第二十話「歓迎」
「少々お待ちくださいね!」
タケダがそう言って城へと入り、またその姿を見せたのは五分ほど経ってからだった。
「どうぞどうぞ! 中へお入りください!」
タケダに言われるがままユウキたちが城に足を踏み入れると
「ようこそお越しいただきました! れいな様、さつき様、ユウキ様!」
縦にびっしりと並んだ男女。執事服やメイド服を着ているそれらが息の合った声を上げ、同時にお辞儀をする。十人ずついるだろうか、床に敷かれたレッドカーペットの枠のようである。
真上を見上げれば、高い天井。シャンデリアのつもりだろうか、雷の魔石がそれに似せて加工された木の先に幾つかくっつけられている。
そんな景色を見て、さつきは目を輝かせ歓声を上げた。
「おー! ありがとー!」
声がよく響く。奥の階段の先まで響いたのではないだろうか。そんなさつきの反応に皆、得意気だ。
「その服はなんなのかしら? さっきから気になっていたのだけど。もしかしてそれがヨウフウというものなのかしら?」
「ああ、そうだな。平たく言えばそうだよ」
洋風=メイド服や執事服となると色々とおかしくなるがまあ、そういうことでいいだろう。れいなも納得しているようだ、とユウキが思ったとき、彼女が思わぬことを口にした。
「私もそれ着てみたいわ」
「大変似合っております、勇者様!」
「なんでこうなった……」
メイドや執事がユウキたちを褒め称えるがユウキは嬉しくない。なんで自分が執事服を着なくてはならないのか意味がわからない。そんなユウキをよそにれいなたちはノリノリだ。
さつきとれいなはそれぞれメイド服を着た。れいなはわざわざ小さめのものを着て脚の黒い部分を全て出している。彼女曰く、そうしないと動きづらいらしい。
「似合ってるわよ。で、私たちはどうかしら?」
「えっ、ああ似合ってるよ」
「あー、今棒読みだったでしょー」
「いやいや、本当に似合ってるって思ってるよ。すごくかわいい」
実際ユウキは、あまり服の良さとか美しさは分からない。だがここでそう言っておかなければどうなってしまうか分からない。
そんなユウキの心情とは裏腹に赤面したれいなは顔をくるっと背ける。
「さ、さっき一番上の階にある部屋に来るように言われたわ! 早く行きましょう!」
一人速歩きで行くれいなと、その後ろを首をかしげてから、ポケットに手を入れてついていくユウキをさつきはにやにやと眺めていた。
「やっぱりこの二人は面白いなー!」
さつきはそう呟いて、走ってれいなに抱きついたのだった。
長い長い階段を登った先にその扉はあった。ちなみにここは二階である。着替えをしたのが一階の城の正面から見て左端の部屋、そして螺旋階段をひたすら登ったさきがここだ。どうやら二階はここしか部屋はないらしい。階段も先程登ってきたものしか見当たらない。
つまり、一階は多くの部屋、二階は広大な部屋一つのみ、という城のようだ。変わった造りである。
「失礼しまーす」
巨大な白の扉を押す。すると正面、奥には立派な椅子があり、そこに誰かが脚を交差して座っていた。
四十代くらいだろうか。短く切られた髪、きりっと尖った目付きと眉。美しさの中に厳しい性格が滲み出ているような女性だった。そんな彼女が席を立ち、ユウキたちに声をかけた。
「ようこそ、私の城へ。私はユウリ、この国の王よ」




