壊される。地面から成人男性の二倍はあるような真っ黒な熊が三匹現れた。
「魔獣だー!」
「すっげー!」
「こんな場所に出現したのは初めてじゃないですかね?」
「そうかもねー」
魔獣が大きく唸り声をあげて、子どもたちの側へと近づく。だが、誰一人としてその場から逃げる者はいない。子どもたちは戦闘態勢をとり、大人は見物を決め込んでいるようだ。
「魔獣と戦うのは初めてだぜ」
「いくぞー!」
魔獣に向けて走り出す。魔獣は向かって来た子どもに腕を振り下ろした。
広場には拍手と笑いが溢れる。
子どもたちは体を裂かれ、大量の血を流し死んだ。
「なんだこれ……」
ユウキたちが着いたとき、広場には血の海が広がっていた。転がっているいくつもの死体。まだ生きている人は手を叩き笑い続けている。魔獣は三体、転がる死体で遊んでいた。
「なにこれ、すっごーい! 超うけるー。ははは」
惨劇を見て楽しげに笑うさつきにユウキが詰め寄る。
「お前何笑ってんだよ! 人が死んでるんだぞ!」
ユウキの言葉には耳を貸さず壊れたように笑い続けるばかりだ。
「無駄よ。後で話をしてあげるから今はまずこいつらに集中しなさい」
そう言うとれいなは魔獣たちに向かって歩き出した。