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慰められたらどんなにいいだろう。

作者: いちえん


「ねぇ、暇?遊ぼうよ」


今時、こんな分かりやすいナンパする奴とかいるのか?


自分で自分のセリフに苦笑いしつつも

カナちゃんは結構食いついてきてくれた。


そうか、意外とこういうのは分かりやすいのが一番なのか。

とか納得しつつ文字通り遊んで、連絡先も手に入れた。




家に帰宅して一息入れようとしたら

ノックもなしに部屋に入ってくる奴がいた。


文句の1つでも言おうとしたら

その隙さえあたえず抱きついてくる。


何だよ、いきなり。と

彼女の顔をよく見ると

大粒の涙が頬を濡らして

声にならない泣き声をあげていた。


結局、喉まで出かかった文句は

そのまま引っ込んでしまい、

とりあえずされるがままになっていた。


彼女がしばらく落ちついてから

事情を聞くとあっけないほど単純だった。


好きな人に振られたらしい。


そこから俺は

どんなにその男のことが好きだったかを

延々と話され、また泣かれた。




次の日、学校に普通に行くと

彼女の告白は教室中の話題になっていた。


それはそれは、

見事な振られっぷりだったらしい。


何でも相手の男は彼女が自分を好きなのを知っていて

それでいてわざと泳がせてその様子を楽しんでいたらしい。


皆は、表面上では彼女が可哀想だと言うが

根っこの部分では面白がっていることは明白だった。


彼女は女子の中でも冴えないほうだし

男の方は自分がモテていることに自信があるような奴だった。


端から見ても

そんな彼女が丸出しの好意を

相手に向けているのはさぞかし楽しかっただろう。


彼女は教室の隅で小さくなっていた。


俺と視線が合うと慌てて避ける。

それでいて、「昨日のことは忘れて」と走り書きのメモを送ってきた。




カナちゃんと駅前の時計台で待ち合わせしていた。


出会って2日目なのに

なかなか積極的な子で腕を絡めてきた。


俺のことを気に入ってくれたらしく

遊んだ最後にキスしよーよ、と甘えてきた。


俺はにっこり微笑んで

「いいけど、ここは人多いから」


とカナちゃんの腕を引っ張り

「約束」していた公園に連れて行った。


ちゃんと「確認」をしてから

俺はカナちゃんとキスをする。


全て予定通りだ。

ちゃんとこの光景を見ていてくれた。




彼女は驚いていた。


ていうか、何でまた俺の部屋いるの。

というツッコミは拒否され

面倒くさいことにまた泣きだす。


まぁ、それくらい俺の顔は酷かった。

痣や切り傷、すり傷、口の中も外も血まみれで

誰かと何かあったくらいすぐ分かる。


何で、何で。

と繰り返す彼女に


君がされたことを仕返しただけだよ。

なんて言ったら彼女は笑ってくれるだろうか。


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