8話 迷宮の中身
更新、遅くなりました。
楽しんでくれると嬉しいです。
街の門を出て、ダンジョンへの道を歩く。もう、この道にも慣れてきて、新たな刺激が欲しくなる。
……早く王都からぐらいは離れたいのだが。宿の飯が旨すぎるのが悪いんだな、うん。
考えつつ、歩く。
あー、そう云えば……どう云えば?まあそれはいいや。それで、アルマってのはどのくらいまで潜ったんだろ。
っつーか、あの迷宮の底って何層なんだろ。まあ、結局、俺には関係の無い事だが。
………………………………………。
はあ…。仕事とは言え、迷宮へ行くの、やだなぁ。あの魔獣共、気持ち悪いし。……。はっ。だからあのタルグ王は俺たちを呼んだのか。
あんな気持ち悪いのと戦う仕事に人気があるわけが無いしなあ。
…………。あいつがあまり悪い奴だとは思えなくなってきたな…。
考えつつ、ゆるゆるふらふら歩くうちに、迷宮に着いた。
仕事とは言え、嫌で嫌で仕方ない。だからこそ、気合いを入れようと少し深呼吸をする。
迷宮への階段を下る。
中は光の魔法が込められた魔石に照らされているものの、足下は危うい。
まあ、暗視のある俺には関係ないが。
いつものギルドの様子から考えれば、ここには相当の人がいるだろうが、歩いてみると、そう多くは見えない。
ただ、マップを使って見てみれば、この一階層だけでも相当広く、さっき気になったから深さも見てみたが230階層あるので、それは当然とも言える。
歩いていれば、後ろで、たっ、と軽い音がする。
振り向いてみれば、小鬼(緑)が俺の頭を打ち砕きに掛かって来ていた。
「ふっ!」
それに直様、蹴りを入れた。こんな所で石を消費するのも勿体無いと思ったからだ。
しかし、足を振り上げ過ぎたせいで、股関節に激痛が走った。
ズボンは割に柔らかめで破けなかったから良かったが。
ぐくああ。と、声を上げそうになるのをやっとで抑えつつ、左足の付け根を抑えて蹲った。
慣れないことは、するものじゃないな。心から思った。
幸いに、1、2分で回復してくれ、魔石を拾いつつ、冒険を再開することができた。
因みに、痛みに悶つつも、何かはしようとステータスを覗いたら気配察知のスキルが増えていた。あと、股関節軟化。後者いらねぇ…。とか思ってたら、ついでに、スキル消去が増えた。でも、魔法適正0のお陰で使えねぇよ。
※※※※※
あの後も粘水球やらと戦いつつ2階層へ到達した。
ここには、吐火花がいるわけだからなあ、注意しなければ。
考えつつ歩けば、やはり、居る。
前回は、どんな動きをするか見ておきたかったから近付いたが、服を燃やされかけたからな。
ここから、石を、投げる。
「よ」
今回は瞬弾を使った。
奴の姿はさあっと消えて、薄い青色の石が、そこへ落ちる。
ゆったりと近付いてそれを拾い上げ、歩くのを再開する。
幾らか3階層への階段に近くなる。
そんな辺りで、粘水球が、5体程群れていた。
取り敢えず蹴って散らすと、そこには、人の残骸があった。
服や皮膚なんかはどろどろに溶けていて肉や骨が見えている。左足の腿から先はなくなっていた。
迷宮に入ってもう三日目だが、こんな状態になった人間は初めて見る。
気持ち悪いぃ。昨日見た豚人の、レベル一つ下ってくらいにはっ。
だが、冷静になれてきた。一日目を思い出したら。
いつの間にやらできていたスキルで、生死を確認する。一応ね。
……………………………………。
まだ生きてる。うわあ。
しかしここまでは、意識がないのか、喉をやられたのかで、返事はなかった。
これは、どうなんだ?殺してしまったほうが楽なのか?
回復魔法も、今手に入れはしたが使えないし。この広いところで、回復持ちに会う、なんて方が、難しいよな。
………………………ふう。
殺してやるよ。
投擲。塵弾。
石が当たって、誰かさんの体は、塵になった。
「うぐ」
はあ、あ。
気を取り直して、と。
塵に埋もれた魔石を拾いつつ、歩を進めた。
※※※※※
昨日やっと到達した3階層、さっき到達した。
魔獣の容姿が気持ち悪いという思いは変わらないが、それに少しは慣れた。
そのおかげか、進む流れも速くなってきた。
やはり慣れは大事だ。
と、考えて歩くと、またも魔獣が現れた。
またも、と言ったのは、さっきも出たからである。
3階層になると、魔獣に出会う頻度が高くなるのだ。
今回出会った魔獣は、巨蛭。名の通り、でかい蛭のような魔獣だ。
昨日見た豚人の三倍くらい気持ち悪い。しかも多い。
豚人のが1なら、こいつ5って位の頻度。
あと、足が生えてるんだよ、この蛭。なんか異様に移動速いし。
50メートルを10秒で走れそうなくらいに。
まあつまり、近付かせないのが、良。
投擲。瞬弾。塵弾。
よっと。
ふう。いい感じ。
たた、と、小走りで近付き、魔石を拾う。
紫と茶色を混ぜたような、濁った色をしてる。
顔を上げると、すぐ先に蛭を見つけて。息を吐きながら立ち上がった。
※※※※※
くおお。
来た。やっと4階層だ。
さっきの階じゃ、巨蛭、豚人、時々小鬼と大量の魔獣が居て、進み難いったらなかったが、着けた。
時間的に、ここ一回りで今日は仕事終わりかなぁ。
なんて考えて、どんなもんだろうと辺りを見てみると、丈の高い草が歩いていた。
1.5メートル位あるな。
もう、驚きはしないが。
それほど気持ち悪くもないから、どんな物なのかと近付く。2、30メートル離れた所で見ていると、草から水の玉が俺に向かって飛んできた。
軽く横に避ける。
水魔法を使うらしい。それだけ分かれば充分。
投擲。瞬弾。
ほい。
石はきちんと草に当たり、草の姿は消える。後には魔石が落ちている。
たた、と駆け寄り、それを拾う。
仕舞おうとする、が、謎の違和感のためにそれをせずに鑑定する。
結果、魔石(水)、と出た。
つまり、(多分)水魔法が込められている訳だ。
使ってみると、5リットル程の水が出て、魔石は砕けた。
………………………………………………………。喉が渇いたときに、便利だね。
とか思いつつ、5階層を回り始める。
ふう。
……。うん。
この階層にはさっきの草、貯水草しか居ないらしい。
しかも、全て水が込められた魔石しか出さないから、すごく無用って感じ。
うーん。
まあ、仕方ないな。こういう事もあるってことで。
帰るかぁ。