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第79話 小春と姫乃のアイコンタクト

「さてと。面倒ごとは無事に解決したし、さっきのことはさっさと忘れて続きを見て回ろうぜ」


 まだまだ時間はたっぷりある。

 嫌な記憶もいくらでも上書きが可能だ。


 俺は2人に動物園デートの続きを提案した――のだが。


「じゃーあー、えいっ♪」


 なぜか小春が俺の右腕にギュッと抱き着いてきた。

 小春の手が俺の腕をからめとり、俺の二の腕が小春の柔らかくも大きなものにやわやわっと包まれる。


「小春? 急に何してんだよ。外でそんなことしたら恥ずかしいだろ。ほら、離れろって」


 小春とは、朝起きたらベッドの中にいたり、起こしてくれようとして誤って〇〇〇〇を握られたり、じゃれ合って抱き着かれたり――みたいなことはそれなりにある。


 だって家が隣の幼馴染みなんだから、それくらいは当然だろ?


 とはいえ、あくまでそれは屋内での話であって、外ではせいぜい手を繋ぐくらいだ。

 なのでこうやって人のいる場所で抱き着かれるのは、やっぱり恥ずかしいのである。


 今はその、姫乃ちゃんも見ているしさ……?

 なんかほら、そういうのってあれじゃん?


 などと思っていると、


「だってユータは彼氏なんでしょ? だったらこれくらいは普通でしょー?」

 俺の腕に抱き着いたまま、小春がいかにもそれらしいことを言ってくる。


「いやいや、さっきのあれはナンパ野郎を追い払うための方便だからな?」


「それこそあの2人がまだうろついてるかもしれないじゃん。嘘じゃないってことをちゃんとアピールしておかないと。また絡まれたら大変だし? 努力は大事だよね、努力は。ねー、ひめのん。ひめのんもそう思うでしょ?」


 小春が姫乃ちゃんに話を振った。


「え、えーと……どうなんでしょう……?」

 勝手な話を急に振られて困惑気味の姫乃ちゃんに。


「ねー、ひめのん♪」

 小春は重ねて言いながらウインクをした――気がした。


「……!」

 姫乃ちゃんの目が一瞬ピクリと目を見開いた――気がした。


 今のはなんだ……?

 さっき俺が小春と姫乃ちゃんにやったみたいな、ある種のアイコンタクトがあったように見えたが……。


「ねー、ひめのん♪」

「そうですね。まったくもって小春ちゃんの言う通りです」


「だってさ、ユータ♪ 多数決で2対1でユータの負けだねー」


「小春だけでなく姫乃ちゃんまでそう言うんなら……」


 まぁ、小春の言うことにも一理あるとは思う。


 あいつらみたいな自分勝手なヤカラは、往々にして自分勝手な理論で突っかかってくるものだし。


「で、では、疑われないためにも、私も努力しないとですよね……えいっ!」


 姫乃ちゃんが俺の左腕にギュっと抱きついてきた。


「姫乃ちゃんまで……」


「これは必要な努力ですから。ねー、小春ちゃん♪」

「だよねー、ひめのん♪」


 というわけで俺は右腕を小春に、左腕を姫乃ちゃんに抱きかかえながら、動物園デートを再開したのだった。

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