第九番=鈍感=
いっやぁ〜、まじで。いつ終わるんでしょうか・・・。
「まあ、別に良いですけどね」
無表情で言われても安心できない、竜矢はそう思った。
「・・・それとあれだな」
「?」
「深山はお前に、自分の事好きかどうか聞きたかったんだよ」
「・・・・・・」
瑞鬼の顔はさっきから歪みっぱなしだ。
「お前、一年の頃、深山と同じクラスだっただろ?」
「・・・・・・」
瑞鬼は歪んだ顔のまま黙り込んだ。
「・・・まさかとは思うが・・・お前、覚えてないのか?」
「・・・・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・ま、まさかな、お前みたいな頭良いヤツに限ってそんなこ・・・と・・・」
瑞鬼が、竜矢から完全に目を逸らした。
「お、おい。マジで・・・?」
「・・・」
「本当に、憶えてないのか・・・?」
瑞鬼は小さく頷いた。
こいつ・・・鈍感なのは昔からだったが・・・まさかここまでバカ・・・というか、阿呆?
「・・・特に、憶えなくても支障は無いと・・・思いましたから」
「・・・・・って事は・・・いや、でも・・・」
「何ですか?」
「いや・・・じゃあお前って、深山がサッカー部の部長だって事は知ってんのか?」
「はぁ、まあ、有名ですから・・・・・・」
「・・・そういや・・・ちょっと待ってろ」
一言言うと、竜矢は棚から写真を数枚持ってきて瑞鬼に見せる。
「?一年の時の校外学習の写真・・・ですか?」
「まあそうだがな。ほら、よく見てみろよ」
「?」
「ほら、これも、これも・・・」
「!」
「今と髪型違うからお前にはよく分からなかったのかもしれねぇえけどな。深山、写真全部にお前の隣に写ってる・・・」
瑞鬼の歪んだ表情は、今や驚きの感情で埋め尽くされていた。
「本当に気づいてなかったのか・・・?瑞鬼・・・」
早く深山君や坂本君を出したい・・・。