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4 嵐の前

 本日は子供たちが待ちに待ったクリスマスイブの日だ。電飾で飾られた夜の街は多くの人出で賑わっている事だろう。仲良し家族は幸せそうな笑顔を浮かべ、恋人達はキャッキャウフフとしているに違いない。

 しかしそんな平穏な世情とは裏腹に、今の俺達の間には張り詰めた雰囲気が漂っていた。だがそれも仕方ない事だろう。なぜならこれから俺達は決戦の地へと赴くのだから。


 本来であれば今日はクリスマスイベント『聖なる夜の舞踏会』が開催される予定だった。そしてそれは和やかにクリスマスを祝う平和的なイベントであったはずなのだ。しかし運営の気紛れによってそれは『聖なる夜の武闘会』なる物騒な催しへとすり替わってしまう。用意された景品も一気にグレードアップを果たし、ネット上などではリアルの都合で参加出来ないプレイヤー達の怨嗟の声が渦巻いていた。


「まあそんな奴らに同情なんて一切しないけどな」


 大事なゲーム内イベントよりもクリスマスをリアルで祝う事を選んだ連中の事なんて、正直どうだっていいのだ。精々俺の視界の外で存分に泣き喚いていればいい。大体にして本気でイベントに参加するつもりがあるのなら、リアルでの用事や約束なんて全部投げ捨ててしまえばいいのだ。恋人とどうしてもクリスマスの夜を共に過ごしたいのならば、2人一緒にラグナエンド・オンラインにログインすればいいだけの話だ。まったく何を思い悩む必要があるのというのか。


「REOの為にマジで会社を辞めちゃったアンタが言うと、妙な説得力があるわね……」


 そんな事を愚痴っていたらなぜかルクスに呆れられてしまった。解せぬ。


「しっかし大会までもうすぐね。私達ちゃんと勝てるかしら……?」


「うむ。やれる事は全てやったのだ。後は天の配剤次第といったところか」


 バラ―ディアを臨時のパーティメンバーへとして迎え入れてから、急造チームながらそれなりの練度へと至るまで練習を重ねた。初めは完全な対人戦初心者だった彼女も、その呑み込みの早さもあって随分上達した。想定通りに事が進めば、きっと十分な仕事を果たしてくれるはずだ。あとはどれだけ彼女の力を温存したまま、試合を勝ち進めるかに掛かっている。


「普通のチーム戦だったなら、かなり良い所まで行けるはずなんだがなー」


 トーナメント戦で5:5でキッチリ向かい合って戦うならば、かなりやれる自信が俺達にはあった。だが問題となるのはそれ以前なのだ。


「うむ。果たして我々が予選を突破する事が出来るかどうか。まずはそこが最初の難関だと言えよう」


 急な変更であったにも拘らず、イベント参加を申し込んだプレイヤーの数は既に万を超えたらしい。そのせいかトーナメント参加者を絞り込む為の予選を行う事が追加発表されたのだ。


「たしか160チーム、約800人くらいを一つのフィールドにぶち込んでのバトルロイヤルなんだろ? しかもその中で本選に進めるのはたった2チームだけと来たもんだ。流石にそんな大規模戦闘は俺も経験した事が無いから、ちょっと展開が読めないんだよな……」


 俺の知る限り、対人戦用のフィールドは最大のLLサイズでも、計200人程度を想定した広さのだったはずだ。そこに4倍もの人数をぶち込めば果たしてどうなるのか。選ばれるフィールドの種類にもよるだろうが、恐らくすぐに他のパーティと遭遇してしまう事は想像に難くない。それだけならばまだしも複数パーティとの遭遇によって乱戦にでもなったら、勝敗の行方は全く見えないのだ。


「うむ。私もその点は確かに不安だ。だがこんな突飛な状況を予想できたプレイヤーなどまず一人もいないだろう。条件は皆イーブンなのだ。ならばそう気張る必要もあるまい」


 まあそれもそうか。今俺が抱えている不安は、ガチで勝利を狙っているプレイヤー達のほとんどが抱いている思いと多分同じものなのだ。そう思えば少し気が楽になる。


「今は何も考えずゆっくりと休んで、夜に備えるとしようじゃないか」


 昨日は夜を徹して練習に励んでいた為、流石に多少疲れている。なので試合前に一度仮眠して疲れを取るべく、俺達は現実へと戻って来たのだ。今は下手に思い悩むよりも、キッチリ疲れを取る事を優先すべきなのだろう。


 ◆


「これはなんとも壮観だな……」


 今は夜の18時頃、イベント開始まではまだ1時間程ある。しかし会場である闘技都市アンフィテアトルムには、既に多くのプレイヤー達が詰めかけていた。パッ見回す限りでも以前のハロウィンイベント以上の人の数であり、それだけプレイヤーが増えたことを改めて実感させられる。


「……流石にこれ全部が出場する訳じゃないと思うけど、ちょっと不安になって来るわね」


 流石のルクスもこの数には気後れを感じてしまうらしい。どうやら俺だけではないようで少し安心した。


「さてフレンドリストを見る限り、既にバラ―ディア君もこちらへ来ているようだが……」


 これだけ人が多いと、合流するのも一苦労である。


「ともかく行きましょう」


 人混みを潜り抜けながら約束の場所へと向かっている途中、俺達は思いがけない人物と出会(でくわ)す事となる。


「オッホッホッホー! 久しぶりですわね雪音!」


 黒いサンタ服を着たソルのアバターが俺達の行く手を阻んでいた。その高笑いを聞いてしまえば、その中身が一体誰かはプレイヤー名を見なくとも一目瞭然だ。


「だからその呼び方は止めろというのに……」 


 何度言っても本名呼びを改めないアリスリーゼに対し、ネージュは額に手を当てうんざりした表情を浮かべている。


「またおまえか。なぁ、俺何度も言ったよな? ソルのアバターを使うのは止めろって。日本語も理解出来ねぇのかアリスリーゼさんよぉ?」


 ハロウィンイベントであれだけ散々な目に遭わせてやったにも関わらず、どうやら彼女はまだ懲りていないらしい。もっとキツイお仕置きが必要のようだな。


「ヒ、ヒィィィ。ままま、また貴方ですのっ!? し、仕方ないでしょうっ。わたくし、こ、これしかアバターが無いのですからっ……」


 俺の存在に今更気付いたらしく、アリスリーゼは驚愕に目を剝きながら思いっきり後ずさっていく。


 ……コイツ、ホントネージュ以外視界に入らねぇのな。


「そんな事情なんざ俺が知るかよっ。はぁ、もういいからさっさと失せろ」


 本当ならばここでキッチリお仕置きをしたいところであったが、生憎と今は時間が無い。俺はシッシと手を振ってアリスリーゼを追い払おうとする。


「っ!? み、見てなさい、雪音! 今度こそわたくし達が勝たせて貰いますわ! その為にとっておきの秘策も用意したのですから、覚えてなさい!」


 かなり及び腰になりながらもそれだけ捨て台詞を吐いてから、アリスリーゼは足早にこの場から去って行った。


「……秘策ねぇ。まあ何か知らんがもし大会であいつ出会ったら、絶対にボコボコにしてやる」


「はぁ……あんたって、あの子の前だとホントキャラ変わるわよね……」


「今のイツキ、ちょっと怖い」


 見ればルクスとヴァイスの2人がかなりドン引きした表情をしている。これは少しミスったな。


「あーすまん。なんかあいつの姿を見てると、妙に血が騒いでな……」


 なまじソルの恰好をしているだけあって、琴線に触れてしまうのだろう。どうか許して欲しい。


「さて合流場所へ急ごう。リーゼのせいで無駄な時間を食ってしまったからな」


 それから更に急ぎ歩く事しばし、どうにか無事バラ―ディアと合流を果たす事が出来た。


「悪い、ちょっと遅くなったな。なんか変な奴に絡まれちゃってな……」


 アリスリーゼが居なければ約束の時間に間に合っていたはずなので、なんもかんも全部アイツが悪い。


「なに構わぬよ。わしも今来たとこじゃからな」


 この会話だけを抜き出せばちょっと恋人っぽい感じだが、実態はゲームの大会の待ち合わせだ。色気も何もあったものじゃない。


「皆はちゃんと眠れたのかの?」


「ああ、そっちはどうだ?」


「うむ。緊張には慣れておるからの。ぐっすり眠れたわい」


 ……やっぱ、こいつ絶対俺より年上だよなぁ。


 なんというか仕草や言動に大人の余裕が感じられるのだ。もっともそれは俺が歳の割に余裕が無い人間だからそう思うのかもしれないが。


 ◆


 バラ―ディアと合流を果たした後、俺達はイベントのメイン会場となるこの街最大のコロッセオへと移動する。


「やはり中も人で一杯じゃのぉ……」


 観客席まで含めれば軽く5万人は収容できそうな広さだが、それでも中はプレイヤー達で溢れていた。


「開始時刻までまだ時間はあるから、もっと増えると思うぞ」


 今日は木曜日で平日である為、社畜プレイヤー共の多くは今頃慌てて帰宅しているはずだ。予選は20時に開始されるのでそれまでに間に合えば良いのだが、だとしても十分大変だろう。社畜根性丸出しだった頃の俺なら絶対に参加できなかったはずだ。

 一応、予選に間に合わなくとも、パーティメンバーが勝ち抜きさえすれば本選に出場する事は可能だ。だとしても明日も平日な上、終了予定時刻は明け方頃であるためやはり社畜の参加は厳しいと言わざるを得ない。どうしても参加したい社畜は有給を取る必要があるが、急な日程発表のせいでそれも難しい。


「ホント嫌がらせみたいな日程よね。運営は何考えてるのかしら?」 


「だな。この日程決めた奴はクビにして欲しい、いやマジで」


 などと他愛もない雑談をしていると、気が付けば時刻は19時を回っていた。


『会場にお集まりの皆様方! これよりクリスマスイベント『聖なる夜の武闘会』の開催を宣言致します!』


 いつに間にか舞台の中央には白サンタコスを着た女性が立っていた。ゆるふわな白のロングウェーブヘアとその内側に浮かんでいる笑顔が、柔らかい雰囲気を醸し出している。初めて見る姿だが運営の専用のアバターか何かなのだろうか?


『会場の皆! 今夜は盛り上がって行くぜぇ!』


 そしてその隣には赤色のサンタコスを纏った女性が立っている。ただその色はオーソドックスな赤というよりはどうも血みたいな色合いだ。加えて髪は漆黒のストレートロングに妙に色気のある表情をしているせいか、悪女っぽい雰囲気を感じる。

 だがいざ口を開けば今のように案外軽いノリをしているようだ。こちらの顔はどこかで見た事あるような気がするのだが思い出せない。まあアバターやNPC、モンスターなどの種類がこれだけ増えた今となっては、似たようなデザインのキャラがいても別におかしくは無いだろう。


『イベントの司会進行を務めさせて頂きます、わたくしツヴァイと申します。皆さまどうぞよろしくお願い致します』


『同じくドライだ。宜しくな!』


 見た目も色も何もかも異なる2人だったが、どちらも魅力的な美女である事には違いない。プレイヤーの男女比は相変わらず男性が多い事もあり、この場は2人の登場によって一気に盛り上がりを見せる。


 ……なんとも単純な事で。まあ雰囲気が悪いよりはマシなんで、別に構わないんだけどさ。


『それじゃあ、早速ルール説明に入らせて貰うぜ!』


『事前に運営から告知がありました通り、予選は約200チームによるバトルロイヤルとさせて頂きます』


『そこで勝ち残った2チームが本選出場って訳だな! 皆頑張ってくれよ!』


 最後に確認した時から、また出場チームの数が増えていたようだ。予選は全16試合なので、単純計算で16×200×5=16000人が大会出場予定という事になる。人数不足のパーティや登録だけして試合に間に合わないパーティもあると思うので、実際の参加者はもうちょい少ないのだろうが、にしても十分凄い数だと言える。初の対人戦イベントという事で参加を尻込みしたプレイヤーも多いかったようだし、それでなくとも告知がギリギリ過ぎてイベントの存在に気付けなかったプレイヤーも多かったはずだ。にもかかわらず、これほどの参加者を集めるとは只々驚きの一言である。


 その後も2人の紅白サンタの司会から、大会に関する様々な説明事項が語られていく。その中でも重要な点だけを抜き出せば大体以下のような感じだった。


 まず予選に関してだが、その試合会場にはLLサイズのフィールドが使用される。そしてそれがどのフィールドなのかは、実際に現地に飛ばされるまでは伏せられるそうだ。

 試合形式はいわゆるバトルロイヤル方式で、時間制限は存在せず、生存チームが残り2つとなるまで延々と戦い続ける事になる。その際チームメンバー全てが健在である必要は無く、たった1人であっても最後の2チームに生き残れば本選出場が決まる。また試合開始地点についてだが完全にランダムらしく、例えチームメンバー同士であってもバラバラに配置されてしまうらしい。なのでいかに素早く仲間と合流を果たすかが勝負の鍵となると思われる。


 予選及び本選の各試合は実況中継がされるので、ライバルとなるチームがどのように戦うかを観察する事が出来る。しかし使用するアバターについては、各試合毎に変更しても構わないらしくその辺で読み合いが発生するようだ。


 そして本選の試合形式は、5vs5の1ラウンド制のデスマッチだ。こちらも予選と同様に制限時間は存在せず、どちらかのチームが全滅するまで勝負は続く。試合会場にはMサイズのフィールドが使用され、その詳細は予選と同様に開始まで伏せられる。また一部例外を除いて一度死んだ時点で試合復帰は不可能となる為、本選ではいかに敵チームの数を先に減らすかが重要となる。敵の穴を見つけだしそちらへと火力を集中させるような立ち回りが要求されるだろう。


「うむ。一番懸念していたリスポーン戦ではなくて、まずは一安心だな」


 今回は一番オーソドックスなスタイルであるデスマッチが選ばれたが、対人戦には他にも様々な形式が存在する。制限時間内のチーム全員のキル数の合計を競い合うリスポーン戦。チームのリーダーをどちらが先に倒すかを競う大将戦などだ。更に人数が増えれば、攻城戦や占領戦、ポイント戦などの変わったルール形式も存在するが、1パーティ単位で行う事はあまり無いのでここでは割愛する。


 そして準備時間が少なかった俺達は、1ラウンドデスマッチに絞って対策を練っていた為、それ以外の試合形式がもし選ばれていたら計算が狂うところであった。

 特にリスポーン戦の場合、死んでも僅かな待機時間を置いて復活出来るという仕様上、デスマッチとはまた異なる立ち回りが要求される。デスマッチならば数が減る程に不利になる為、基本的には死なない事が第一に優先されるが、リスポーン戦の場合は敢えて敵陣へと突っ込み死を覚悟して時間稼ぎを行うなど、異なる立ち回りが必要となる場面が多いのだ。その辺は特にモンスター戦とは勝手が大きく異なる部分である為、対人戦初心者であるバラ―ディアがたった1日で対応するのは流石に無理だと判断したのだ。せめて大将戦ならば隠形に秀でた彼女をリーダーに据える事でまだどうにかなるのだが、リスポーン戦についてはどうしようもなかったので、この判断は正直賭けでもあった。


「ただ予選が全員配置バラバラでスタートってのいうのは、ちょっと想定外よね」


「うむ。作戦の練り直しが必要となるな」


 当初はヒーラーを多めに入れて、ともかく生き残りを重視したパーティ構成にする予定だったが、それは御破算となってしまう。なので予選開始までに、各人が使用するアバターについての再検討が必要となったのだ。


 司会2人の説明が終わってから、俺達は会場の端へと移動して急遽打ち合わせを行う事にした。俺達のチームは予選第1グループに振り分けられた為、試合開始までもうあまり時間が無い。


「パーティとしてのシナジーを考えるよりも、個々の生存力を重視した方がいいかもな」


「うむ。確かにイツキ君の言う通りだな。であればバラ―ディア君はベルフェゴールで確定として、他はどうすべきか」


「うーん。なら、俺は水着ソルを使うかな」


 アシストスキルの発動条件が厳しく、自己回復手段が安定しないのが少々不安ではある。だがそれを補って余りある機動力があのアバターには備わっている。

 当初は普通のソルを使う予定だったのだが、あのアバターは単独行動にはあまり向いていないので断念した。そしてそれは黒サンタソルも同じ事だった。俺の所持しているアバターの中でもっとも単独行動に向いているのはカボチャソルなのだが、俺がハロウィンイベントの際に少々やり過ぎてしまったせいで、下手をすると集中砲火を浴びてしまう危険がある。

 俺が水着ソルを選んだのは、そう言った諸々の事情を考慮した上での判断であった。


「ボクはメタトロンを使う」


 ヴァイスにはナイト以外のクラスを使う気は無いので、必然ミカエルとの2択となる。多分どちらを選んでもそう大差は無いと思うが、メタトロンの方がやや自己回復力に優れている点や、光属性であり明らかな苦手属性を持たない点などが決め手になったと思われる。


「無論、私はアマテラスを使わせて貰うぞ」


 ネージュは一部を除いたほぼ全てのSSRアバターを所持しているので、本来俺達の中では一番アバターの選択肢が多いはずなのだが、頑としてアマテラスを使うと言い張って譲らなかった。あのアバターは和装好きの彼女にとって待望の和服SSRアバターという事もありどうやら相当気に入っているらしい。まあ俺自身もソルしか使わないので、その我儘をあまり強く批判出来る立場には無い。ただ俺の場合はソル以外のSSRアバターを持っていないとやむを得ない事情があるので、どの道ソルを使うしか選択肢は無いのだが。


 ……まっ、もし他のSSR持ってても、どうせソル以外は使わないけどな!


「ナイトかモンク辺りを選んだ方が無難だとは俺も思うけど。でもまあ別にいいんじゃね? 使いたいアバターを使った方がやる気が出るだろうし」


 アマテラス自体も別にソロ性能が低い訳ではないのだ。一応自己回復手段は持っているし、最悪でも天岩戸内に引き篭もってしまえば、大抵はなんとかなると思われる。


 そんな訳でネージュが使うアバターも決定し、残りはルクスだけとなる。


「……このままだとヒーラーが0になるし、だったら私はオシリスを使おうかしら」


 全員が生きて合流するのは難しそうだが、かといってもしそれが成功した場合に、ヒーラー無しというのは少々バランスが悪すぎる。オシリス自体のソロ性能はイマイチだが、生存能力だけならばまあまあ高い方だ。そもそもソル以外のSSRクレリックがオシリスしか存在しない以上、ヒーラーを入れたいならば他に選択肢は無いのだ。


 という訳で、各人が使用するアバターは以下のように決定した。


 イツキ   :[ビーチの女神]ソル     属性:水 クラス:ウィザード

 ネージュ  :アマテラス         属性:火 クラス:ウィザード 

 ルクス   :オシリス          属性:闇 クラス:クレリック

 ヴァイス  :メタトロン         属性:光 クラス:ナイト

 バラ―ディア:[怠惰の堕神]ベルフェゴール 属性:雷 クラス:アーチャー


 遠距離寄りのパーティ構成は相変わらずではあったが、一応最低限のパーティバランスは確保出来ているはずだ。それに予選ではパーティプレイが許されるのは精々終盤だけだろうし、やはり最初の方針通り一番重視すべきは個々の生存能力であるのだ。そもそも全員SSRアバターなんてパーティは多分全体で5%もいないだろうし、流石にこれ以上を望むのは贅沢というものだろう。


 それぞれの使用アバターが決定し、それからいくつか試合に関する事柄を確認していく。特にチームがバラバラにされた事で、仲間と合流する為の行動指針は必要だ。その辺についても話し合っておく必要がある。


 そうして一通り打ち合わせが終わってから間もなく、ついに予選開始のアナウンスが流れる。その声の指示に従い俺達も指定された転移魔法陣へと移動する。


「さて、そろそろ試合開始だ。皆準備は良いか?」


「うむ。わしは基本消えておくので、敵を倒すのはお主らに任せるのじゃ」


 実際、バラ―ディアが姿を晒してしまえば、下手をすれば一瞬で死にかねないので、そうするのが俺も無難だと思う。何より今の段階で彼女を余り目立たせたくは無いのだ。

 なんてたって彼女はうちのチームの隠し玉だからな。ここぞという時に彼女には存分に活躍して貰う予定なのだ。


『それでは皆様、これより予選第1グループの試合を開始致します』


『皆、参加するプレイヤー達の応援を宜しく頼むなっ!』


 ツヴァイとドライ、2人の紅白サンタ司会のそんな台詞を聞いたのと同時に、俺達の足元の魔法陣が輝き、戦場への転移が始まった。


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