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夏の図書館と藍色の制服

作者: 竜崎 詩音
掲載日:2014/07/29

小学校最後の夏。

夏休みが始まり一週間が過ぎたころ、初日に全ての宿題を済ませてしまった僕は、今日も友達の誘いを断り、図書館に来た。

クーラーのない田舎でみんなが扇風機の取り合いをしてる。

そんなみっともないことしてる暇があるなら宿題やればいいのに・・・。


「あら今日も勉強?いつも偉いわねぇ」


おばさん、毎日同じようなことしか言いませんね。

なんて実際には言わないけど、目的は勉強じゃない。

ここには僕の大好きな本、この町に唯一あるクーラー、静かな雰囲気、すべてそろってる。

なんでみんなはここにこないのだろう。

こんなに静かで、うるさい奴等もいない、スカートめくったり、森を探検したり、何が楽しいんだか。


でも奴らが来ちゃったらここもうるさくなってしまうか。

そんな単純なことに気が付かないなんて、一生の不覚!

クーラーがあるとは言ってもそんなに性能のいいものではないのだろう、外よりはまだいいかなって感じな室温で、なんだかんだ汗は流れる。

ぽたぽたと垂れる汗が本にかからないように気を付けていたが、一滴垂れてしまった。

まぁこのページにはコーヒーのシミがついてるから大丈夫だろう。

そんなどうでもいい思考を繰り返し、結局今日は2冊しか本を読まなかった。


「しまった、もう来る時間だな」


もうそろそろ友達が来る時間だ。

まぁ1週間ほどの付き合いだけど、もう友達だよね?

僕が一方的にそう思ってるのかもしれないが、そう考えだすときりがないのでやめる。

僕の悪い癖だ。


役員のおばちゃんが昼寝を始めるころ、友達はやってくる。


―ガチャ


なぜだか彼女は足音が極端に小さい、っていうか聞こえない。

扉の開く音でやっと来たことに気が付く。

小柄だから、扉のすりガラスからも見えない、出会って一週間経つけど、いまだに結構驚く。


「こんにちは、今日は何を読んだの?」


どこの物かはわからないけど、藍色のかわいらしい制服を着た彼女は、なぜか自分で手に取らず、僕にどんな本を読んだのかを訪ねる。

普段あまり話さないから、うまく説明できてるか分からないけど、うんうんと聞いてくれるから、僕も楽しい。


時々難しい言葉で質問してくるのが少し癪だけど・・・

僕でもわからないようなことを聞いてくるんだ、よほど本が好きなのは分かる。

そのあとのセリフがまた皮肉なんだよな。


「あ、君はまだ小学生だったね、ごめんごめん」


なんとも愛らしい、申し訳なさそうな表情をするからすぐに許してしまうけど、子ども扱いされるのは好きじゃない。


「すごく落ち着いてるから、いつも忘れちゃうんだよね」


ムスッとしている僕に向かって、はははと笑うその顔が、なんともかわいらしい。

僕じゃなかったら簡単に落ちているだろうが、ふふ、甘いな、僕はそう簡単には・・・


「どうしたの、顔赤いよ?」


そう考えている僕の顔は真っ赤だったようだ。

熱いからに決まってるではないか、読者よ失礼なことを言うんじゃない。


「いつもありがとね、おかげで退屈しないよ~」


小さい、よな。

本の話を一通り終え、伸びをする彼女を見てそう思う。

どこがとはあえて言いませんよ、僕小学生ですし、紳士ですから。

何歳かは聞いたことはないけど、近所に中学は一つしかないし。

高校生なのかな・・・?


「あ、いま小さいって思ったでしょ、失礼な子供だなー」


ばれたか!なんて冗談言いながら、いつの間にか笑ってる自分に気づく。

いつも無表情を心がけてるけど、この人の前ならいいかなって思える。

二人で本の話をして、くだらない冗談を言って、笑いあう。

ささいなことが、僕の心を満たしてくれる。

断じて恋ではないぞ、たぶん。


「そろそろ日が暮れるよ?君は帰らなきゃね」


永遠に続けばいいと思う時間ほど早くすぎるもので、時計はもう18時半を指していた。

まさか彼女は時空魔法の使い手なのか、時間がとてつもないスピードで過ぎてゆく。

夏休みに入ってから毎日こんな調子だ。


「ほーら、怒られるぞー?」


分かってますとも。

僕は急いで荷物をまとめ、お別れの挨拶をした。

おばちゃんは相変わらず眠りこけている、こんなところで何時間寝てるんだこの人は。


自転車にまたがり、家に向かって出発する。

いくら夏でも19時を回ると雷が落ちる。

雲から落ちてくるやつならどれだけいいものか・・・。



もう図書館に通い始めて2週間ほど、これまた幼馴染からの誘いを断って図書館に向かう。

今日はお菓子とお茶を持たせてもらった、飲食禁止ですけどね。


「こんにちは、いつもえらいねぇ」


RPGおばさんとの会話を済まし、ひんやりとした空気と本の匂いを存分に味わう。

今日は汗が引くまで少し待つことにした。

図書館の物に限らず、本を汚してはいけませんよ、皆さん。


どうせ誰もいないから、走ろうが叫ぼうが構わないのだけれど、僕はゆっくり本棚の間を歩くのが好きだ。本の名前を見て、触って質感を確かめたり、今まで何人が借りたか確認したり。

本は紙と文字でできたものだけど、それだけじゃないんだって、周りにも伝えられたらな。

いつも見る本棚だけど、日によって、見たときの気分によって、見え方は大きく変わる。


最近は彼女の好きそうな本を読むことが多かった。

僕に特に好みがないことと、彼女に喜んでもらうためだ。

彼女のために本を読んでいる、彼女に会うためにここにきている。

いつの間にかここにくる理由が変わってしまった。

最初は独りになるためだったんだけどな。


彼女は無類のミステリ好きだ、面白そうなものを見つけ、ソファに腰かけた。

外の気温が昨日よりも低く、見たところクーラーの掃除がされたようで、とても読書に集中できた。

たまに出てくる難しい言葉は辞書で調べて、傍からみたらよほどの勉強好きに見えただろう。

とにかく上手く彼女に伝えたい、実はただそれだけのためなんだけどね。

昔から本は好きだけど、夏休みに入ってからはより一層、ほかの何より好きになった。

ハンバーグより好きです。

好きなのは本じゃなくて彼女だろうって?・・・バカなことを言わないでくれたまえ。


「こんにちは」


!?

ち、近い、いきなり現れた!!?


「あ、ごめん驚いた?ふふ、すごく集中してたね」


いつの間にか彼女の綺麗な短い髪が肩に触れるほどの距離にいた。

鼓動がうるさい・・・こんなんで動揺しちゃだめだ!


「今日もお話聞かせてくれる?」


もちろんです。

まずはこの本ですけど・・・


「うんうん」



・・・ふと時計を見るともう2時間ほど経つ、そろそろのどが渇いてきた。

母に持たせてもらった水筒を取り出し、勢いよくお茶を流し込んだ。

生き返った気分だ、麦茶は暑いときに飲むからこそおいしいと思う。


「ごめんね、ずっとお話させちゃって疲れたよね」


いや、僕は平気です!と強がりたかったけど、そうも言えない。

さすがに喉は渇きますよ・・・ってそういえば彼女が何かを口にしてるのをみたことないな。

それに汗も、一滴も書いてないように見える。

そういう体質なのか、それにしても全くとは。

何か実験的な気分で、お茶を飲むか尋ねてみた。


「ううん、私は平気だよ?」


本当に平気なだけなのか?

クーラーがあるとはいえここは27度ほどある、それに彼女が来ている制服、冬服・・・だよな。


「なに、そんなにまじまじみて、なんかついてる?」


い、いや、何も。

杞憂だろうと思い、本の話を再開する。

小腹がすいたのでスナック菓子を食べることにした。

もちろん僕は箸を使って食べますよ、本が汚れちゃいますから。


「ふふ、箸使うんだ、よほど本が好きなのね」


父が作家で母が出版社で働いてるという事もあり、本の扱いは昔から厳しく指導されていた。まぁさすがにここまでしてたら笑われても仕方ない。


「ふぅん、最近のお菓子ってこんなものもあるのね」


彼女はすごく食べたそうな目でお菓子を見つめていた。

最近のお菓子?これとんが○コーンだよ?

たべますか?


「え、うーんと、いいや、太っちゃうじゃない・・」


そう、ですか。

なんでそんな焦って、それに悲しそうな顔をするんですか。

なんだか暗い雰囲気になってしまったので、話題を変えようと思った。

そうだな、好きな食べ物はなんですか?


「え?好きな食べ物?うーんと・・・」


我ながら何て質問だ、なんて意味のない。

でも好きな食べ物があるなら、一緒に食べたいなぁなんて思ったり。


「私は銀杏が好きかなぁ」


おはは、おいしいですよねって銀杏!?

なんて予想の斜め上な答えなんだ・・・この人、できるっ!

小学生に高級料亭に連れて行けっていうんですか。


「そんなに驚くことかな、まぁ珍しいのは自覚してるけど」


恥ずかしそうな顔、いただきました。

なんというか、彼女の豊かな表情を見ていると、心が癒される。

は、しまったまた見惚れていた・・・。

本の話がまだ終わっていませんでしたね。


「たまには別の話をしても楽しいかもね、ふふ」


気のせいかもしれないけど、彼女が笑うたびにいい香りする気がする。

特に深い意味のない発言だったのだろうけど、また一つ仲が深まった気がした。


「あ、いけない、そろそろ行かなきゃ」


ん、なにか用事ですか?


「まぁちょっとね、今日は先に帰ります」


珍しいな、いつも僕の門限ぎりぎりまでというか、僕が帰るまで帰らないのに。

はっ待てよ、これは一緒に帰るチャンスなんじゃないのか!?

しまった、なんて言おう、予測してなかったから言葉が出ない・・・くそう。


「ごめんね、今日は君が片付けしておいてね、ばいばい」


えっと、あの。

もごもご言ってる間に、彼女はもう扉の向こうだった。

なんてことだ、めったにないチャンスを逃してしまった。



「あら、私ったらまた寝てたのね、ふぁ~よく寝た・・・」


彼女がいなくなった瞬間、RPGおばちゃんが目を覚ました。

なんだよこんなタイミングで、またラリホーかけてやろうか。


「あら、まだ本読んでるの?偉いわねぇ」


そんなことはどうでもいい、半ばおばちゃんを無視して、窓の外をみたけれど、彼女の姿はもう見えなくなっていた。


「あら、他に誰かいたの?なんか他の子の匂いがするわ・・」


このおばちゃんは犬なのか・・・。

ん、待てよ、あの子が来るたびにおばちゃんは寝てるけど、彼女の事を知っているんだろうか。昔からの常連なのかな。

ねぇおばちゃん、さっきまで制服を来た女の人がいたんだけど、常連さん?


「んん?女子高生かしらね、おばさん寝てたからわからないねぇ」


使えない、おばさんだ・・・。

ていうか一度も見たことないのか、もう2週間ぐらい毎日来てるのに。


「あら、いつもあなた一人でお勉強してるものだとばかり」


やめろ、ぼっち呼ばわりしないでください。

とは実際には言わない、まぁ事実僕は一人じゃないんだ、大目に見よう。


「って、もうこんな時間だよ、そろそろ帰りなさい」


はっ、しまった!

おばちゃんとの無駄なイベントのせいでまた雷が落ちる・・・。



それから1週間、毎日図書館に通ったけど、彼女は一度も現れなかった。

どうして突然、僕はなにか嫌なことを言ってしまったんだろうか。

おばちゃんが昼寝をするのを待ちながら、ずっと読書してたけど、一度も現れなかった。



夏休みの初日に宿題を全て済ませてしまった僕には、やることがなくなってしまった。

友達からの誘い?幼馴染からの誘い?

そんなの見栄張ってただけだよ、ろくに友達がいないんだよ、僕には。



図書館からの帰り道、一番会いたくない奴らに会ってしまった。

クラスのガキ大将と、クソ子分どもだ。

僕に寄ってたかって暴言を吐き、暴力をふるう。

僕は意外と背は高いけど、多勢に無勢って奴ですよ。


「おい、ムシじゃねぇか、おい無視すんなよ、本のムシ!!」


―おいおい、大将を無視するなんていい度胸だな

 ―おいおい、旨そうなとんが○コーンだな!

  ―おいおい、本のムシってなんだ?


おい、後半二人、お前ら状況が読めてないだろ。

まぁとんが○コーンやるから落ち着け。


―た、大将!ムシが喋りましたよ!?

 ―いいだろう、契約成立だ

  ―なんの話だ?


「・・・お前、そんなに口が利けるなら、なんで今まで喋らなかったんだ?」


しまった!

心の中で言ってるつもりだったのに・・・声に出てしまっていたようだ。

彼女にミステリ小説の読み聞かせなんてしてたもんだから、ずいぶんハードボイルドな口調になってしまった。

元々無口でクールなキャラだったのに、この2週間でずいぶん口が達者になった。

あんな生意気なことを言ったんだ酷い暴力が待ってるだろうな・・・。


「俺にも、くれるんだろうな」


え?


―大将がもろうなら俺も!

 ―とんがりうめぇぇぇぇぇぇ!!!

  ―え、なに食べていいの?


「おい、おめぇなんて名前だ?それとお前の分なくなるぜ!?」


・・・友達って、こんなに簡単に作れるのか・



結局彼女は夏休みの最終日まで現れなかった。

会えないのはすごく残念だけど、彼女のおかげで有意義な夏休みを過ごすことができた。

お礼を言いたいけれど、お互い知らないことが多すぎるし、諦めることにした。


あのあと大将たちとお菓子を指にはめて遊び、川にいってびちょぬれになって遊んだ。

絶対に叱られると思っていたけど、なぜか雷は落ちず、どこで誰となにしてたか、ニヤニヤしながら聞かれた。

翌日から毎日、大将が家まで迎えに来るようになった。

どういう風の吹き回しか、彼は照れたように


「おい、遊びにいくぞ!・・・あと宿題教えて」


っという具合に、夏休みいっぱい大将たちと遊び倒すことになった。

息子の変貌ぶりに驚いたのか、複雑な表情をしていた僕の両親も、数日後には笑顔で送り出してくれた。


夏休みが終わってからも激動の毎日だ。

大将と一緒に登校してきた時点でみんなは度胆を抜かれただろうけど、なにより僕は口達者なハードボイルドになっていたのだから、みんなの驚いた顔が面白かった。


なんと後期の学級委員に選ばれてしまった僕は瞬く間に大将をしのぐクラスの中心人物に上り詰めていた。

普段の振るまい一つで、こんなに人生変わる者なんだな・・・。


小学校の卒業アルバムには、僕の変貌ぶりを物語る写真がいくつもあった。

夏休みが終わるまでほとんど写真に写っていなかったからな。

どうしてもう少し早く、こうしていなかったのかとも思ったけど、こうなれたのは僕一人の力ではないんだ。



高校1年の夏、中学校での頑張りが効いて推薦で入った高校で、今は生徒会の役員をしてる。

今は教師に頼まれ歴史資料館なるところの掃除を手伝わされていた。

埃っぽいし、かび臭いし、いいことなんて一つもない・・・と思ったけど。


それを発見したとき、つい荷物を床に落としてしまった。

忘れかけていたあの夏休みが、鮮明に蘇った。

なにを発見したかって?

察しが悪いですね・・・。


「おい、大丈夫か、なんか物音がしたけど」


だいたいのことは理解できていたけど、念のため先生に聞いてみた。


「あぁ、昔はこんな制服だったらしいね、暗くて地味だけど」


俺、この制服を見たことがあるんです、そう話してみた。


「え?見間違いじゃないのかい?」


間違いなわけあるか、僕は間違いなく、あの夏この制服を来た女性と過ごしたんだ。


「うーん、この制服はさ・・・」


そのあと詳しく話を聞いた結果。


この制服がなくなったのは50年前だそうだ。

それにちゃんと調査したわけではないらしいが、この制服はこの1着しか残っていないらしい。

それもこの制服が廃止になった理由が、呪いだからだという。

そんなこと信じられない?そうですよね。


先生はいまだに怪談話が残ってると言い、話してくれた。

本が大好きな無口な女の子が、いじめが原因で亡くなったという話だ。

図書館で本を探していた彼女めがけ、突然本棚が倒れ込み、圧死。

バカな生徒が本棚を反対から押して倒したんだろうな、話の流れからわかる。

でもニュースでは事故として取り上げられ、翌日からは何事もなかったように日常が訪れたという。

なんとも許しがたい話だ、先生はそういう。

実際に起こった場合、あなたはなんて言うでしょうね。


その事件から、近所のありとあらゆる図書館で、その学校の制服をきた幽霊が目撃されるようになったという。

学校は、イメージが悪いと、翌年からすぐに制服を変えたそうだ。

学校側から、制服の処分を持ちかけ、生徒たちは素直に応じた。

それがこの制服がこれしか残ってない理由だ。


「まぁきっと似ている、制服があったんだね」


先生は最後にそういって作業に戻った。

僕も急いで作業を済ませよう、行かなきゃいけない。


「いやぁさすがだね、助かったよ」


あの先生、この学校って大きな改築とかされてますか?


「ん?いやされてないと思うけど」


図書館ってどこですか?


「いやだな、君みたいな生徒がさっきの話を信じたの?ただの会談だから、気にしないで」


どこですか?


「・・・ど、どうしたのそんな顔して、図書館なら3階にあるよ」


50年前と図書館と場所は変わってますか?


「うーんと、ちょっと待ってね、さっき昔の地図があったからそれをみよう」


すみません、ありがとうございます。

・・・僕は何をこんなに焦ってるんだろう


「あ、昔の図書館は1階だね、でもここ・・・」


どうしたんです?


「私も詳しく調べてなかったからわからなかったけど、ここが図書館だったんだね」


??


「開かずの間って生徒たちが読んでるよ、なんだか今の校長が除霊師とかいうのを呼んでさ、お札が貼ってあるんだよ」


それってもしかして4年前の夏だったりしませんか。


「んーどうだったかな、たしかそんな感じだった気が」


先生、ありがとうございました


「いや、君が手伝ってくれたお礼・・・ってもういないよ」



やっと見つけた!!!

あのころの僕でも、なんとなくは分かっていた。

でも今確信した。


階段を駆け下り、一階の開かずの間に向かう。

なんだろう、確認してはいけない気がするけど、胸の高まりがおさまらない。

もう一度会いたい!

お礼が言いたい、もう一度本の話がした、初恋の相手に、早く、会いたい。



あった・・・ここだ。

なんでもっと早く気が付かなかったんだ・・・。

彼女はあの時、恐らくだけどお札を貼られたせいでここを出られなくなったんだろう。

なんで言ってくれなかったなんて言わない、あの時の僕には信じられなかっただろう。


とりあえず、ノックをしてみる、もちろん返事はない。

周りに人がいないことを確認して、札を剥がしていく。


こんなにいっぱい貼りやがって、彼女が何をしたって言うんだ。

全てを剥がすのに、10分も経ってしまった、こりゃ出れないよな。

やっと、やっと会えるんだ、こんなに嬉しいことはないよ。


自分の鼓動がうるさい、でもこんな時くらい許してあげよう。

ぎぃぃぃと重たい音が鳴る、扉が錆びていたんだろう。

カビの匂いと、本の匂い、扉の錆びた匂い、いかにも古い図書館って感じだ。


トビラを開け放したその先には。


「あ、人だ!!久々にみたな」


あのときからなにも変わらない彼女の姿があった。

お久ぶりです、覚えていますか?


「え?」


ひどいなぁ、また本の話しましょうよ。


「あ!分かった、あのときの子だ!」


またあなたに会えて嬉しいです。

あなたのおかげで、いろいろあったんですよ。


「それにしても大きくなったねぇ、おねぇさん嬉しいなぁ。ってもう同じ歳くらいか・・・ふふ。お話たくさん聞かせてよ」


あの夏休みが終わってからね・・・・。







翌日僕は本棚の下から、死体で発見された。


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