8章
第八章【衝突】
お互いの心臓の音が聞こえる程里香は大をギュウッと抱き締めていた。
大は必死に自分の理性を保とうとしていた。抱き締め返してしまったらその次までしてしまうような感覚に襲われた。
しかし大は里香の細い体を抱き締め返した。
そして決意した。このまま中途半端に里香の気持ちをもてあそんではダメだと…。
『里香…?』
『ん?』
『俺は…おまえが好きだ…//』
『…大///』
大は告白すると共に里香の体をますます強く抱き締めた。里香は大の告白が未だ信じられずに大の胸板に顔を埋め,喜びから涙を流した。
『…大ありがとう…//』
『今更だけど…俺の女になってくれ...//』
大は照れるのを必死に堪えながらずっと心で思っていたことを口にした。
『…うちで良ければ喜んで...///』
里香は顔を上げると大を見てにっこり微笑んだ。大も里香の目をまっすぐに見返すと微笑み返した。
『何泣いてんだよおまえ?』
『大がいきなり告るからびっくりして泣いてしまったんやん…///』
大はなんだそれと小さく言いながら里香の涙を親指で拭いてやった。
里香は顔を赤くしながら嬉しそうに涙を拭かれた。
『もう3時だぜ?寝るぞ?』
大が時計に目をやりながら言うと里香は大の手を引っ張ってベッドに座り大も横に無理矢理寝かせた。シングルベッドに二人はキツかった。
『おい!!里香狭いだろうが!//俺畳で寝るからいいぜ?』
『いいやん…//彼女来てるのに別々に寝る男が何処におんねん!!』
里香は大の方に寝返りをうってたくましい腕に絡まりついて目を閉じた。
『…ったく//仕方ねぇな…//』
大は里香に毛布をかけてやりながら自分も目を瞑った。
自分の隣に里香が寝ていると思うと何処か緊張した。ついに自分の女になったことを実感した。
里香は大が眠り就くまで寝たふりをすることにした。
大が寝息をたてはじめると目を開けて大の寝顔を覗き込んだ。
大…めっちゃ可愛い寝顔なんやね♪
里香は大の寝顔に対して微笑んだ。何分,何時間見ても飽きない気がした。
里香は今自分が大の彼女になったことを冷静に考えていた改めて喜びが身に染みた。
ずっと自分の片想いなのではないかと不安になっていたからだ。幼馴染みだから女に見てもらえない気がしていた。
大の寝顔を見ながら改めて大の“俺の女になってくれ”という言葉を思い出した。胸がキュンとした。
里香は大を起こさないようにそっと大の胸板に顔を埋め抱きつくような格好で目を閉じ,眠りに就いた。
朝の9時になり大が先に目を覚ました。見ると自分の腕の中に里香が眠っていた。
改めて里香を見て起こさないように髪を一撫でしてベッドから抜け出した。
顔を洗い近くの食品店に行き,買い物を済ませ冷凍してあるご飯を二膳を解凍し卵焼きと味噌汁を作り,ウインナーを焼いた。
二人分の朝御飯を作り終え大は里香を起こしにベッドに向かった。
『おい?里香?起きろ…』
『ん?』
里香は目を擦りながらムクッと体を起こした。
『…大…おはよ♪』
『おう…飯作ったから食えよ…』
里香は顔を洗い大の作った朝御飯を見て驚きながら座った。
『大が作ったん?』
『おう…』
『めっちゃ美味しそうやん♪いただきます♪』
里香はパァッと明るくなり食べ始めた。
『うん♪めっちゃ美味しい♪』
『そうか…?そりゃ良かった…』
二人が朝食を食べ終えて一時するとチャイムが鳴った。
『誰やろ?』
『さあな…』
大が扉を開けると翔と見知らぬ男が立っていた。
『よっ♪大♪』
『こんにちわ!!!』
見知らぬ男は深々大に頭を下げた。
大『…?まあとりあえず上がれよ?』
翔『そうさせてもらうわ♪』
『失礼します!!!』
翔と見知らぬ男が部屋に入った。入った瞬間に翔は里香を発見した。
翔『里香ちゃん♪久しぶり♪』
里香『翔君!!久しぶり♪』
翔は今日も可愛いね〜と里香を誉めながら大に近づいて小声で囁いた。
翔『大〜部屋に連れ込むとはやることやってんだなぁ♪おまえも♪羨ましいぜ♪』
大『馬鹿//からかってんじゃねぇぞ?//で?用はなんだ?』
大はからかわれるのをシカトしながら翔に言った。
見知らぬ男はまだその場に立って気を付けをしていた。
翔『座れよ?』
翔は見知らぬ男に言い男は失礼しますと言いながら正座した。
翔『実はな…こいつがどうしても大の弟子になりてぇみたいなんだよな…』
翔は見知らぬ男を見ながら言った。
大『弟子!!!?』
大はびっくりして聞き返した。男は大を真っ直ぐに見た。
『初めまして!鷹邸サン!!俺は三浦太一と(ミウラ タイチ)
と言います!!鬼多高校1年です!!俺を弟子にしてください!!』
三浦太一という少年は必死に大に頭を下げた。突然の事に里香も口を開けて太一を見た。
大『待てよ…まず俺は弟子をとれるような大層な人間じゃねぇし,なんで同級生なのに俺の弟子になんだよ?』
大はあきれたように頭を下げ続けている太一を見た。
翔『おまえが熊を倒すところとか,三年の派閥を次々に倒すとことか見ておまえについて行きたくなったみてぇだぜ?』
大『はぁ?』
翔の説明を聞いても大はピンと来なかった。
里香『いいんやない?こんなに頼んでるんやから…?』
里香は未だ頭を下げている太一を見ながら言った。
翔『怖いイメージしかないお前に声かけるのは結構勇気いるんだぜ?たった一人で鬼多の頭になってから学校中で鷹邸大という名は噂されてんだ…熊をも殺す鬼人ってな…』
大は困り果てた顔になってしまった。太一の顔を見れば見るほど本気で言ってるようにしか見えなかった。
大『じゃあよ…弟子とかじゃなくて普通にダチになろうぜ?』
太一は顔を上げて目を輝かせた。
太一『いいんですか!!!?』
大『おう…よろしくな?』
太一『俺には勿体無いお言葉です!!』
太一は満面の笑みを浮かべて太一を見た。
太一『…俺は鷹邸サンみたいに強くなりたいんです…』
太一は照れて頭をかきながら言った。
大『強く?』
太一『俺,中学の時はイジメにあってて…このままじゃ男として生きていけないと思い,強くなるために四大悪高の一つ鬼多高校に入ったんです!!』
翔『それだけの理由で鬼多高に入るとは逆にいい度胸だな…』
翔が飽きれたように太一に言った。
翔『で?今は強くなれたのか?』
太一『いえ…またイジメにあってて…』
太一は恥ずかしそうに下を向きながら言った。
大『誰にいじめられてんだ?』
太一『三年の中西派に…』
大『中西派?』
派閥に全く興味のない大は首をかしげた。
翔『ったく…大はなんにも知らないんだな…頭とったくせに..中西派ってのは前の頭だった守谷派と対抗してたNo.2の派閥だ。』
里香『話しによると,気に入らない派閥がいればその頭を集団暴行する最悪な派閥らしいわ…』
大『へぇ〜』
大は興味なさげに聞いた。
太一『毎日金を持っていかないと殴られるし…もうどうしていいか...』
太一は不安そうな表情をのぞかせた。
大『バカ野郎…殴られようがなにされようがやりたくねぇことは断るんだよ…』
太一『鷹邸サン…』
大のあまりにも早い返事に太一は瞬きをして大を見た。
大『頑張って自分の意見を中西に言え。それでボコボコにされてどうしようもなくなったら俺が助けてやる...』
翔『さすが大だな♪友達になったからには俺も助けに行くぜ…』
太一『鷹邸サン…翔サン…』
太一は二人の言葉に感動して泣きそうになっていた。
太一は涙を堪えてにっこり笑った。童顔な顔がますます童顔に見えて大は癒される思いがした。
里香『三人とも意見貫くのはいいけどケガはしないでよ?』
翔『は〜い♪』
太一『分かりました//』
大『喧嘩に怪我はつきもんだろうが…』
大はまたぶつくさと里香の意見に反発した。翔が素直になれと大の肩を叩きながら言った。
太一は初めて間近で見る里香の美しさに顔を赤く染めていた。
ー〜♪
いきなり翔の携帯が鳴り始めた。
翔『もしもし?はい…はい…いえ..遠慮しときますわ…俺は鷹邸派なんで…』
翔は大を見ながらニヤニヤして電話の相手と話し終え携帯を切った。
大『おいおい…俺がいつ派閥作ったよ?』
翔『俺が作ったんだ…今な…』
里香『電話誰やったん?』
翔『三年の松岡…No.3の派閥の頭だ…』
太一『翔さんを勧誘してきたんですか!!?それで翔さん断ったってことですね…』
太一が興奮気味に太一に聞いた。翔は頷く。大は呆れ顔でため息をついた。
大『あのな…俺は頭って自覚もねぇし,派閥作る気もねぇの!!』
眉間にシワを寄せながら言う大に翔は真剣な顔になり大を真っ直ぐに見た。
翔『大…俺はおまえに会った日からおまえしかいないと思ったんだ。四大悪高を統一する奴は…』
大『はぁ?』
翔『四大悪高を統一した奴は今まで一人もいないんだ。俺はおまえに命預ける!だから…一緒に統一してくれ…!!』
翔は正座をすると土下座をした。頭を下げる翔の姿は小さいながら迫力満点で他三人は黙り込んだ。
太一は大と翔の顔を交互に見て緊張して何度も瞬きをし緊張をほぐした。
大は翔を見てタバコをくわえた。
大『帰れよ…』
里香『大!!?』
翔は驚いて目を見開いて大を見た。大は翔と出会う前の冷たい顔になっていた。
太一はおどおどしながら恐怖を感じて里香の後ろに隠れた。
翔『大…?』
大『帰れって…』
翔は何も言わずに大の部屋を出て行った。大は表情を変えずに翔が出ていくまでタバコを吸い続けた。
里香と太一は慌てて翔を追いかけた。
大は一人になった部屋でバタンと仰向けに寝転がった。
…結局俺は翔にとって友達じゃなくて統一の為の道具かよ…
クソ…
結局俺には友達なんて出来ねえんじゃねえか...




