第74話 スゴテク・小春
「インカメは画質悪いからねー。ブサイクに写っちゃうし。ひめのんをブサイクに撮るとか、神様が許してもアタシは許さないからねー」
「ですが、アウトカメラだと見切れたりしないでしょうか?」
姫乃ちゃんをブサイクに撮ってはいけないという小春の意見はもっともだったが、見切れてしまうという姫乃ちゃんの意見もまた、実にもっともだった。
アウトカメラで自撮りをすると、フレームに収まっているかどうか確認できないもんな。
でも大丈夫だよ。
「安心して姫乃ちゃん。小春は自撮りがマジで上手いんだ。そこは信頼していいよ」
「そうなんですか?」
「まぁ見てなって。小春が全員バッチリフレームに入れて、可愛く撮ってくれるからさ」
「か、可愛くって……もぅ、勇太くんってば……」
照れくさそうに小さく笑う姫乃ちゃん。
くぅっ!
こんなに可愛い姫乃ちゃんを、絶対にブサイクに撮っちゃぁいけないよな!
「よし小春、培ってきた巧みの技を見せる時だぞ!」
「撮るのはアタシなのに、さっきからなんでユータはそんなに自慢げなの?」
「そりゃ、がそれだけ小春の腕を信用してるってことだろ?」
「なんか上手いこと言いくるめられたような……? ま、褒めてくれるならいいけどね」
小春はそう言うと、スマホの角度や距離を調整し始めた。
そして俺と姫乃ちゃんは小春の指示に従って、位置を微調整していく。
「やっぱり後ろにパンダはマストで欲しいから、ユータちょっとしゃがんで、気持ち右に寄ってくれる?」
「こんな感じか?」
俺はちょっと右に寄って軽く膝を曲げた。
「そうそう。いい感じいい感じ。で、ひめのんもユータに続く感じで、横に移動して。なるべく距離近めで」
「わかりました」
姫乃ちゃんが俺に身体を寄せた。
女の子の柔らかい感触が俺の腕にふにょんと触れた。
女の子の身体なんて小春とのスキンシップで慣れているはずなのに、ものすごくドキッとしてしまう。
「おっけーおっけー、こんなものかな。じゃあ撮るよー。はい、チーズ♪」
パシャパシャパシャパシャ!
連続シャッターが鳴った。
手振れ補正&連続シャッターのサポートを受けた小春のアウトカメラ自撮りは、マジですごいからな!
その結果やいかに――!
早速確認してみると、3人がいい感じにフレームに収まり、さらには後ろにパンダが映った写真がバッチリと撮影されていた。
「すごいです、まるでスマホを覗きながら撮ったみたいです……!」
姫乃ちゃんが大きく目を見開いた。
「な、言っただろ? 小春はマジで上手いんだよなぁ」
「だからなんでそんなにユータが自慢げなのー?」
小春が俺のほっぺをギュムギュムと突いてくる。
「でも小春ちゃん、本当にすごいです」
「えへへ、そう? まぁ実は自分でも、結構上手だなとは思うんだよねー」
姫乃ちゃんに褒められて小春がにへらーと嬉しそうに笑った。




