9話 お勉強
久しぶりです。
宜しくです。
街が微かに動き始めた、その音を聞いて、俺は目を覚ました。
布団をどかし、上半身を起こした状態でぐぐっと、軽く伸びをする。
「くぁ」
小さく欠伸をして、さ、とベッドを降り、外着へと着替える。
そんなことをしつつ、今日の予定を考える。
まあ、今日の予定は、決まってるんだが。
………取り敢えず昨日のことについて話そう。
昨日は四階層まで行って疲れたから戻ったが、予定よりも少し早く帰って来てしまった。
余った時間は有効に利用しようと、ギルドへ行った。冒険者ギルドだ。
この組合、実は大陸に幾つか派閥があり、その内の三つが主要なものらしい。中でも一番大きなものがここのギルドも所属する、魔窟壊である。まんまな名前ですげーなと思った。これは一昨日おっさんから聞いた。
それは置いておこう。………まあ、俺が異世界人だということは言ってしまったから、この世界についての情報が足りない。とか、確実に常識が欠けているんだよ。どうしたら良いだろう。
そんな事をおっさんと話したら、じゃあ、教師でも雇ったらどうだ。なんて、まともな意見が出た。
そんな事で、俺は今日はここの常識、知識をもらいに行く。
相場は、一日10万から20万ガル程、らしい。今回俺は仲介料含め、22万支払った。
タルグ王も説明はしてくれたが、あれは足りない…。
まあ、こんな所で。着替えも終わって、少し早めの朝食を摂ろう。
くるっと、ドアに向かう。
※※※※※
腹をさすりつつ、宿の扉を出た。
ちと食いすぎた…。美味かったから良いが。
くふう、苦し。
ギルドへ向かって歩く。多分もう、準備出来てるよなあ。少し急ぎめで、せかせか歩いて向かう。
そうして、おっさんの前に着いた。
「よう。やっと来たか」
おっさんが口を開く。
「ああ。先生はどうだ?」
なんて返すと、
「いや、まだ着いてねぇ。そろそろのはずだが」
と、話す。
どうやら、相手より早く着いてしまったようである。
まあ、いいだろ。なんて、考えたすぐ後に、後ろから、声。
「すいません。遅れましたか?」
なんて。
女の声である。
「いいや。ちょうどいい。注文通りの時刻だ」
すぐにおっさんが言葉を返す。
それを聞いて振り返る。
ふむ。まあまあ、なかなかの美人さんである。俺より少し年上っぽい。
さらっとした青髪が、背の中辺りまであり、なかなか綺麗なことになっている。
まあ、何にせよ。
「あ、おはよ。今日はお願いするなー。」
と、さっきまでの調子を崩さず、挨拶をする。
そこで、相手の女の調子が少し崩れたらしい。
「あ、はい。っえと…シンさん、ですよね。私はセルス・ノートです。宜しくお願いします」
微妙な表情で、そう答えてきた。
そして、そこへおっさんが声をかける。
「ああ。昨日預かった金で、そこのテーブル一つ借りといた。そこでやってくれ」
おっさんが、そこといって指差したのは、ギルド内のテーブルが幾つも置いてある区域。
そこでは、冒険者たちが仲間集めや情報交換に談話をしている。
それで、そこのテーブルは金さえ払えば、借り切ることができるというのだ。
おっさんに感謝を表しつつ、そこへ向かった。
※※※※※
あの後10時間ほど勉強をした。
常識的なことを幾つか、幾つも?教えてもらった。
取り敢えず、時刻、時間のような事については、一日が25時間。一週間が六日の、一月が五週間。一年は十二ヶ月で、年の初めには世界が青い光に包まれるらしい。今は年が始まって二ヶ月ほどらしい。
まあ、そんな、常識みたいなところから(俺は知らなかったんだけど…)、こことか、他国とかの情勢なんかも教えてくれて、ためになるなあ、とか思いながら教えてもらった。
ただ、戦争とかの歴史の話やなんかになって急に饒舌になるのは、あれは怖かった。
勉強の休憩の合間に話してみると、乗馬とか、出来るらしい。かっけぇ。
まあ、そんな事で勉強も終わり、宿の部屋に戻って、ちと、考え事をする我、というわけである。
何を考えているのかといえば、タルグをどうするかについてである。冷静になって考えてみようかな、とか、思っちゃった訳だ。
まあ、普通なら、冷静になど、なかなかなれない。しかし、今の俺は、普通ではない。
元から普通でなかった可能性もないことはないが、昔を思い出せど、そんな記憶はない。十中七八は投擲のせい。
というか、これだけの力があって、この余裕の無い方がおかしいと思う。
いや、ま、それはどうでもいいが。
取り敢えず、冷静に考えて、ここまで魔獣の相手をしてきた目で見ると、魔王国を潰す、魔族を滅ぼそうとするのは、当然だと思う。なにせ、魔獣の容姿が酷すぎる。だが、今のところ、魔王国の総戦力は見えていないようなのだ。
その上でそれが攻めてくるとなれば、戦力を他に縋るのも仕方ないし、余裕が無いのも仕方ないと言えるかも知れない。
許せるかどうかは別としても、まずは魔獣と魔族を止めて、奴はどうするか見てから動くのも悪くはない、なんて。
あーあー、やべぇな、俺。
続きは後で考えよう、なんて、夕食を摂りに、部屋の扉に向かう。
では、また次回。