プロローグ
「護聖隊」
かつてこの世界に、光を掲げる五人の戦士がいた。
人々を護り、悪を討ち、秩序を保つ者たち。
その名を――
護聖隊。
誰もが彼らを「神の代行者」と讃え、
祈りを捧げるほどにその光を崇めた。
赤のカイト。
蒼のセラ。
黄のゴウ。
翠のレイ。
そして黒のミナト。
五つの魂は、まさしく“聖の五環”。
彼らの正義は、世界の中心だった。
――だが、光が強すぎる時、
必ずその影は、深く、黒くなる。
世界は護られすぎていた。
罪も悲しみも、戦いも、浄化される。
だがそれは同時に、
“選ばれた者だけの平和”を生み出していた。
「正義とは、誰のためにある?」
その問いを、最初に口にしたのは、黒衣の賢者――ミナト。
仲間は笑った。
「そんなの決まってる。みんなのためだろ」
「お前らしいな」
「また難しいこと言ってる」
だが、ミナトの目は笑っていなかった。
「“みんな”とは誰だ? 選ばれなかった者は、救う価値がないのか?」
その夜、光の理想は、音もなく軋み始めた。
ブレイヴフォースが敵組織“黒環”の拠点に突入した作戦の日。
それは、世界を二つに割る“裏切りの夜”となった。
カイトたちは信じていた。
敵は闇、味方は光。
その境界が、今、崩れようとしていた。
廃都市の中心――。
爆音と共に床が崩れ、炎が上がる。
その中で、銃を構えていたのは、仲間のはずの男だった。
「……どうして、ミナト……?」
「答えは簡単だよ、カイト。
この世界に、正義なんてもう必要ない。」
ミナトの引き金が光を放つ。
撃たれたのは敵ではなく、仲間だった。
カイトの焔が燃え狂い、
セラの翼が裂け、
ゴウの盾が砕け、
レイの刃が折れる。
爆発と崩落の連鎖。
地獄の業火が四人を呑み込む。
「――行け。お前たちは、光の中で死ね。」
ミナトは一歩も振り返らず、
崩壊する建物を背に、静かに歩き去った。
炎に包まれ、意識を失う中、
カイトの耳に、別の声が響く。
『問おう――お前たちは、まだ正義を望むか?』
それは地獄の底からの囁き。
絶望の中でなお、燃え続ける炎が答えた。
「……望む。俺たちは、まだ終わっていない。」
血と灰の中から、
四つの影が立ち上がる。
焔鬼――怒りの焔。
哭鴉――嘆きの翼。
怒護――怒りで護る者。
疾那――刹那に駆ける風。
彼らの名は変わり、魂は“人”を超えた。
そして地上では――
ミナトが、静かに闇の王座に座していた。
「光は腐り、闇こそが秩序を創る。
……それが、真の正義だ。」
こうして、五つの魂は道を分けた。
四つは地獄の底へ、
一つは虚無の天へ。
それでも、五人の名は今も一つ。
DEMONsFIVE。
かつて光を護った者たちが、
今は闇の裁きを為す――。




