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第一話「この世界には神様がいるらしい」

大幅に書き直しました。

物語の進みかたには影響はありません。

「異世界召喚!」


 古びた小屋の中、少女が大きな声でそう唱えた。肩まで伸ばした金髪と垂れた目、そして少し低めな背丈の割に大きな胸が特徴的な美少女だ。薄い桃色の浴衣を着て両手を大きく拡げている。


 彼女の声に応えて巻物が光を放つ。眩しすぎて目も開けられない。


「凄いわね……」


 部屋にいたもう一人の少女がそう呟いた。こちらは金髪の少女とは対照的な見た目をしている。

 腰の辺りまである黒髪とつり目、女性にしては高い身長の持ち主。もちろんこちらも目を奪われる程の美貌である。黒を基調とした浴衣を大胆に太ももの辺りで破いていて、その長い脚には黒のニーハイソックスがあった。


 巻物からの光が収束し始めると、何かシルエットが見えてきた。

「こことは違う世界、即ち『異世界』から何か役立つものを持ってくる」なんて書いてあったものだから少女たちの期待はかなり積み上がっていた。

 だが、どんな便利グッズが当たるのかしら、といった具合の主婦の気持ちで待っていた少女たちの思いは裏切られることになる。



「あれ、ここどこだ? 俺、シャワー浴びてたよな……」 


 

「………………」


 突然、予想もしていないものが現れて少女たちは唖然とする。便利グッズどころか裸の少年が当選したようだ。当然クレームの一つや二つは入るだろう。


「この、変態がぁぁぁ!」


「ぐはぁ!」


 頬を赤らめた黒髪の少女の蹴りが腹に入る。少年は腰を起点に二つに折れ曲がり壁に衝突した。

 そしてそのまま、この少年、香川勇気(カガワユウキ)は異世界に来て早々初めての気絶を経験してしまったのだ……







「ごめんなさい」 


 ユウキはしばらくして目を覚ました。これまで生きてきてこれほどの衝撃を喰らったことはあっただろうか。まるで腹にバットをフルスイングされたようだった。そんなことはされたことはないが。

 

 まだじんわりと痛みを感じているユウキに黒髪の少女が謝罪をする。

 

「つい、蹴ってしまったわ。あなたは呼ばれた側だから不可抗力だったのでしょうに」 


 そう言った少女からは何故か反省の色は感じられない。まるで正当防衛だとでも言いたそうな顔をしている。

 確かに「裸の男が少女の目の前に現れた」とだけ聞けば少女は謝罪をしないのが当たり前だが、今回は事情が違う。

 

「謝ってるのか……?いや、それはもういいや。痛いけど。それよりここはどこなんだ?」


 少女の態度は気になるが、それよりももっと気になることがある。ユウキは一度、蹴られたことは忘れることにした。


「あ、ここは、あなたがいた世界とは違う世界、つまり『異世界』ってやつだよ!」


「……君は?」


「私はさつき。こっちにいるのはれいな! よろしくねー」 


 金髪の少女さつきはユウキに尋ねられそう答えた。笑顔で愛想のいい彼女と違ってれいなは無表情だ。いや、むしろ怒っているようにも見える。


「俺はユウキ、よろしくな。で、色々教えてほしいんだが……」


 ユウキは辺りを見渡した。床は畳が敷かれていて、目の前の少女たちは浴衣姿。とても異世界とは思えないが……


「私たちがユウキを呼んじゃったのー。その巻物で」 


 さつきが指さす方向には焼け焦げた紙切れが散らばっている。


「これが巻物?」


「うん! 燃えちゃったけどねー」


「巻物は一度使えば燃えてしまうのよ。ほとんど見つかったこともないし。その代わり強い効果を持つものばかりと言われているわ」


 話によれば巻物は世界各地に散らばっているらしい。誰がそんな物を作り、何のために置いているのだろう。人を異世界から呼び出すような科学を越えた力を……

 そんなユウキの考えを見透かしたようにれいなが口を開いた。


「神よ。世界を作った神が置いている」 


「神?」


 神という単語を聞いた瞬間、さつきの目がギラギラと光りだした。ユウキの顔に息がかかるほどの距離まで身を乗り出す。


「そうだよ! 神様は凄いんだよー! 神様は私たちに幸せを与えてくれてるの! 私たちは神様に生かされてるんだよ!」


 急に早口になって捲し立てるさつき。先程までの穏やかな雰囲気から一変、その身に狂気を纏っている。


「そうだ! あなたも神様に会いに行こう! ここであなたと会えたのも神様の導きに違いないよ! 神様に会えばもっと幸せになれるから!」


 そう言ってさつきはユウキの手を握る。そんな彼女に圧倒され、ただただ頷くユウキをれいなは静かに見ていた……

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