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アベルの青い涙  作者: 天野 七海
17/25

十七話 霧の中のバーニャ

 ニコールの故郷を出発してから数時間が過ぎた頃、快晴だった空の様子が変わり始めて雲行きが怪しくなってきた。


 やがて前方には薄っすらと霧が……。 そのまま先を進んだアベル達は、いつの間にか深い霧の中の迷宮に入り込んでしまっていた。

 ……これでは、全く前が見えないじゃないか。

 アベルはぐっと眉間にシワを寄せて目を凝らした。 しかし、目の前には真っ白い霧の壁。 その他には見える物など無く、仲間達の姿を目で追うのがやっとだ。

 景色で方向を特定する事が出来なくなった今、頼りになるのはニコールのコンパクトが示す方向のみ。


「みんな! ここの下よ!! 」


 ニコールの叫び声に誘われる様に、大鷹の群れは一気に急降下を始めた。

 何処まで降りても霧の壁が目前に迫り、息苦しくなりそうだ。


「あれっ?! わぁーーーー 」


 すると、嘘の様に霧の壁が途切れたではないか? そして、真下に広がっていたのは……。 密集した家々や、市場が続く繁華街だったのだ。それも、想像を絶するほどの見事な街並みだ。

 … …ここなら、何か情報が手に入るかもしれない。

  アベルは期待に胸を膨らませた。


 驚いた町の人々は、大鷹の姿を見るなり逃げ始めた。

 それも無理はないだろう……。こんなに大きな鷹の群れが現れれば、誰もが怖くなって逃げるのも当然だ。


 大鷹は、すっかり人気の引いた道端にアベル達を降ろすと、再び空へと消えて行った。


 町人達は物陰に隠れて様子を窺っているようだ。 そして……。 危険が無いと分かると、次々にアベル達の元へゾロゾロと群がる様に集まって来たのだ。


「驚かせてごめんなさい……。私達は怪しい者ではありません 」


 トニーは町人達に話しかけると、警戒されない様に両手を高く上げ、ゆっくりと近づいた。

 すると、町人達は恐る所か歓迎する様に歓声を上げ始めたのだ。

 手を叩いては喜び、市場に並ぶ食材をくれる物売りや、握手を求めて群がる人々。 まるで、それはお祭り騒ぎの様なごった返し振りだ。

 思いも寄らない歓迎振りに調子が狂ってしまうアベル達。 道を歩いて進むと、その後ろには町人達が列を作って付いてくる。


「何でしょう? この歓迎振りは? 」


 トニーが不思議そうに呟いた。


「いいじゃない、警戒されるより。 ……誰かさんの村とは大違いね 」


 ニコールはそう言うと、流し目でラミダスの方をチラリと見た。

 ラミダスは硬い表情を浮かべている。


「何かある。 これは警戒した方がいい 」


「私もそう思います 」


 スチュアードも警戒しているようだ。


「二人とも、そんな怖い顔しないでこれ食べなよ 」


 アベルは町人からもらった饅頭を美味しそうにほうばると、小さくちぎってラミダスとスチュアードに手渡した。


「私達……一体、何処まで行くのでしょう? 」


 心配そうにアベルに問い掛けるトニー。


「わかんない 」


 アベルは他人事のように返事をすると、そのまま饅頭に食らいついた。


「あのっ…… 」


 トニーが近くに居た男性に声を掛けた。


「どうかしましたか? 」


 男性は、とても機嫌が良さそうに答えた。


「どうして皆さんは、こんなに喜んでいるのでしょう? 」


「そんなの……当然じゃ有りませんか? 」


「えっ……?! 」


 益々不思議そうな顔を浮かべるトニー。

 男性が微笑んだ。


「こんなにめでたい日はありません。 あなた方は、これから宮殿へ行かれるのです。 そして、病に倒れた私達の王をお救いになられるのです 」


「えっっ!! 」


 仲間達は思いも寄らない住民の言葉に驚いた。 動揺した様子で思わず言い返すアベル。


「僕達、行かなきゃいけない所があるんだ! 王様を助けてあげたいけれど、先を急いでいるんだよ 」


 しかし、町人は全く動じる事は無く、穏やかな口調で言った。


「そんなに急ぐ事はありませんよ。 あなた方が王をお救いになる事は、もう決まっている事なのです 」


「えっ? それって、どういう意味ですか? 」


「それは、宮殿に行かれたら分かります 」


 思わせ振りに笑う住人。

 アベル達には全く意味が分からないまま、まるで狐につままれた様な気持で宮殿へ向かった。


 目の前に、高くて白い塔が姿を現した。 それは、太陽の光を反射させて煌びやかに光っていた。

 塔に辿り着くまでには丘があり、その丘に続く道の両端には王に仕える者達が住んで居るのだろうか? 塔と同じ色をした壁で作られた住居がびっしり建ち並んでいる。

 そこに住んでいる人達もアベル達の存在を知るなり列に加わり始め、やがて、長い、長い行列が出来上がり、押し寄せる様な人並みが宮殿へと迫って行った。


「私が王様を救います。 ですから今はこの方々に従いましょう 」


 仲間に声を掛けるスチュアード。


「そうよね。 この状態ではそうするしか道は無いわね 」


「そうだな 」


 ニコールはとラミダスが頷いた。

 そして、アベル達は遂に塔の入り口までやって来た。

 真っ白に艶めき輝く砦の扉は、まるでアベル達が来るのを待っていたかの様にひとりでにゆっくりと開き始めた。

 石畳の上に敷かれていたのは真っ赤な絨毯。 それは塔の形をした宮殿の入り口まで続いている。

 アベル達は絨毯の上に足を踏み入れた。 そして、宮殿のドアへと続く階段の下までやって来た。


 あっ!!ドアが開いた……!

 中にはどんな人が居るのだろう? お城なんて……昔読んだ絵本に出て来たっけ? でも……実際に見ると、凄い建物だなぁ……。

 好奇心旺盛なアベルは胸を躍らせた。


 すると、扉から現れたのは美しい姫。 ただ一人。

 姫は白く透き通った白い肌に茶色い瞳。 栗色の長い髪には真珠のティアラが輝き、絹の様に艶めく桃色のドレスは可憐に咲き誇る百合の花を思わせるほどの麗しさだ。


「遠い所、よくお越し下さいました 」


 姫は礼をすると「どうぞ…… 」と手招きをして、アベル達を城内へと招き入れた。

 建物内には、まだ赤い絨毯が続いている……。 それは、ずっと奥に置かれた玉座まで続いているようだ。

 その絨毯の両端には、家来たちが真っ直ぐな姿勢で整列して待ち構えている。


 姫は金色の玉座に腰を下ろした。 そして、にこやかに微笑んで言った。


「あなた方が来られるのを、ずっと待っていました 」


「姫様、僕達がここに来たのは魔王モロゾフを退治する為に手掛かりを探しに来ただけで、王様を助ける為に来たんではありません 」


 慌てて言い返したアベルに、姫が笑い掛けた。


「ここに来た理由など、どうでもいいのです。あなた方がここに現れて、お父様を助けて下さる事を鏡は既に予言していました 」


「一体、何の事だか分かりません…… 」


 皆が不思議そうな顔を浮かべた。


「それは今に分かります。そんな事より、早くお父様を診てくださらないかしら? 」


 姫が席を立った。

 スチュアードは姫に寄り添うと「私にお任せ下さい 」そう言ってお辞儀をした。



 姫に案内されたアベル達は、王が休む寝室まで来た。

 流石、一国の主たる者の寝床だという事もあり、広過ぎる部屋の中には大きなベッドが……。

 それだけでは無い。部屋に置かれた家具や絵画などは、どれも一級品ばかり。 物の価値が分からないアベルにも相当高価な物である。という事は一目で分かる程だ。 そんな事を考えながらベッドに近寄った。 すると、そこには白髪頭の痩せた老人が苦しそうに寝息を立てて眠っていたのだ。

 姫はしゃがみ込み、老人の手をそっと握った。


「お父様、この方が助けに来てくさいました。 もう大丈夫ですから安心して下さい 」


 目を覚ました王は涙を浮かべ、姫の隣に立つスチュアードの目の前に手を差し伸べた。

 スチュアードは服のポケットから霊泉を取り出した。


「どうぞ、これを飲んでください 」


 そう言うと、スチュアードは王の口元に霊泉を数滴垂らした。


「それは薬ですか? 」


「はい姫様。 このテラスの霊泉は、どんな病でも即座に治す魔法の薬です 」


「じゃあ……。 お父様は直ぐに治るのですね? 」


「はい…… 」



 しかし……。 しばらく待っても王の病状は全く変わる事は無かった。

 姫は、まだか?まだか?と、王の手を握り続けて回復を待っている。


「姫様……。 残念ですが、王様は病気ではないようです 」


 スチュアードの言葉を聞いた姫は、とてもがっかりした様子だ。


「そうですか…… 」


 ため息混じりに呟くと、姫は切ない瞳で王の横顔を眺めていた。


「驚かれない所を見ると、何か他に思い当たる点が有るのですね? 」


「えぇ、関係があるのかどうか分かりませんが、気になる事があります。 是非、皆さんにお見せしたい物がありますので、どうぞ、こちらへ…… 」


 姫は皆を別の部屋へと案内した。

 その部屋は薄暗く、至る所に置かれた置物や書物には薄っすらと埃が付いていた。

 姫は壁に沿って置かれた物の前まで行き、その上に掛けられた白い布を引いて見せた。 そこには大きな一枚の姿鏡が……。 しかし、その鏡の半分は錆びた様に輝きを失い、黒く濁っている。 そして、金色の縁取りには絡まり合う二匹の蛇が刻まれていたのだ。


「実は、これが原因じゃないかと…… 」


 姫はそう言うと、鏡の中の濁った部分を指さした。


「これは……さっき姫様が話していた鏡ですか? 」


「えぇ、これは先祖代々受け継がれてきた守護鏡です。 この鏡はこの国の平和を見守り、そして、邪悪な者からこの国を守り続けてきました。 しかし……お父様が倒れてからというもの、鏡は輝きを無くして黒く濁ってしまったのです。 そのせいなのか? 国を守る霧も年々薄くなり、いつしか空洞が出来上がってしまったのです……。 そんなある日、鏡に映りました。 大きな鳥の背に乗り、やって来るあなた方の姿を……。 その日以来、私は信じておりました。 皆さんが、この国とお父様を救ってくださるに違いない。と…… 」


 姫の話を聞いたスチュアードは、しばらく黙ったまま考え込んでいる様子。

 ようやく考えがまとまったのか? やっと、口を開いた。


「原因がわかりました 」


「それは、何ですか?? 」


 大きな瞳を見開きスチュアードを見つめる姫。


「それは、呪いです 」


「なっ!! 何ですって?! 」


「姫様、天界に存在するアレセイアの鏡は、モロゾフの呪いによって破壊されました。 天界に鏡が存在するのなら、地上に鏡が存在したとしてもおかしくはありません。 このまま呪いが進めば……やがてこの鏡も破壊され、この国も魔王の手に落ちてしまうでしょう 」


「……じゃあ、どうすればいいのでしょう?? 」


 姫の顔は青ざめ、落ち着きなくオロオロとしている。


「それは魔王を葬り、負のエネルギーを浄化するしか方法はありません。 私達はその使命を背負い、旅をしているのです。 ……姫様、モロゾフの居場所について何か心当たりは有りませんか? 」


 姫は黙ったまま、首を横に振った。

 二人の会話に耳を傾けていたラミダスが、弓矢の束から一本引き抜いた。


「……ピラティスは言った。 この矢を使って負のエネルギーを浄化しろと……。 この矢先にその力が有るのなら、この鏡も同じじゃないか? 」


 ラミダスは、矢の先端を鏡に近づけた。


「うっっ! 」


 どう言う事だ? 鏡の中の見えない力に引かれ、ラミダスの体が……。


「危ない! 」


 トニーがラミダスにしがみ付いた。 アベルとスチュアードもトニーの背に掴まり、必死に食い止めた。


 《……ドン!!》


 すると今度は何だ?? 鏡の力は跳ね返ってアベル達を突き飛ばしたではないか? 部屋の壁にぶつかったアベルが倒れた。


「痛たたっっ…… 」


 痛そうに腰を押さえるアベル 。


「大丈夫?? 」


「うん、ちょっと腰をぶつけただけさ。 でも…今のは何だったんだろう……? 」


 トニーがアベルに手を差し出して肩を貸した。苦笑いを浮かべながら起き上がるアベル。

 ラミダスは飛ばされた矢先を探しているようだ。スチュアードは鏡を覗き込んでいた。


「ん? これは……?? 」


 スチュアードが驚いた。 それは、鏡に奇妙な物が映っていたからだ。 普通の鏡であれば目の前の景色を映し出すだろう。 しかし、そこにはスチュアードの姿は映っておらず、薄暗い洞窟の様な風景と、誰かの後ろ姿が映し出されていたのだ。


  「どこだろう? ここは?? 」


 皆は不思議そうに鏡を覗いた。


「ねぇ、立っている人の目の前には湖があるわ 」


 ニコールに言われ、視線を凝らして見てみると、鏡の様な水面は、薄っすらと緑色に染まり細かく揺れていた。


「どうして緑色をしているんだろう? 」


「この湖の上に、緑色の何かが有るんじゃないのか? 」


 すると、画面が人物から遠ざかって広い範囲を映し出した。


「あれだ……あれが核に違いない!! 」


 ラミダスが叫んだ。 それは緑色に怪しく光る球体だった。 しかも、謎の球体は何の支えも無しに宙に浮かんでいたのだ。


「じゃあ、ここに映っている人は、モロゾフ……? 」


「そうね、きっとそうだわ 」


 アベルはゴクリと唾を飲み込んだ。 あの宿敵モロゾフが、鏡の向こうに映っている……。

 矢が共鳴するかの様に震え始めた。 ラミダスは震えを抑えようと必死に矢先を握り締めている。


 あっっ……!

 映像の中のモロゾフがゆっくりと振り返った。 その顔は怒りと殺意に満ち溢れ、真っ赤に燃え上がった炎の様な瞳が暗闇の中でギラギラと光った。

 映像はそこで終わった。

 アベルが急に胸を抑えてしゃがみ込んだだ。


「どうしたの?アベル?? 」


「……大丈夫?? 」


 隣に居たニコールが心配そうに顔を覗き込んでいる。

 アベルは鏡の中のモロゾフと目が合った瞬間、心臓を鷲掴みにされた様な激痛を覚えたのだ。 そして、それと同時に孤独感や恐怖心、そして憎悪といった感情が胸の中に溢れ出した。

 アベルは必死にそれらの感情を胸の中へ押し込めようと堪えた。


「ありがとう……もう大丈夫だから 」


 額から吹き零れる汗……。アベルは正気に戻ると、ゆっくり体を起こした。


 姫が鏡を覗いた。


「まぁ、黒い濁りが取れているわ! 何てお礼を言えばいいのかしら……。じゃあ……お父様は?! 」


 喜び声を上げた姫は、慌てて部屋を飛び出して行った。


 アベルが未だに深刻そうな顔を浮かべている。


「あの目を見たら、僕は吸い込まれてしまいそうな気分になって、急に胸が苦しくなったんだ…… 」


 呟いたアベルに、ラミダスも同調する様に頷いた。


「あぁ、俺も、ただならぬ気配を感じた。今まで、どんなに恐ろしい獣に出会っても感じる事が無かった、特別な何かを…… 」


 そんな二人の会話を聞いていたニコールが、飛びっきりの笑顔で明るく言った。


「あなた達、男でしょ? 何をビビっているの? とにかく、地下に大きな湖があったと言う事は場所を特定出来るはずよ! 」


 ニコールは早速コンパクトを取り出し、何やら忙しそうに操作を始めた。


 マリアは小さく縮こまっている。 きっとモロゾフの顔がよっぽど怖かったのだろう。 そんなマリアの様子に気が付いたトニーはマリアを抱き寄せた。 甘える様にトニーの胸に顔を埋めるマリア。

 スチュアードは、真剣な表情で鏡を覗き込んで何やら調べているようだ。


 その時、


 《バタン!》


 ドアが開き、再び姫が部屋に戻って来た。 その隣には年の離れた兄であろうか? 中年男性と一緒だ。

 その男性の姿は清楚で凛々しく、青色のマントを肩に掛け、黒い髪の頭上には金色の王冠が輝いていた。


「皆さんは父の恩人です。 本当にありがとうございます 」


 深々と頭を下げる姫と男性。


「じゃあ、王様の具合は良くなったんだね 」


「えぇ、とても 」


 姫が機嫌良く答えた。


「王様に、この鏡について聞きたい事があるんだ。 会えるかな? 」


 アベルの言葉を聞いた男性が、吹き出す様に笑った。 そして、黒く長い髭を指でたしなめ、ゴホン…と咳払いをした。


「私が、バーニャ国の王である 」


「えーーーー!! 」


 王の余りの変貌ぶりに驚き、思わず叫ぶアベル達。


「だっ、だって……。 さっき眠っていた王様は、真っ白な白髪頭でとても痩せていて、まるでお爺さんの様でした 」


 アベルは目をクリクリさせた。 その心境は狐か狸にでも騙された様な気持ちだ。 驚きは、素振りは違っていても他の仲間達も同じであった。


「あぁ、構わんよ。 実に正直な若者だ 」


 王はそう言うと大声で笑った。


「それで、そなた達は鏡について聞きたいと? 」


「そうなんです。 さっき、鏡に映るはずの無い景色が映ったんだ! 」


 アベルが興奮状態で答えると、王は鏡をじっと覗き込みながら話し始めた。


「この鏡は、私達の先祖が神様から授かった、それは、それは、大切な鏡である。この鏡はいつも私達バーニャの民を正しい方向へ導き、魔の手から守り続けてくれた。 ……神様はこの鏡を我らに託す時、こう言われたそうだ『たとえ世界が滅びようとも、お前たちバーニャの民は鏡の恩恵により一命を取り留めるであろう。 そして、その時、バーニャの民は人類の父となるだろう』と……。受け取った初代の王は、この鏡を奉り、国宝として扱ったそうだ。 それからと言うもの、鏡は世代交代の度に受け継がれ、私も先代の王から託されたのだ。 そして、時に鏡は、映した者の心を読む事がある。 きっと、先ほどそなたが見た映像は、そなたにとって必要な物だったのでは?」


「はい。 探していたモロゾフを見付ける事が出来るかもしれません 」


「そうか。 それは良い 」


 王とアベルの会話を聞いていたスチュアードは、とても信じられない。 と言った表情を浮かべていた。


「その話は本当ですか? 」


 思いも寄らないスチュアードの言葉に驚き、王は聞き返した。


「そなたは、何を根拠にそう思うのかね? 」


「はい、王様。 私は天界人である父を持つ者でございます。 父上はこう仰いました。 神は、人類の杜撰な姿を見て哀れみ、人間を正しい方向へ導く様に父上に仰せになられたそうです。 その印として、このテラスの霊泉が存在するのです 」


 スチュアードはそう話し、霊泉を王に見せた。


「その小瓶は、先ほど私が口にした物だな。 それは、何か特別な事をするのか? 」


「はい、王様。 この瓶の中に入っている液体には、人の心を慰め、病や傷を治す特別な力が宿っています。 そして不思議な事に、この液体は枯れる事が無く、まるで泉の様に湧き上がってくるのです。 そして……私達がここに来たのは魔王モロゾフを倒す為、その手掛かりを探しにここまで来たのです。 もし、王様が言われた様にこの国の人々が人類を正しい方向へ導くのならば、私達の旅や、このテラスの霊泉の存在に意味があるのでしょうか? 」


 確かにスチュアードの言う通りだ。 王とスチュアードの話しを合わせれば、神が二重に他の者に命を下した事になるではないか。

 ……どう言う事だ?? 王と姫、そして仲間達は不可解な問題に顔を顰めた。


「ねぇ、もしかして…… 」


 今まで黙っていたトニーが口を開いた。


「どうした? トニー 」


 尋ねるラミダス。


「あのね、思ったんだけど…… 。神様は天国の鏡が割れた時、この鏡も割れてしまって国が滅んだと思ったのでは? それで、私達に旅をさせる事を思い付いたのよ 」


 トニーの意見に納得の表情で頷くアベル。


「いや、違う。 父上がテラスの霊泉を持って地上に降りた時、モロゾフはまだ天使だった。 アレセイアの鏡が割れたのはモロゾフが魔王になってからだ。 時期が合わない 」


 スチュアードは腕を組んで気難しい顔をしている。


「たぶん、ここよ 」


 ニコールが会話を遮る様に言った。


「色々と検索してみたのだけど、何処も地下水源がある場所は面積が狭かったり、水の量が多すぎて空間が少なかったりと、条件に合わない所ばかりだった。 でも……ここは違うの。地面上では大して大きくは無いけれど、地下に途轍もなく広い空間が有るの。それに、他の場所に比べると出来てまだ日が浅いのが妙だわ 」


「それって、どういう意味? 」


 アベルの質問を聞いたニコールは、他の場所のデータを開いた。


「ほら、例えばここ。 ここは、出来上がるまでに10万年以上掛かっているのよ。 他の場所もそう。 だけど……問題の場所は、たかが数十年。 自然に出来たには不自然過ぎると思わない? 」


「うん……。 確かに変だよ 」


「そうでしょ。 じゃあ、もっと分かりやすくするわね 」


 ニコールがコンパクトの画面を立体で映し出した。

 王と姫は驚き、大きな目をパチクリしている。


「一体、そなた達は何者だ? 」


 そんな王に、ニコールが思わせ振りに笑い掛けた。


「王様、話せば長くなります 」


「構わん、話してもらおう 」


 王は皆を客間に招き入れた。

 その部屋に入ると……。召使い達は王の姿を見るなり驚き、慌て始めたではないか。

 王の周りに群がる召使い達。 王は、そんな召使い達の肩を叩いて笑顔を見せた。 感激の余りに泣きだす者まで……。


「お父様……民は未だ、お父様が病いに倒れているとお思いです。 この方々のお話をお聞きになる前に、民に元気な姿をお見せになられてはいかがでしょうか? 」


「そうだな、お前の言う通りだ。 少し悪いが、そなた達はここで待っていてくれ 」


 王はそう言い残すと姫と共に部屋を出て行った。


 客間は広く、天井のシャンデリアが煌びやかで華々しい光を奏でていた。 長いテーブルの上のはレースのクロスが掛けてあり、幾つもの椅子が並べられている。

 召使い達に椅子を引かれ、遠慮気味に腰を下ろすアベル達。

 目の前のテーブルに次々運ばれる食事や飲み物。

 皿を運ぶ召使い達は皆笑顔だ。 その足取りは軽く、弾む様なステップからは喜びの感情が溢れていた。


「王様、本当に愛されているのね 」


 トニーが微笑んだ。


「あぁ、この宮殿に来る前の行列でもわかったよ 」


 ラミダスがそう言うと、スチュアードも頷いた。


「何よ、あなた達。 『何だか怪しい…』そう言っていたのは、そこのお二人さんでしょ? 」


 馬鹿にする様な態度で笑うニコール。


「うわぁ〜〜! 旨そうだなぁ 」


 アベルは運ばれて来たキラキラ光るお菓子に釘付けだ。 マリアも、初めて見るご馳走に心を奪われているようだ。


 召使い達の一人が皆の前で頭を下げた。


「王様からのおもてなしです。 どうぞ、お召し上がりください 」


  挨拶が終わった途端、アベルは脇目も振らずに光る菓子を口に放り込んだ。

 頬がいっぱいになっても尚、口に菓子を放り込もうとするアベル。スチュアードは浮かない顔をすると、アベルに尋ねた。


「アベル、君はどう思う? さっきの話し 」


 一瞬、アベルは菓子を持つ手を止め、スチュアードの顔を見た。


「さっきのって、鏡の話しかい? 」


「そうだ 」


「スチュアード、考え過ぎだよ。 きっと神様は、世界中の人を救いたいのさ。 だから、ここの人達にも僕達にも使命を与えたんじゃないのかなぁ? 僕に神様の考えは分からないよ〜〜 」


 アベルは話しながらも口をモグモグと動かし続けた。


「君に聞くのが間違いだった 」


 スチュアードは呆れた顔をすると、ため息を吐き出した。 しかし、アベルは食べるのに夢中で、それどころでは無かった。


「まぁースチュアード 」


 ラミダスがスチュアードの肩に手を乗せた。


「アベルの言った事も満更じゃない。 はっきり言って俺は、魔王退治を人間に押し付ける神は皆が思うほど偉大な方では無いと思う。 まぁ、俺に弓使いの能力をくれた事には感謝するが……。 スチュアード、お前もそんな顔していないで食え! 旨いぞ〜〜 」


 ラミダスが大きな口を開け、骨つき肉にかぶり付た。 その食べっぷりは豪快極まりない。 さすがジャングルの帝王だ。



「マリア、そんな残し方しちゃ駄目でしょ!」


トニーがマリアの皿を見て叫んだのだ。 どうしたのだろう? アベルはマリアに目を合わせた。その問題の皿だが……。 マリアの好き嫌い?それとも我がままなのか? 綺麗にグリンピースだけが取り除かれ残っている。 確か、マリアはラミダスが鳥を食べようとした時に反発してラミダスを叩いた。 その事をアベルは思い出した。 でも、これは肉じゃないし……。 トニーの顔が恐ろしい。 マリアは小さく縮こまっている。


「だって……。嫌いなんだもん 」


マリアは拗ねて、指でテーブルに何度も円を書いた。


「マリアがね、ここまで成長する為に、どの位の命が必要だったと思う? ほら、このお皿を見て 」


そう言ったトニーは、ピラフの盛られた皿を指差した。


「このお米、一粒一粒が命なの。 もしもテーブルに並ばなくて生のまま畑に植えたら……新しい命が芽吹くでしょ? その事を考えると、マリアの命は、数え切れないほど多くの犠牲の上に成り立っているのよ。 その事を忘れずに、食べ物を大切にしなさい 」


「ごめんなさい……」


マリアはペコリと頭を下げた。 そしてトニーは、グリンピースを残らず平らげた。


「マリアが可哀想じゃない 」


マリアをかばうニコール。


「何よ!ニコールは口出ししないの!」


トニーがムスッとした。


「トニーはマリアのお母さんみたいね。それも……口うるさいお節介な母親って感じだわ 」


「そうよ、お節介な母親よ!」


荒々しい口調でトニーは言い返したのであった。


「まぁ〜〜お二人さん、言い合いはこれくらいにして 」


いつもの喧嘩が始まるのでは? そう思い、アベルはオドオドしてしまった。

 その時、王と姫が客間に戻り、上座の席に腰を掛けた。


「待たせてすまなかった 」


 王は皆にそう言うと、テーブルに置かれたグラスを手に取った。 その動作に気が付いた召使い達は即座に赤ワインをグラスに注いだ。

 姫が小さなグラスに手を伸ばした。 すると、桃色のシャンパンが注がれた。


「とても美味しいのよ。 あなた方もいかが? 」


 姫がにっこりと笑い掛けた。

 アベル達の側にも召使い達が現れ、それぞれの好みを聞くとグラスに飲み物が注がれた。


「王の復帰と、バーニャ国に乾杯!! 」


 姫の言葉に合わせ、高く掲げたグラスが重なり合った。

 微笑みながら飲み干す仲間達。


「……では、話しを聞かせてもらおう 」


 王は赤ワインの入ったグラスを片手に収めると、ゆっくりと回転させながら皆の顔色を窺った。

 アベルが立ち上がった。


「はい、王様。 話す事が沢山あり過ぎて……何から話していいのか分からないけれど、まず始めに僕達がここに来た訳から話します 」


「わかった。 それでよい 」


 王は首を上下に振った。

 アベルが旅の目的について話した後、仲間達の会話に加わり、今までの出来事や故郷の話しなどをした。

 ニコールの話すハイテク機械の話題も驚くばかりだが、王と姫にとって最も新鮮だったのはラミダスの話す獣との戦いや、狩りの話しだ。

 一度も国を離れた事の無い王や姫にとって、その話しの内容は、まるでおとぎ話の様で胸を弾ませた。


 いつしか時が経つのも忘れ、気が付けば話し始めてから何時間もの時間が経過していた。


 王が急に席を立ち上がり、ゴホン……。と一つ咳払いをした。


「そなた達は私とバーニャ国の恩人だ。 その上、勇敢にも世界を救うなど……。 私は、そなた達の心意気に感激した。 そこで……その褒美としては何だが、娘を嫁に貰ってはくれぬだろうか……?」


「おっ、お父様! 突然何をおっしゃるのですか?! 」


 姫は動揺しながら顔を赤く染めた。勿論、アベル達も突然の事態に唖然としている。


「もしかして、お前は心に決めた人が居るのか? 」


「いいえ、そのような方はおりませんが、皆さんがお困りになるでしょう? お父様、冗談はよしてください 」


「 お前は何を言っているんだ? 偉大な英雄を私の息子として迎えられるのだ。 そんな名誉な事は無いだろう…… 」


 言葉を失う姫と仲間達。


「 ところで、宝の鏡を元に戻したのは、そなたかな? 」


 スチュアードに問う王。


「違います、王様! それはラミダスです。彼は知恵と勇気を振り絞り、見事鏡を元に戻したんです 」


 スチュアードに抵抗する様に、ラミダスも慌てて口添えをした。


「王様、違うんだ。俺一人の力ではどうにも無らなかった。危うく鏡に吸い込まれそうになった所を皆が助けてくれた。 だから、俺一人の手柄ではありません 」


 話を聞いた王はしばらく考え込んでいた。 そして……口を開いた。


「ラミダスと言ったな? 確かに、一人の力ではこの鏡は元に戻らなかったかもしれぬ。だが、そなたが知恵を絞り諦めなかった結果、この様に私もこの国も救われた。 その事には変わりは無い。 違うか? 」


 王はそこまで話すと、ラミダスの顔を覗き込んだ。


「王様、大変有り難い話しですが……結婚は出来ません 」


「なぜだ? 」


「 仲間が俺の帰りを待っています。 だから、俺はどうしても故郷に帰らなくてはいけないのです 」


 ラミダスの返事に頭を抱える王。 どうしても諦め切れないのだろう。 再びラミダスに問い迫った。


「そなたが断る訳は、娘の事が気に入らぬ訳でも、結婚している訳でも無いのだな? 」


「と、とんでもありません。姫様はとても高貴なお方……。 とても、俺の様な野蛮人にはもったいない。 もっと他に相応しい人が居るはず 」


 王は、その答えに渋った顔を浮かべた。


「私は、何よりもそなたが気に入ったのだ。 そなたは勇敢にも獣に立ち向かう勇気を持っている。 それに、仲間をそれだけ大切にするのなら、きっとバーニャの民も大切にするであろう。 私は、そんなそなたに、この国と大切な娘を託したいのだ。 娘と釣り合う、釣り合わないは別として、仲間が何とかなれば娘と結婚してもいい。 そう考えてもよいのだな? 」


 王はそこまで言い切ると、ラミダスの返事を待っていた。

 ラミダスは答えを出し切れ無いのだろう……。 俯いている。


「なら、村人達もこの国の住民になれば良い。そうすれば、食べ物に困る事も獣に襲われる心配も無いであろう 」


 王の出した提案にアベルは思わず喜んだ。それは、村の人達にもラミダスにも幸せになって欲しい。 そんな純粋な気持ちだったからだ。


「そうだよラミダス。 村人達もきっと喜ぶよ 」


 アベルは興奮しながらラミダスに迫った。


「とてもいい考えだわ。 後はラミダスの気持ち次第ね 」


 トニーも笑顔を見せている。


「お前は、何か不満か? 」


 王が姫に問い掛けた。


「とんでもありません、お父様。 余りに突然で驚きましたけど、この国に私に相応しい方は居ない。 ずっと前から思っておりました。 そして、何よりこの方は、お父様とバーニャ国を救ってくださった。 もうそれだけで充分です 」


「そうか。 よく言った 」


 王は姫の言葉に満足そうに頷いた。

 姫が席を立った。 そしてラミダスの前まで行くと、水晶の様な瞳でラミダスの顔を見つめた。


「あなた様は、ご自分の事を野蛮で私に相応しくない。と、そうおっしゃいましたね? ですが私はそうは思いません。 何故なら、あなた様はご自身の幸せよりも村の人々の事を案じていらっしゃる。 そんな思いやりの心と責任感のある方です。……私の目にはこう映ります。 あなた様は白馬に乗った王子なんかより美しくて、逞しいお方だと……。 私にはそう思えてならないのです」


 褒められて照れ臭いのだろう。 ラミダスは姫の視線をそらした。


「どうか……私からもお願いです。 あなた様の家族である村の方々の為にも、この国で共に暮らしてはもらえませんか? 」


 姫が、そっとラミダスの前に手を差し伸べた。

 まだ迷っているのだろう。 ラミダスは下を向いたまま考え込んでいる。

 しばらく沈黙た続いたのだが、ラミダスは顔を上げて姫の手を握った。


「あぁ…… 」


 一言返事を告げたラミダス。 その頬は、薄っすらと赤く染まっていた。


「まぁ……。 何とめでたい事でしょう! 」


 トニーは手を合わせながら言った。 その姿はまるで夢見る少女のようだ。

 手を叩き、歓声を上げて喜んでいる仲間達。

 王は、ラミダスと姫に温かい眼差しを向けていた。 その優しい表情からは、溢れんばかりに子を思う親心が滲み出ていた。

 そんな中、 急にスチュアードが真顔で言った。


「喜んでばかりではいられません。 その前に、モロゾフを始末しなくてはいけないのですから…… 」


「もう! スチュアード、 せっかく良いところだったのに直ぐに現実的な事を言うんだから」


 アベルはがっかりした様子でスチュアードを見た。


「そーね、スチュアードの言う通りだわ。 お祝いは役目を果たしてからにして、モロゾフの居る場所に行くまでには困難が待ち受けていそうよ 」


 ニコールの思い掛け無い言葉。


「それは、どういう事?? 」


 アベルが聞き返すと、ニコールはコンパクトの画面に注目しながら話し始めた。


「さっき、モロゾフの居場所が分かった。と言っていたでしょ。 その後、そこ迄の道のりを調べてみたの。そうしたら、目的地を中心として広い範囲で突風や落雷と言った酷い天候よ。 初めは一時的な物かと思ってあまり気に止めなかったの。 でも、気になって調べてみたら……それは今に始まった事じゃなくて何年も前からそうみたい。 これも、負のエネルギーと関係があるのかしら? どちらにしても鷹の背に乗って目的地なで行くのは無理ね 」


「そんなぁ〜〜 」


 ニコールの言葉に思わず声を上げたアベル。 他の仲間達も曇った顔色を浮かべるばかりだ。


「明日からの旅に備えて、今日はゆっくりと休んで行きなさい 」


 王と姫が優しく微笑んだ。 そして、召使いがアベル達を寝室へと案内した。


 通された大部屋には幾つものベッドが用意され、その上には上質で柔らかい布団が掛けられていた。

 暖かい布団での休息はアベルにとって死の谷を出てからというもの無縁だった。アベルは久しぶりの感触に幸福感を覚え、顔を埋めた。 しかし……それと同時に魔王との対決の時が刻々と迫り来る緊張感に襲われてなかなか眠りにつけずにいた。

 ふと、アベルは隣のベッドを見た。 ラミダスは王様に呼ばれた様で、そこには居なかった。 他の仲間達は既に眠っている。 アベルはこの不安感を誰かに打ち明けたくてラミダスの戻りを待つ事にした。

 だが……徐々に瞼が重くなり、眠りに誘われたアベルは、やがて深い眠りの中に落ちて行った。


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 次の日の朝、王と姫に見送られて皆は宮殿を出た。

 ラミダスの首元に揺れる金色のペンダント。

 …きっと、御守り代わりに姫様が贈ったのだろう……。アベルはそう思った。


 マリアの指笛が遠くまで響き渡った。

 やがて上空に黒い影が広がった。 それは、大鷹の周りに群がる無数の小鳥達。 やはり、今回も渡り鳥の群れを引き連れての登場だ。 しかし、その数は以前よりも明らかに増えている。


 アベル達は鷹の背に乗り空の旅が再開した。 目指すは、魔王、モロゾフを倒す為に……。

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