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第二十一話「飾られた表面」


 ユウキたちの目の前の女性、ユウリは自分が王だと言った。だがそんなこと言われなくても分かっている。他の人とは違う気品のようなものを感じるのもあるが、まず服が一人だけドレスだ。燃えるような真っ赤なドレスを身に纏っている。そして先程まで偉そうに脚を組み、玉座に座っていた。そんな人、王様以外いないだろう。


「こんにちはー、ユウリさん! 私はさつき! よろしくねー」 


「ええ、先程伺いました。あなたがさつきさんで、そちらがれいなさん。で、あなたが……私と同じように日本から来られたユウキさんですね?」


 さつきと握手をしてからユウリはユウキに近づく。近づかれるとより分かるがかなり背が高い。百八十センチはあるだろうか、ユウキが軽く見下ろされている。その口調や表情はどこか険しいものがあるようにも感じられた。


「……はい、そうですが。どうかしましたか?」


「……ああ、いえ。私たち以外にもこの世界を訪れる人が現れるとは……考えもしなかったので動揺してしまいました。どうかユウキさんもこの世界を愛してあげて下さいね」


「世界を愛する……?」


 首をかしげてたユウキにれいなが耳打ちした。


「『この世界を愛しています』それがこの世界唯一の教え、神教の決まり文句なのよ」


 なるほど。この世界の神は自分が創った世界を「愛している」とストレートに言わせているらしい。依存しまくっているカップルのようだ。ユウキはますます直接会って一発殴りたくなってきた。



「では、私はこの辺りで。やらなくてはならないことがあるので……。ごゆっくりなさって下さいね」


 ユウリがそう言ったためユウキたちは部屋に入ってから僅かな時間で追い出されてしまった。




「さて、これからどうしましょうか?」


 一階に戻りこれからどうするか思案に暮れていると、そこにタケダが現れた。どうやらユウキたちを探していたらしく、少し息が切れているようだ。


「ああ、皆さま! やっと見つかりました! お食事とお風呂。どちらを先に致しますか?」





 

「いやー、いいお風呂だったねー」


「……私は疲れたわ」


 浴場はテニスコート並に広かった。おまけにライオン……ではなく、熊の像が口から湯を出していた。まさしく豪邸の浴室といったところで、またしても二人はお楽しみだったという訳だ。当然れいなの頬は林檎のように赤く染まっていた。


「じゃあご飯食べに行こうかー」


 二人は再びメイド服に着替え、浴室を後にする。先に風呂を済ましていたユウキと合流し、一行はタケダに言われていた部屋に向かった。


「ここだな……」


 ユウキが扉を開けると沢山のメイドや執事が食事をしているところだった。


「あ、ほまひひてほりまひた(お待ちしておりました)」


 タケダが口を動かしながらユウキたちを誘導する。座った席にはカレーライスが置いてあった。


「おー! カレーだ!!」


「何、これ……?」


 異世界に来てからというもの、初日に食べた和食を除けば、保存食と焼いた肉しか食べていない。ユウキは懐かしさのあまり涙さえ流しそうな勢いだ。だがれいなは初めて見る茶色い食べ物を警戒している。初めて使うスプーンでカレーを怯えながらつついていた。


「おいしー! 初めて食べたよこれー!」


「それなら良かったです! 粗末なものしかなくてすいません!」


 さつきの反応を見て覚悟を決めたれいなが一口、カレーを口にいれた。すると


「辛い!」


 と叫び水をごくごく飲んだ。


 結局、れいなはルーをユウキに全て渡し、具と米だけを食べたのだった。




「中辛だったのですが、お口に合いませんでしたかね」 


「もう二度と食べないわ……」


 食事を終え、ユウキたちはまたまたタケダの案内で寝室へ向かった。案内がなければどこがどの部屋かなんて分かるはずがない。それほど部屋数が多いのだ。




「この部屋です! どうぞお入りください!」


 タケダが三人を押す。


 ドアの先は真っ暗な空間だった。本当にただただ暗いのだ。おまけに変な浮遊感さえ覚える。いや、これは落ちているのだ。


「うわぁぁぁぁぁ!」


そうして、ユウキたちは奈落の底へと吸い込まれていった……




「お許し下さい、皆さま……」


 そう呟いて、タケダは震える手をポケットに押し込むのだった。


温泉シーンカットしちゃいました!(以前反応がなかったので……)

まあ、やってることは同じでしょうから想像で補ってくださいね。

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