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Skyer  作者: 春菜
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天上の人

ずっと空を飛びたかった。高い所から見下ろす街はどんなものだろうか。

地面のない、道のない世界はどんな感触だろうか。どこへでも行ってみたい。

何段も昇っては身を乗り出した。まだ空はあんなにも高く、広く、遠い。

そして見下ろす地面は固くて冷たい。打ち付けられることが怖くて、また身を引っ込める。

心の奥でどこにも行かないで、ここにいて、まだ飛んで行かないで、そう叫ぶ声が聞こえる。

その声を言い訳にして僕は何度も飛ぶことを拒んだ。

滑稽なほど臆病な僕を見て君が笑った。

「そんなに怖いなら飛ばなければいいのに」

「どうして飛びたくならないの?あの空へ羽ばたけばどこへだって行けるのに」

「だって私は地面の上で生きる生物よ。飛べないわ」

「僕と一緒なら君だって飛べるさ」

「あなたがそうやって夢物語を語るとき、輝く瞳が好きよ。愛してるわ、私の天使さん」

そう言って僕の頬を撫でる君。美しく、慈愛に満ちていて、愛らしい天使のようだ。

僕はその手を取ってまた階段を駆け上がった。振り返るとそこにある君の笑顔、手の温もりが幸せだった。

道の途中で僕は何度も君に夢を語って聞かせた。

君は何度もその話を聞いて、僕に愛してると言った。僕を確かめるようにその手が触れる。

頬を撫でる小さな手を取り、強く握る。君が微笑んだ。

潰えることのない夢。だけど夢は夢である限り、いつかは終わる。

気付けば僕の手の中に君はいなかった。

この高い塔のどこに君を置いてきたんだろう。

滑るように階段を降りる。だけど君がいない。どこにもいない。どうして?どこに行ったの?

君がいない世界にいるくらいなら、あの地面に打ち付けられた方がマシだ。

この心の痛みを身体の痛みで覆いつくして全てを殺してしまおう。

僕は柵の上に乗って、迷うことなく飛び降りた。

冷たい柵の感触がその手から離れたとき、漸く気付いた。

君が僕の手を離した理由に。

忘れていた僕の本当の姿に。

背中に生えていた大きな羽が広がって空気を受け、僕は宙を舞った。

ゆっくりと羽ばたくと、体はどんどん浮き上がっていく。太陽の熱で火照った空気に柔らかく包まれる。

空は今、何よりも美しく、暖かく、懐かしい。

何にも汚されることのない真っ白な空気をたっぷり吸い込む。

足下よりずっと下に小さく広がる街は、まるで現実味のないおもちゃのような世界に見えた。

あの世界に暮らす君を見つけたんだ。

だから僕は窮屈に羽を畳み、息苦しくて退屈な世界に下りてきた。

自分の正体を忘れるほど長い時間、与えられた愛情に羽を縛られ、君という鎖で地上に繋がれ続けていた。

「さよなら、私の天使さん」

響き渡った言葉。何も聞こえないフリをした。今振り向いたら、君はきっと僕を見上げ続けるだろう?

そして僕を見上げる君を僕はまた探してしまうんだ。

君の声が届かなくなるまで、手が届くほど近くて美しい空だけを見ていた。


以前書いていたらしいんですけど、

何のために書いたのかさっぱり思い出せず、


そのまま消してしまうのも……ということで

とりあえず投稿しました。


最後まで読んでいただきありがとうございました。

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