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2 北条吉乃は諦めない(後編)

 月日は流れ季節は秋となった。

 街路樹は紅く色づき始め、時間が否応なく流れる現実に侘しさを感じてしまう。


 伝手の限りを調べ尽くしたがいまだ先輩の足取りは掴めておらず、私はただ無力感だけを募らせてばかりいた。


「……そういえば、先輩の両親が亡くなったのは去年の今頃だったのよね」


 直接会った事はおろか顔すら知らない人達ではあるが、亡くなった事であれほど先輩を悲しませた人達なのだ。きっと良い人達だったのだと思う。ただその事に対する実感が私には無いのもまた事実なのだ。せめて葬儀に出席さえ出来ていればまた違ったのかもしれないが、先輩はそれを許してはくれなかった。


 つらつらとそんな事を思っていると、ふとある考えが頭に浮かびあがる。

 しばらく悩んだ末、私は七海へと電話を掛ける事にした。


「こんにちは吉乃さん。樹様の消息について何か分かったのですか?」


「今日はちょっと違う話なの。ねぇ、七海は先輩の御両親のお墓参りには行った?」


「いえ。……そう言えばもうすぐ1周忌なのですね」


 私だけではなく、会社の関係者は誰一人として先輩の御両親の葬儀には出席していない。先輩は社長にすらその事実を全てが終わるまで隠し通していたのだから。

 だから七海も私と同じくあまり実感が湧いていないのだと思われる。


「お墓の場所くらいなら調べられると思うの。ねぇ一度行ってみない?」


 いくら先輩でもお墓まで隠すような真似はしないと思う。というか流石に無理だろう。


「そうですね……。是非ご一緒させて下さい」


 先輩の両親である以上、義理の両親になるかもしれなかった人達なのだ。例え一度も顔を合わせた事がなくとも、せめてそれくらいはしてあげたいと思うのだ。

 あるいは単に、先輩が一番辛かった時に何も支えてあげられなかった事への贖罪を、私自身が果たしただけなのかもしれないけれど。


 そんな訳で私は、先輩の御両親のお墓の場所を調べる事にした。幸いその場所はすぐに判明し、今度の休日に私は七海と2人でお墓参りに向かう事になった。


「……ここなのですね。樹様の御両親のお墓は」


 なんとも言えない表情で七海がそう呟く。そこにはまだ汚れの見えない真新しいお墓があった。


 ……先輩は親戚とかも居ないみたいだし、多分御両親の為だけに立てたお墓なのよね。


 誰にも頼ることなく一人でこれらを準備した時の先輩の心情が、私にはどうにも想像出来ないでいた。

 ただ私に頼って欲しかったと思い、そして当時の頼りない自分に対し悲しくもなるのだ。


「お線香の準備をお願いしていい? 私はお花を供えておくわ」


 七海は黙って頷き、また私も無言で作業を始める。


「それじゃあ、お線香をあげましょうか」


 蝋燭に火を灯しそこに線香を近づける。きちんと燃えたのを確認してからそれを香炉へと立てる。そして目を瞑り掌を合わせる。

 心の内で御両親の冥福を祈りながらも、とめどない想いが湧いて出て来るのを感じる。


 やがて目を開き、七海へと場を譲る。


「……それじゃあ、帰りましょうか」


 お祈りを終えた私達は、しばらく呆然とその場に立ち尽くしていたけど、ずっとこのままでは風邪を引いてしまう。

 意を決して私が七海にそう提案すると、彼女も曖昧に微笑みながら頷いてくれた。


 そうやってお墓を後にしようとした私の耳に、何か足音が近づいて来るのが聞こえてくる。

 不意にそちらへと視線を送ると、そこには――


「あ、あ……」


 ずっと私達が探し続けていた人物が、何食わぬ顔をしてこちらへと歩いて来る姿があった。


「……樹様っ!」


 驚きのあまり、口を開いたまま動けないでいた私を尻目にして、七海が駆け出す。


「んん? あぁ、七海ちゃんじゃないか、久しぶりだね。あれ……後ろにいるのはもしかして、吉乃なのか?」


 駆け寄った七海を軽く受け止めたまま、樹先輩が私の方へと視線を向けてくる。


「樹先輩ぃ……。ううっ、どうして黙って居なくなっちゃうんですかぁ……」


 先輩の顔を見た瞬間、これまでずっと押し隠していた想いが一気に弾けるのを感じた。

 顔の穴という穴から液体が止めどなく溢れ出てくる。きっと今の私の顔はぐちゃぐちゃなのだろう。

 だけど、そんな事なんてどうでも良かった。


「先輩っ! 先輩ぃっ!!」


 気が付けば私は先輩へと駆け寄り抱き付いていた。そしてただ子供のように泣きじゃくる。


「……これどうすればいいんだ、俺?」


 両側から2人に抱き付かれて身動きを取れなくなった先輩が、そんな事をボヤくのが耳に届く。

 けれどこんなにも私達を心配させた罰だと思って、今はこれくらい甘受して欲しい。


 そうして私達は気が済むまで先輩の傍で泣き続けたのだった。


 ◆


「……それで先輩。どうして会社を辞めちゃったんですか?」


 ようやく泣き止み少し落ち着きを取り戻した私は、先輩へとそう尋ねる。


「ああ、会社を辞めた理由か。まぁそうだな。無断欠勤を1週間なんて大ポカをやらかしちゃったからな。絶対に首になるだろうと思ったから、ならいっそ自分から辞めようかな、ってな」


「「……」」


 その答えを聞いた私は思わず絶句し、七海と顔を見合わせる。


「あ、あの、樹様! 祖父が首だとおっしゃったのですか?」


「うーん? ああいや、社長は別に辞めなくていいって言ってた気がするかな?」


「……では退職の必要は無かったのでは?」


 七海の至極もっともな疑問に対し、先輩が少し考え込む様子を見せる。


「うーん。でもさ、俺みたいな会社のお荷物を社長の一存で変に助けでもしたら社長の立場が悪くなっちゃうよね? それは流石に悪いと思ったからさ」


「いやいやいや。先輩が会社のお荷物って、そんな事ある訳ないじゃないですか!」


「そうか? 楽な部署に異動させてもらったし、実際それからは大した仕事を俺はしてなかったからな。それに何より俺みたいなやる気無い奴が社内にいると、他の社員に悪影響もあるだろうからな。それは流石にマズイと思ったんだよ」


 ……この人は一体何を言っているのだろう。


 確かに以前の先輩と比べれば、こなす仕事の量は各段に減っていた。けれど割り当てられた通常業務をきっちり果たした上で、仕事を引き継いだ人達へのフォローもしっかりと行っていたのだ。もしそれが無ければきっと私以外は仕事に押しつぶされていただろう。

 なのであの当時でさえ先輩の会社への貢献度は、そこらの社員よりはよほど大きかったようにさえ思うのだ。


「先輩は自分の功績について、過小評価し過ぎです!」


「そうですよ! 樹様のお力添えが無かったら我が家は一体どうなっていた事か……」


 七海もまた祖父である社長から先輩の貢献について話を聞いているのだろう。

 頼もしい援護射撃をしてくれる。


「……そういってくれるのは嬉しいけどさ。俺は自分の都合だけで吉乃や他の連中に仕事を押し付けて逃げ出した屑だぞ? その上、ゲームをやっていたせいで一週間も無断欠勤するなんて、組織の人間としてとても許される事じゃないさ」


 やはり先輩はあの時の事を凄く気に病んでいる様子だ。

 確かに突然の仕事の引継ぎで凄く大変な思いをさせられたのは事実だけど、先輩にも事情はあった訳だし、何よりちゃんと私が一人でやっていけるまでフォローは続けてくれた。むしろ今までが皆、先輩に頼り過ぎだったのだろう。

 それをちゃんと言葉にしようと思ったけれど、頑なな先輩の様子を見て結局辞めておいた。


 ……きっと今の私の言葉じゃ、まだ先輩にはちゃんと届かないから。


 七海も多分同じ事を思ったのだろう。何か言いたげで、でも言えないそんな様子だ。


「そういえば先輩って、何のゲームをやってたんですか? そもそも先輩がゲームをやるなんて、私初耳なんですけど?」


 少しおかしくなった雰囲気を変えるべく、私は先輩にそう尋ねる。

 少なくとも私が部下だった時代にはそんな話は聞いた事も無かったし、何よりそんな暇など先輩には絶対に無かったと断言出来る。

 私からすればゲームと先輩がイマイチ結びつかないのだ。


「……そうだな。一応、学生時代にも多少はやってたんだけどな。まぁそうだな、本格的にやり出したのはここ1年くらいになるのかな?」


 どうやら部署を移動して空いた時間を、先輩は全てゲームへとつぎ込んでいたらしい。相変わらず極端な人である。


「そのラグナなんたらってゲーム、面白いんですか?」


 ゲームなんて少ししか触った事がないけれど、先輩との接点を作るためなら手を出してみるのも悪くはないだろう。なのでそう尋ねてみる。


「わたくしも興味があります。教えて下さいませ樹様」


 すると隣の七海もすぐに便乗してきた。ここ数ヶ月で大分彼女とは仲良くなれたけれど、こういうちゃっかりしている所は、やっぱり少し苦手だ。かく言う私もあまり人の事は言えないのだけれど。


「へぇ、2人とも興味あるのか? なら折角だし場所を変えて話をしないか?」


 そう先輩に言われて気付く。確かに墓前でするような話では無かった。

 このチャンスを逃してはなるかと、私は少し逸ってしまっていたようだ。反省しないと……。


 そんな訳で3人で近くのカフェへと移動する事になったのだった。


 ◆


「樹様が好んでいらっしゃるそのゲームというのは、一体どのような内容なのですか?」


 七海は紅茶を一口飲んだ後、カップを下ろしてそう尋ねる。


「……そうだね。まず2人はゲームについて、どの程度知っているのかな?」


 私は携帯端末で出来るゲームを多少触った事があるくらいで、ほとんど知識は無い。

 そしてそれは七海もまた似たような状態のようだ。


 その事を伝えると、樹先輩は少し考え込んだ様子を見せたあと、おもむろに口を開く。


「……そうか。ならまずはゲームの歴史について、簡単に説明する必要があるのかな」


 それから先は先輩の独壇場だった。


「世界初の家庭用ゲーム機は、実は日本では――」


「テレビゲームと携帯型のゲーム、この2つが主流と――」


「一時は、携帯端末を利用したゲームが最大シェアを――」


「しかしVR技術の進歩によって流れが――」


「――そうして生まれたのが、ラグナエンド・オンラインという訳さ」


 仕事の説明をする際と同じ要領で、ゲーム初心者である私にも分かり易くその歴史について語ってくれた。

 しかしその時の先輩の瞳が、これまで見たことない程に輝いていた事に私は気付いてしまう。


「それでこのラグナエンド・オンラインなんだが、これがまた本当に凄いんだよ」


 そして現在先輩が嵌っているらしいゲームについて話題が移ると、その輝きは更に増していく。


「樹様は、よほどそのゲームの事がお好きなのですね」


 同じ事を思ったのか、クスクスと笑いながら七海がそう言う。


「そうだな。お蔭で大事な親友も出来たし、本当にこのゲームには感謝してるよ」


 先輩が元気になってくれたのは素直に嬉しい。だがその言葉の中に少し気になる単語があった。


「へぇ、先輩って友達いたんですか?」


 後から思えば少し失礼な物言いだった気もするが、その時の私は純粋な疑問からそう尋ねただけなのだ。

 だがそれが引き金となり、先輩から問題発言を引き出す事になる。


「いやー、恥ずかしながら実は今まで居なかったんだよな。だから多分、彼女達が俺にとっての初めての友達になるんだろうなぁ」


 先輩が何やら感慨深そうな様子で、そんな事を言っている。

 やはり私や七海は友人枠には入っていないのだなと少し落ち込む。けれどそんな分かり切った事実よりも、もっと聞き捨てならない内容がその言葉には混じっていたのを私は聞き逃さなかった。


「せ、先輩っ! その友達って……もしかして女の子なんですか!?」


「あ、ああ。3人とも女性だけど……それがどうかしたのか?」


 やはり聞き間違いなどでは無かったらしい。

 何てことだろう。私が先輩からしばらく目を離していた隙に、他の女の接近を許してしまうとは……。


「あ、あの樹様。その方達は一体どのようなお人柄なのです?」


「そうだなぁ。金使いの荒いお嬢様に、口調が少しキツイ女の子。それともう一人は無口だけど凄い出来る子だな。……たしか3人とも俺よりも年下だったはず……」


 年下か……。先輩は年下が好きなんだろうか? だったら私にもチャンスはあるのかも?


「そ、その方達は、お綺麗な方達なのですか?」


 などとお花畑な事を考えていたら、七海がかなり直球な事を尋ねていた。突然のライバルの出現に対し、彼女は彼女で大分焦りを感じているらしい。 


 ……私も他人事じゃないんだけどね。


「う、うん? そうだなぁ。まあ、全員綺麗と表現してまず間違いないんじゃないかな? 一人は正に大和撫子って感じの容姿だし、一人はなんかアイドルって言われても信じそうな見た目をしてるな。後の1人も眼鏡をコンタクトに変えておしゃれをすれば、なんか一気に化けそうな感じがあるしな」


 ……何これ。もうやめて先輩!


 他の女への賛辞を述べる先輩の姿を見るのが、まさかこんなにも辛いなんて思いもしていなかった。こんな光景なんて見たくない。それよりも私についてどう思っているのか教えて欲しいと思う。けれどもし先輩に酷評されでもしたら、いくら私でも立ち直れない気がする。


「そ、そう言えば先輩って今どこに住んでいるんですか? 電話も繋がらないし、マンションに行ってみたら引っ越しをしたなんて聞かされて、私凄くびっくりしたんですよ!」


「そうですよ樹様。私は勿論、祖父や父も大変心配しておりました。連絡が取れなくなったと気付いた時の2人の慌てっぷりは凄かったのですよ」


 ちなみに七海はその一件によって先輩の退職を知ったらしく、その事実を彼女に隠していた社長や専務に対しかなり激怒したようだ。


 ……七海みたいなタイプの子って、怒らせると結構怖いのよね。


「ああ……その件か。それは本当に悪かった。ちょっと事情があって急に携帯端末を変えなきゃならなくなってな。その時にちょっとトラブルがあって、連絡先のデータが全部消えちゃったんだよ……」


 どうやら先輩は意図して私達に連絡先の変更を教えなかった訳ではない事が判明し、少し安心する。


「では、新しい連絡先を教えて頂けますか?」


「あ、私もお願いします先輩!」


「ああ、それは構わないよ」


 という訳で無事に先輩の新しい連絡先をゲットする事が出来たのだ。


 ……これは物凄い収穫だと言えるんじゃない?


 だがそんな私のホクホク顔は、すぐにまた凍り付く事になる。


「それで先輩。今のお住まいはどちらなんですか?」


 肝心のその答えをまだ聞いていなかった私は、再度尋ねる事にする。


「あー、いや。すまん。それは言えない約束なんだ」


 しかし先輩はその回答を拒否した。

 プレイベートに関しては割と秘密主義な先輩の事だ。なのでそれ自体は十分予想の範囲であった。問題なのは私達に教えてくれない理由が、どうも先輩の意思に依るものではなく、別の人物の意思が絡んでいる様子である事だ。

 これはどうも怪しい。


「どういう事ですか? 約束って一体誰とのなんですか?」


 不穏な空気を感じた私は、思わず先輩へとそう詰め寄る。


「それはあい……いや、それも多分言わない方がいいんだよなぁ……」


「それはもしかして、樹様の御友人の方々の事なのでしょうか?」


 先輩が回答を濁すも、今度は七海の方から追及の手が伸びる。


「あー、出来ればその辺聞かないでくれると助かるかな。俺の一存で答えていいのか判断出来なくてね」


 先輩が少し目線を彷徨わせた後、曖昧にそう言う。そんな先輩の態度は七海の言葉が真実であると雄弁に語っていた。


 ……まさか先輩はその友人とかいう女達と同居しているの?


 信じたくはない話だけれど、これまでの話の流れからして、その可能性は結構高いように思われる。ここはなんとしても追及を続けたい所だ。

 同居している女と住所すら知らない女とでは、どちらが有利かなど明白なのだから。


「……さてと、そろそろ俺はお暇さえて貰おうかな」


 しかし、これ以上の追及は勘弁とばかりに先輩が席を立ってしまう。


 ……これ以上しつこくしたら嫌われちゃうわよね。


 なので、渋々ながらここは一旦引く事にする。


「2人ともうちの両親のお墓参りに来てくれて、今日は本当にありがとう。それと久しぶりに2人に会えて嬉しかったよ」


 そんな優しい言葉を先輩に言われたのは、もしかしたら初めてかもしれない。

 いや先輩はずっと優しかったのだけれど、それでも以前は明らかに一線を引かれており、自分の心情を語る事など決して無かった。


 こんな風に先輩を変えた友人とやらに興味が湧くと同時に、それ以上の嫉妬を覚えてしまう。


 ……何よ! 私の方が絶対に先輩の事を幸せに出来るんだから!


 先輩に纏わりつく女たちの影に対し、心の内で宣戦布告を行う。


「樹様、本日はわたくしも大変楽しい時間を過ごさせて頂きました。あの……また会えますか?」


 などと変な事を考えていたせいで、七海に先を越されてしまう。


「そうだなぁ。最近は何かと忙しいから、いつでもってのは無理だけど、早めに連絡をくれれば時間を作るよ」


「本当ですか!? 約束ですよ? では、また絶対にお誘い致しますね!」


「わ、私も誘っていいですか!?」


 この流れに乗り遅れてはなるものかと、慌てて私もそう叫ぶ。


「ああ、2人とも連絡を待ってるよ」


 にこやかにそう笑って見せた先輩の顔は、私の記憶の中のどの顔よりも魅力的だった。こんな素敵な笑顔を見せられたらどんな女性だって、いや男性さえも落ちてしまうのではと心配になる程に。


 去っていく先輩の後ろ姿を見送ってから、私と七海の視線が交差する。


「……吉乃さん。勝手に便乗しないで頂けますか?」


「何よ。私が誘ったお蔭で先輩に会えたんだから、感謝しなさいよね」


 そうして互いに睨み合う事しばし。


「……ねぇ七海。まずは先輩に纏わりついている女どもについて、私達は知らないといけないと思うの」


 七海と私は互いに先輩を争うライバル同士ではあるが、現状では2人とも出遅れた状況に置かれているようだ。

 ならば先頭集団に追いつく為に、今の協力関係はもう少し維持しておくべきだと私は考えたのだ。


「……そうですね。今は吉乃さんと張り合っている場合では無さそうですね」


 今回の一件、先輩と再会しその連絡先を手に入れたという意味では、とても大きな収穫だったと思う。

 けれど、同時に私達は新たなライバルの存在を知ってしまう。今はお山の大将争いなどに興じている場合ではないのだ。


 私は七海と無言で握手を交わし、これから先の展望に思いを馳せるのだった。


閑話1はこれで終了です。

他者視点から見たイツキについてはこれまでほとんど書いてなかったので違和感あるかもしれませんが、見る人によってはこんな感じだったりします。


明日は閑話2を投稿します。1話のみです。

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