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5. 好感度上昇

「私もいいと思うわ。でも……裏切ったら殺すケド?」


 シエルが鋭い視線でレオンの瞳を射抜き、レオンはどうぞという感じで手を広げて微笑んだ。


「裏切らないっていうなら……ねぇ?」


 エリナも黒髪をサラッと手で流しながらニヤッと笑う。


「まずは詳細を詰めましょ? ふふふっ」


 ミーシャが空色の瞳をギラっと輝かせ、妖艶な笑みを浮かべた。


 その瞬間、レオンの瞳が再び金色に輝く。


【スキルメッセージ】

【パーティ結成】

【運命の輪が回り始めた】


 朝の光の中で、傷ついた者たちがお互いを認め合う――――。


 後に伝説となる五人の、物語の第一歩だった。



     ◇



 警備隊の賞金首受付窓口――――。


 係員が書類を確認しながら、驚いたように一行を見た。


「本当にゴードン・ブラックを捕まえたんですね。まさか新人たちが捕まえるとは……」


 手際よくチャリン、チャリンと金貨が数えられていく。


「うわぁ……」「き、金貨がこんなに……」「弓を射っただけなのに……」「素敵ね……」


 少女たちはぽかんと口を開け、次々と積み上げられていく金貨の山に目が釘付けである。


 そんな様子を見ながらレオンは目頭が熱くなるのを感じていた。


 絶望のどん底でつかんだまさにチートなスキル。この【運命鑑定】スキルがあればどこまでも行けそうな手ごたえを感じていた。


「はい、確かに。金貨二百枚です」


 レオンは代表してずっしりと重い革袋を受け取る。


 ギルドを出た瞬間、四人の少女たちがレオンを取り囲んだ。


「こんな大金初めてよ!」「あなた何なの?!」「ねぇ、もっとやってよ!」「悪くないわね……」


 みんな目をキラキラと輝かせながらレオンに言い寄ってくる。


「まぁまぁ、落ち着いて! 何か美味しい物でも食べよう! 今後のことはそこでね」


「やったぁ! 私お肉がいいわ!」「無駄遣いはダメだけど、今日は特別ね」「ふふふ、ちょっとだけエールも飲ませて!」「あのお店にしようよ! ずっと行きたかったところ!」


「よーし、じゃぁ決まりだ。パーッと行こう!」


 レオンはこぶしを突き上げた。


「行きましょ!」「ふふっ、楽しみ」「飲むぞー!」「一杯だけにしときなさいよ!」


 一行は賑やかに商店街の方へと歩いていった。


 ピロン! と脳裏にメッセージが浮かぶ。


【システムメッセージ】

【好感度上昇】

エリナ:10→25【警戒解除】

ミーシャ:5→20【興味】

ルナ:5→15【感謝】

シエル:10→30【信頼】


(こんなことまでわかるのか!?)


 レオンは驚き、四人の顔を見回した。それぞれにまだ距離を感じるが、それでも確かな一歩を踏み出せた実感がある。


 こうして、全てを失った朝は、新たな仲間と希望を得た朝へと変わった。


 ――これが、絶望に彩られた運命への反逆の第一歩だった。


 カインよ、セリナよ、見ていろ。

 僕は必ず、最高のパーティを作ってみせる。


 そして、いつか――お前たちを見返してやる!


 レオンはぎゅっと固くこぶしを握った。



      ◇



 一行はくだらない話をして笑いながら石畳の道を歩いていく――――。


 レオンは後ろから聞こえてくる(かしま)しい少女たちの声を聞きながら、これから始まる新しい人生の実感を感じていた。足取りが心なしか弾んでしまう。


「ここだよ」


 レオンが指し示したのは、煙突から香ばしい白煙を立ち昇らせる、歴史を感じさせる木造建築だった。


 看板には、涎を垂らしながら肉を見つめるグリフォンの、どこか愛嬌のある姿が描かれている。『腹ペコグリフォン亭』――冒険者たちの間では、少し値は張るが間違いなく美味い店として知られていた。


「あ、ここ知ってる!」「いつか来たいと思ってた……」「いいねぇ……」「早く入りましょ!」


 重い扉を押し開けた瞬間、店内の熱気と活気、そして香ばしい肉の匂いと芳醇なスープの香りが、まるで温かい抱擁のように一行を包み込んだ。


「いらっしゃい! おや、お嬢ちゃんたちは……見ない顔だね」


 小麦色に日焼けした恰幅の良い女将が、油の飛沫で汚れたエプロンで手を拭きながら近づいてくる。その笑顔には、数え切れないほどの冒険者を見送ってきた温かさがあった。


「五人かしら? 奥のテーブルが空いてるよ!」


「ありがとう!」


 案内された席に腰を下ろすや否や、レオンは黒板を見ながら声を上げた。


「今日のシチューを五人前、黒パンは山盛りで……。それと今日のお勧めの肉の塊を二皿!」


「おお、景気がいいね! すぐ持ってくるよ!」


 やがて、テーブルが豪華な料理で埋め尽くされた。


 野菜がごろごろと入った濃厚なシチューから、白い湯気が立ち昇る。焼きたての黒パンからは、バターが溶ける甘い香り。そして圧巻は、表面がカリカリに焼き上げられた、拳二つ分はある巨大な肉塊。肉汁が熱々の鋳物皿の上でジュウジュウと音を立てている。


 空腹に耐えていた少女たちの瞳が、まるで宝石を前にした子供のように輝いた。



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― 新着の感想 ―
RT企画より参りました! 一旦この5話まで読ませていただきましたが、最近流行りの追放物らしいスタート。 追放物は、主人公自体が戦うのではなく「軍師」というサポーターの立場なのも追放しやすいからなのでし…
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