第76話 ユータ到着す
近づいていくに連れ、ナンパ野郎どもの会話が聞こえてくる。
「えー、いいじゃん。俺らと遊ぼうよー」
「君らマジ可愛いからさ、美味しいイタメシとか奢るよ?」
「遊びません。他を当たってください」
それはもうきっぱりと拒否する小春と、
「ぅ……」
不安そうな顔で小春の背中に隠れている姫乃ちゃん。
「なんでー? 男2人・女2でちょうどいいじゃん」
「そうそう、俺らとダブルデートしようぜー」
「連れがいるので無理です」
「……」
またまたきっぱり拒否する小春と、コクコクとうなずく姫乃ちゃん。
「それってもしかしなくても女の子? 別に女の子3人でも俺らは構わないぜ?」
「そうそう、俺ら甲斐性あるからさ。3人でも4人でも構わないよ?」
「男の子です」
「……」
これまたきっぱりと否定する小春と、コクコクとうなずく姫乃ちゃん。
「またまたぁ。女の子だけじゃあ何かあった時に困るっしょ?」
「そうそう、頼りになる俺らが守ってやるからさ」
「今まさに、あなたたちに困らされてるんですけど」
「……」
取り付く島もない小春と、コクコクうなずく姫乃ちゃん。
どうみてもお呼びじゃないって感じにもかかわらず、しかしナンパ野郎というのは、しつこいことにかけては本当に天下一品のようで、それでもしつこくしつこく食い下がっていた。
「あはは、冗談キッツイ感じだねー。でもそういう強がる子も好きだよ、俺って」
「そうそう、俺らっていろんな女の子を受け入れちゃえるから」
ああもう、本当に埒が明かないな。
というわけでやっと戻ってこれたので、俺は2人に声をかけた。
「ごめん、待たせたな2人とも」
「ユータ! 遅いよー! 何してたのー?」
「勇太くん、お帰りなさい」
小春が少しプリプリしながら、姫乃ちゃんはほっとしたように俺の名前読んだ。
「なにって、トイレが1個使用禁止になってたせいで、微妙に混んでてさ」
「日頃の行いが悪いんじゃない?」
「そう言うなって。ほい、お茶」
俺は小春に麦茶を渡した。
「へへっ、ありがとー」
「で、誰なんだこの人たちは? 知り合い?」
「ぜんぜん知らない人ー」
「ぜんぜん知らない人です」
小春と姫乃ちゃんが声を合わせて否定した。
はい、これで勝負あり。
お前らの負け。
不愉快だからさっさと退散してくれ――って俺は思ってたんだが、このナンパ野郎2人組は本当に、本当にしつこかった。
空気読めなさすぎとも言う。
「なんだてめぇは? 俺らこの子たちとお話ししてんの。彼氏でもないくせに、出しゃばんなって-の。いいからすっこんでろよ」
「おうよおうよ!」
なんと俺をガン睨みしながら、まるで動物が敵を威嚇するみたいに声を荒げてきたのだ。




