第78話「今更なんだけど、あいつらって男2人で動物園に来てたのかな?」
というわけで、俺はナンパ野郎2人組を、機転を利かして華麗にざまあしてみせたのであった。
「ユータ、ありがとー。ユータがいなくなってすぐに絡まれてさー。もう大変だったんだよー」
「勇太くん、助けてくれてありがとうございます」
小春と姫乃ちゃんがホッとした顔で、感謝の言葉を伝えてくれる。
「あはは、いいっていいって。俺の方こそ、上手く話を合わせてくれてありがとな。おかげであいつらを完膚なきまでに追い払ってやれたよ」
俺も、話を合わせて協力してくれた小春と姫乃ちゃんにお礼を伝えた。
「アタシもいい加減、ムカついてたからねー。あ、そういうことってユータの考えはすぐに気が付いたから、秒で乗っちゃった♪ あははー、ざまぁだったよねー!」
「私も最初は『えっ!』って思ったんですけど、小春ちゃんの反応を見て、すぐに勇太くんの意図は察せました」
「2人とも理解が早くて助かるよ」
さすがは俺の新旧ダブル幼馴染み。
もはや俺たちの間には言葉はいらなかったか。
「でもほんと話が通じなくてさー。ひめのんなんて、完全に怯えちゃったし」
「日本語で会話しているはずなのに、ぜんぜん会話が成立しなくて、すごく怖かったです」
「ああいうヤカラってマジで日本語が通じないよなぁ。自分の言いたいことばっかり言って、相手の話を無視してさ。あんなんでナンパが上手くいくとは思えないんだけどな」
「アタシもー。見ず知らずの相手にアレはないよねー。知り合いでもどうかと思うのに」
「私も同感です。好かれる要素は全くないと思います」
もちろん「ああいうヤカラ」をカッコいいと思う女性も一定数はいるんだろうけど、初対面であんな一方的で押しつけがましいコミュニケーションをされると、大多数の女性は嫌悪感を抱くと思う。
俺が女の子でも嫌だ。
そしてそれは小春や姫乃ちゃんも同じのようだった。
と、そこで俺はあることに気が付いてしまった。
「なぁ、今更なんだけどさ」
「なになに?」
「どうしたんですか勇太くん?」
「あいつらって男2人で動物園に来てたのかな? そんなに動物が好きそうなタイプには見えなかったけど」
どう見ても人間の♀以外は興味なさそうなヤカラだったよな?
「ってことは、もしかしなくても最初からナンパ目的だったってこと? うわっ、なにそれ最悪ー!」
小春が「うげー!」って顔をして、
「動物園には動物を見るために来るべきだと思います。でないと動物さんがたちが可哀そうです」
姫乃ちゃんは少し怒ったように言って、小さく口を尖らせた。
ま、そういう意味では可哀そうな奴らだったのかもな。
男2人で動物園なんて――などと俺が若干、上から目線になるのも致し方なし。
なにせ俺には彼らと違って、一緒に動物園に来てくれる小春と姫乃ちゃんがいるのだから。
心の中でちょっとだけドヤ顔ってしまった俺だった。




