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あれから私は、何故か竜の寝床亭で働きながら、あの兄妹のことを見守っていた。
泊まりに来る傷ついた冒険者達を有料で癒しながら、私はお金をコツコツ貯めていた。神官なのに金取るのかよという言葉は全無視である。神殿で治療するより格安なのに、文句を言われたくない。ちなみにあの兄妹は無料で癒している。
短い間でも仲間だったから、サービスしているのにジェイクは恐縮して毎回お金を支払おうとしているが、私は毎回断っている。
「いつもすいません」
ジェイクはそう言って、やっとお金を引っ込めた。
「遠慮しなくていいよ。短い間でも仲間だったんだから」
「・・・今でもそう思ってくれてるんですか?」
「今でもそう思っているよ」
「ならまた一緒に冒険しませんか?」
「ジェイク・・・」
「まだ妹と2人っきりで冒険してるんです。リエラさん、また手伝ってくれませんか?」
その言葉に弱いのを知ってるくせにずるいなぁと思いながら、私は頷いた。
「え!?いいんですか!?」
「そのかわり、あまり危険じゃない依頼なら、いいよ」
「ありがとうございます、リエラさん!」
私はジェイクから、差し出された手をギュッと握った。
そうして私はまた、冒険者ギルドへ行った。