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第81話 2枚のラブレター

 そんなある日のことだった――俺がラブレターを貰ったのは。

 それも2枚、同じ日にだ。


 ラブレターは2枚とも、教室の俺の机の中に入っていた。

 気付いたのは5時間目が始まる直前だ。


 昼休みの終わりぎわに、いつものように5時間目の授業の教科書やらノートやらを取り出そうとして、俺は机の中に手を突っ込んだのだが。

 その時に封筒みたいなものに指が触れた。


 カサカサっと軽い感触で、しかもどうやら2つあるっぽい。


「……?」

 なんだ?


 勉強道具とは明らかに違った、薄くて小さなものが机の中に入っているみたいだった。

 家からなんか間違えて持ってきちゃったっけか?


 そんなことを思いながら俺はその薄い「何か」を取り出して――取り出しかけて、


「――っっっっ!?!?!?!?!?」


 それにハートマークの封がしてあったのを見て、俺はもうマッハの速度で机の中に手を突っ込んで、その封筒を周囲の目から隠した。


 だってだってだって!

 これってどう見てもラブレターだろ!?

 しかも2通!!


 そしてその時に勢いが付きすぎて、机とイスをガタガタっと大きく鳴らしてしまう。


 大きな音を立ててしまったせいで、クラスメイトたちがみんなおしゃべりを中断して、俺へと視線を向けてきた。


「あはは……」


 すんません、なんでもないです、的な愛想笑いすると、みんな興味をなくしたようにまた各々のおしゃべりへと戻っていった。


 ふぅ、みんなから注目されるクラスの人気者じゃなくてよかったぜ……。

 しかし、安心するのも束の間。


「どうしたんですか勇太くん?」

「どしたのユータ、大きな音立てて。急にトイレに行きたくなったとか?」


 左右に座っている姫乃ちゃんと小春から、心配するような声が投げかけられた。


「い、いや、なんでもないぞ?」


「そうですか? とてもそうは見えませんでしたけど」

「うんうん、すごい音がしてたもんね? おしっこ漏れそうなら早く行きなよ」


 2人が俺を心配してくれるのはわかるんだけど、事が事だけに、今だけはみんなみたいにサラッと流して欲しいなぁ!


「だからトイレじゃないっての。その、ほら、アレだよ、アレ」


「アレって?」

「日本一になった時の阪神タイガースのスローガンでしょうか?」


「阪神って野球だよね? ひめのん野球好きなんだ? なんか意外かも」

「お父さんが好きなんですよ」

「へー、そうなんだ」


 なんて会話を2人がしている間に、俺はなんとか言い訳を捻り出した。


「今のは単に、眠くて身体がガクッってなっただけだから」


「あー、あるよねそれー。眠たいのを我慢して我慢して、でも寝ちゃった瞬間に急に力が抜けて、ガタッてなるんだよね~」

「それ、私も時々やっちゃいます」


「えー、ひめのんはそういうのないでしょ?」

「そんなことありませんよ。夜更かしした次の日の5時間目は、けっこう大変なんですから」


「だ、だろ? だから何も気にしないでいいんだぞ?」


 よし、なんとかうまくこのピンチを切り抜けたぞ!


「ユータさ」

「な、なんだよ」


 小春が俺を見つめていた。

 まさか今の言い訳が嘘だと見抜かれたのか!?

 やはり幼馴染みには全部わかってしまうのか――!?


「早く5時間目の用意しなよー」

「あ、ああ。そうするよ」


 別にそういうわけではないようだった。

 俺ホッと胸をなでおろした。


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