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第二十四話「革命を起こせ!!」

 怒りを押し殺すような声でれいなは静かに話す。


「ユウキ、この国はやっぱりおかしいわ。最初に来たときからそう思ってた。人より花を優先させる国なんて存在するはずがないもの。そしてそんな中、一つだけあるのがあの城。きっとあの女、この国の王とやらがそうしてるに違いないわ」


 れいなの言葉でユウキの頭にはあの女王の姿が浮かんでいた。真っ赤なドレスを身に纏い、厳しそうな雰囲気を滲ませていた女。そしてユウキと同じように日本から異世界転移してきたというあのユウリという女が。


「……確かにそうかもしれないけど、まだ分からないだろ?」 


「いえ、絶対そうよ。ここの人に聞いてみればわかるわ」


 髪を揺らす彼女は真剣な表情だ。彼女が着ているメイド服も様になってきたようにも見えてくる。


「なんでそこまで言いきれるんだ?」 


「女の勘よ」


 そう言ってれいなは笑ってみせた。その笑顔はユウキを安心させるような優しい笑いかけだった。






「ねぇ、ちょっといいかしら?」


 れいなは親分に話しかけた。れいなの方が少し背が高いため彼女が見下ろす格好だ。さつきたちとはしゃいでいた彼が振り返る。


「なんだ、姉ちゃん? 仕事は山積みだぞ」


「そう、その仕事のことで質問があるの。こんなことをさせているのはこの国の王で間違いないわよね?」


 れいなの質問に当たり前だと言いたげな表情で頷く。


「そうだ。俺たちは女王様の命に従っている」


「何を食べて生きてるの?」


「野菜の端っことかだが?」


「どれくらい働いてるって言った?」


「一日中だよ! 寝る時間はほとんどない! それがどうした!?」


 話が見えてこない苛立ちで親分は声を荒げた。先程かられいなは他の人とは違う反抗的な雰囲気を出していたからかもしれない。そんな二人のやり取りにユウキが口を挟んだ。


「……そんなの辛くないか?」


 ユウキの一言に親分は何故か笑った。


「『ツライ』ってなんだよ?」





 親分の答えにユウキは頭を掻く。


「悲しいって感じないのは知ってたけど辛いとも感じないのは知らなかったよ」


 そんなユウキの独り言にれいなが口を開いた。


「それは少し違うわ。『ツライ』っていうのは何かを嫌に感じることでしょう? それならば確かに辛いとは感じる、体はね。だけど心は反応しない、拒絶反応は起きてるわよ、ほら」


 れいなは辺りを見渡し床に寝ている人や、親分、のっぽを指さした。


「ここの人は皆痩せ細ってるし、顔色も悪いわ。きっと皆こんな場所にいるべきじゃないのよ」 


 そして彼女は一息置いて、また話を続ける。


「悲しいと思わない、辛いと思わないならどんなことをさせてもいい、とはならない。壊れていく彼らを見ていられない。私たちは皆同じ人間だもの」


 れいなの想いがユウキに響く。きっとれいなはこの世界で唯一悲しみを知ってしまった人だが、その分誰よりも優しい人なのだろう。心の痛みが分かるのだから。

 そんな中、指をさされた親分は顔を歪めていた。だいぶお怒りのようである。悲しみは感じないのに怒りは感じるなんて可笑しな話だ。そういえばこの世界の人は皆素直でどこか子どもっぽい人が多いな、とユウキは思った。これも悲しみがない影響なのだろうか。


「おいおいおい! さっきまで俺に散々聞いといて放置かよ! お前ら一体何がしたい訳?」


「そうね、ごめんなさい。私たち仕事は出来ないわ。」 


「はぁ!?」


「ちょっとしたいことがあって……あれ、これなんて言えば納得するのかしら?」  


 確かに辛いという言葉も知らない人たちに奴隷制度は駄目だと言ってもいまいちか。いくら正しくても誰も賛成しないのに革命を起こすのはおかしい。どう説明すればいいか悩むれいなとユウキにさつきが話しかけた。


「二人ともどうしたのー?」


 話しかけられた二人は顔を見合わして頷いた。そして二人してさつきの肩を掴んだ。


「実は…………」


 

「……なるほどー。大丈夫! それなら私に任せてよ!」


 さつきは自分の胸を右手で叩いてみせる。叩くと言ってもその右手は柔らかいものに当たってバウンドしたが。


「ねぇねぇ、のっぽさん、ちょっと頼み事があるんだけどー」 


 さつきが彼に耳打ちすると


「へい! 喜んでー!」


 彼は今まで歩いてきた方向に駆けていった。男をこんな簡単に動かすとは、実はさつきは魔性の女なのかもしれない。洞窟に響く親分の怒声も彼には聞こえていないようだった。



「はい! さつきさん! この国の人全員連れてきやしたー!」


「ありがとうー! じゃあ皆さん聞いてください!」


 地下の少し広い場所に連れてこられた人々がさつきに注目する。全員と言ったのに五十人程しかいなかったが。


「はい! 今から私たちはこの国をぶっ壊します!! カナシイからとかツライからとか私も分かんないけどユウキたちの言いたいことは分かりました! こんなところにいたってつまらない! もっと楽しいことをしましょう! この国の城のあの真っ白な壁も花も全て血で染めてやりましょう!! さあ! 革命(パーティー)の始まりです!!」

楽しみにしていてくださった方には申し訳ないですがここで打ち切ります。同じ設定で書き直すのでよろしくお願いします。

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