表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
投擲の勇者  作者: 不死身の倫理
1章
14/17

7話 勇者についての談議

更新遅れてすいません。


今日も、早くに起きてギルドに来た。すると、中がいつもより大きく騒がしい。

思い返してみれば道中見た人も、なんだかテンションが高かったように思われる。

む、おっさん見つけた。

ごたごたした人波を分けて、そこへ歩く。

ダンジョンへ潜る事で擦り減った靴が、一足ごとに、安物のスリッパみたいな音を立てる。

人足の多いこの建物の中を、一気に縦断する。

そしておっさんの前で、きゅっと止まる。


「よ。おはよ」


やはり、朝の挨拶は大切だと思う。このおっさん、いつも気だるげだし、眠たげだしな。

おれがそうして目の前に立ち、挨拶をすると、恨みがましそうな眼をして、俺を睨んでくる。

しかし、そうしながらも、対応はするようで。


「ああ。今日はどんな御用で?」


なんて、わざと丁寧な口調で、煽ってくる。………ふむ、新しいスタイルだな。このおっさん、日々進歩している…。切磋琢磨しよう…。というかまあ、違う分野ではあるが、俺も進化せねばな。

っと。少し考えごとの時間が長かったか。もう既に、うとうと来てるぞこのおっさん。


「ええとだな、まあ、質問だよ、質問。それにしたって、知らなければ答えてくれなくてもいいようなことなんだがさ」


一息置いて。


「なんだか今日は、街の人々の様子がおかしいんだが、どういうことなのか、知らないか?」


言うと、おっさんは驚いたような呆れたような顔をして。


「おいおい、聞いてないのか。いいか、そいつはな、昨日の夜にダンジョンから勇者様が帰ってきたからだよ。結構深くまで潜ってきたらしい。お前も少しは他の勇者のことを気にかけた方が良いんじゃないか?」


…………………?

勇者?奴らがダンジョンに潜ったなどという噂は、一度として聞いていないぞ。

どういうことだ?


「っと、勇者って、あの召喚勇者たち、もうダンジョンに潜ったのか?」


少し、動揺が混じってしまったが、仕方あるまい。少し驚いてしまったのだから。

するとおっさんは馬鹿にしたような感じで話してくる。


「は。そんな、なんの功績も無ぇような奴らに、俺が様付けなどするわけ無ぇ。俺が言ってるのは、この国で五指には入るであろう勇者様、アルマ·バーニアの事だ」


「………え?」


ちょっ、どゆこと?

あの中にそんな名前のやつがいるとは思えないし…、この世界の人物と捉えていいのだろう。しかし、ここにも勇者はいるというのか。ふむ…。


「いや、すまん。俺、あまり勇者のこと詳しくないんだわ。ちと、教えてくれないか」


少し落ち着いた言葉を返す。

ここで取り乱しちゃ、いけないだろ。


「え、お前勇者だろが、知ってて当然じゃないのか」


軽くそんなことを返してきやがった。

く。少し悔しいな。

そんな俺の考えを置いて、おっさんが話し始める。


「つまりだな、神に選ばれた人間、勇者のうちの一人である、アルマさんがダンジョンでの冒険から帰ってきたって話だよ。勇者のことについても、詳しく知らないんだっけ?」


おっさんがにやにやとこちらを見てくる。

少しいらっと来た。

それが表情に出てしまったらしい。


「なんだよ、そんな怒ったようになるなよ。ったく、勇者知らないとかどこから来たんだか。………。っと、そうだな、勇者ってのは、さっきも言ったが、神に選ばれし人間のことを言う。勇者と勇者でないものとでは、天と地ほどの差があってなあ。とにかく強ぇ奴らだよ。この世界の人間には、いつの時代にも4000人ほどしかいないが、な。だからこそ、勇者は重宝され、魔族の領は統一できない。……そんなことで、他の世界から人間を召喚するんだ。そこから来た人間は、皆、勇者だからな。別にそれを悪いと思う訳じゃ無えが、呼んだ人間はいつも浮かれ気味で、調子に乗ってて、すぐに死んじまう。いつの世もそうだと聞いてる。と、ここまでが一般常識か。」


思い出す感じで話を始め、途中、哀れむような表情になり、いつもの調子に戻る。

おっさんは、少し考えるそぶりをしてから、話を再開する。


「本当にここまで知らなかったんだとしたら、お前はまともな教育を受けてないか、本当の辺境から来たか、召喚勇者か、だろう。俺にはこれくらいしか思い浮かばないんだが、どうなんだ?結構、気になるところじゃあ、あるんだ。しゃべっちゃあ、くれねえか。別に、言いふらそうってわけじゃねえ」


少し、いや、明らかに大きく、動揺してしまっていた。

しかし、このおっさん、本当に興味が本意のようだ。

そう分かった根拠は、今さっき、読心術が発現したからだ。

まあ、それであれば、話さない理由もないか。

俺は、ほんの気持ち、小声になって話す。

……ここは煩いし、誰が気付くという訳でもないが、こういうのって、気分だろう。


「なかなか、普通くらいの洞察力を持ってるな、おっさん。答えを言うと、俺は召喚勇者だよ。他の世界から来た。それくらいで、他には、大して言う事も無いかな。んと、ああ、そうだ。勇者についてのこと、教えてくれて、ありがと。また、夕に来る。じゃあな」


勢い付けて、それだけ言ってしまうと、おっさんに背を向ける。玄関から入る朝日は、少し、目に厳しい様に感じる。


「ま、気ー付けて、頑張って来い」


後ろからかかる言葉に、「あいよ」と答えて、外へと向かう。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ