第72話 パンダと小春と姫乃ちゃん
パンダエリアに着いた途端に、
「ふぁぁぁぁ……! 居たぁ……! パンダが動いてる……!」
小春は最前列まで駆け寄ると、手すりを掴んで乗り出すようにしながら、パンダを見始めた。
俺も隣に行くと――さらにその隣に姫乃ちゃんが来た――腕組みをしながらパンダを見る。
「おー、パンダだなぁ。平和な顔してのそのそと歩いていやがるぜ」
「ふふっ、ぬいぐるみみたいで可愛いですよね」
俺たちの見ている前で、パンダはゆっくりゆっくり歩き回っては、思い出したように立ち止まって、右を向いたり左を向いたり顔をアチコチに向ける。
そのたびに小春は、
「ふぅぅぅ……!」
とか、
「はぁぁぁ……!」
とかため息をつきながらパンダに見とれていた。
「ほんとパンダ好きだよな、小春は」
「パンダが嫌いな女の子とかいないからー。ねー、ひめのん」
「ふふっ、そうですよね~」
「ねー♪」
「ね~♪」
俺を間に挟んで、ねーねーと共鳴し合う小春と姫乃ちゃん。
この2人、ほんと仲いいよなぁ。
「ま、パンダと言えば今や動物界の国民的アイドル。テレビで特集が組まれるくらいだもんな。そうだ、せっかくだし小春。パンダとツーショットとかどうだ?」
「もち撮って撮って!」
パッと振り向いた小春に、俺はスマホを向ける。
「よーし、ちょっと待てよ。パンダがいい感じでこっちに近づいてきたからな……OK、今だ! はい、チーズ」
「いぇーい♪」
手をずいっと前に伸ばして力強いピースをした小春を、
パシャ、パシャ、パシャ。
まずは3枚立て続けに撮影する。
「続けていくぞー。はい、チーズ」
「いぇーい♪」
今度はピースの向きを変えて、ギャルピースをする小春。
笑顔は素敵だし、画面越しにも可愛いのが伝わってくる。
パシャ、パシャ、パシャ。
「いぇーい♪」
パシャ、パシャ、パシャ。
俺がしばらく小春とパンダのツーショットを激写していると、いっぱい撮影して満足したのか、小春が言った。
「ごめんね、ひめのん。ひめのんもパンダと撮るよね?」
「撮りたいです。ぜひお願いします」
普段は控えめなのに、珍しく強く自己主張をした姫乃ちゃん。
どうやら姫乃ちゃんもパンダの持つ圧倒的魅力には逆らえないようだった。
俺は小春に続いて、今度は姫乃ちゃんとパンダのツーショットを撮影する。
「いくよ姫乃ちゃん。はい、チーズ」
「ふっ!」
俺の声に合わせて、息を止めながら素敵な笑顔を作る姫乃ちゃん。
その右手はしっかりとピースを作っていて、その姿はさながら雑誌モデルのようだ。
なんかもう、全てにおいて気合が入っているのが伝わってきた。
小春よろしく、姫乃ちゃんもパンダが大好きなんだなぁ。




