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第十九話「花の楽園」


 タケダの先導でユウキたちは門をくぐる。割と立派な白い門だ。国の回りは三メートル程の塀と水で満たされた深い堀があるため、ここと、反対側の門の二ヶ所からしか入れないらしい。


「別に誰かが攻めてくるわけでもないでしょうに……なんでここまでしてるのかしら」


「念には念を、ですよ! 物騒な世界ですからね! そんなことよりほら! 見てくださいな!」


 タケダが前を空けるとそこには一面、花が咲き誇っていた。ユウキたちのすぐそばには真っ白な花。奥には青、赤、黄など数え切れない彩りで地平線の先までずっと覆われていた。


「…………」


「…………すげぇ……」


「凄い、すごーい! これ全部花なんだよねー!?」 


「はい! そうです! 見事なものでしょう?」


 思わず言葉を失うユウキたちにタケダは得意気だ。満面の笑みを浮かべてくるくると回る。


「これぞこの国の宝です! 私の三十年の意味なのです! あらゆるものを犠牲にして今のこれがある! 私の人生に後悔はない!……と思います!」


「……今の間は何かしら?」


 れいなにそう言われてタケダは頬を掻く。


「いえいえ、大したことではないのです! ただ色々と葛藤はあったのですよ……」

        

「へぇ。どんなことがあったのかしーーー」


「まあまあ、その話はその辺でいいだろ? 話したくないこともあるだろうし。俺はそれよりもこれだけの花、どうやって育ててるのかを知りたいです。」


 れいなが聞こうとしたことをユウキが遮った。「悲しい」と感じる人に出逢えたことが嬉しいのか要らないことにまで首を突っ込もうとしているようだ。だが、ユウキに遮られるとすぐに諦める。どういう訳かユウキと同じ境遇の人の筈だが興味はそこまでないらしい。


「お気遣い感謝します。この歳になれば言いたくないことも幾つか出来ますね……。で、花が何故育つのか、ですね。それは『妖精』のお陰、なんて言われてますよ」


「妖精?」


「ええ、まあそう言われているだけですよ」


 驚きを表現するユウキにあくまでも噂だと、タケダは念を押す。

 そんなタケダの「そんなものがいれば……」と唸るように言った小さな呟きは誰の耳にも届かなかった……



 しばらく歩いただろうか。日が傾いてきている。だが花の絨毯は途切れることなく続いている。そしてそれとは違って建物はぱらぱらと少しずつしかなく、誰に会うこともなかった。


「家、少ないですね」


「そうですね。まあ地下にありますから」


「なんでわざわざ地下に……?」


「いやー花を植えすぎましてね……まあ皆納得してますよ。この国の人は花が好きですからね!」


 どうやら少しだけある建物は地下へと繋がっている階段らしい。それにしても花のために地下に住むなんてことがあるとは。なかなか不可解だ。だがそれを言えばこの世界自体がおかしいのだが……

 そんなことをユウキが考えていると、目の前にネズミの国にあったような城が見えてきた。


「さあ、城に着きますよ! 勇者様方、パーティといたしましょう!」

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